原一男監督「ことの大きさを強く強く訴えたい」水俣病被害者の戦いを15年にわたって撮影『水俣曼荼羅』ポスタービジュアル

『ゆきゆきて、神軍』、『れいわ一揆』など数々の作品を生み出した原一男監督が贈る、1956年の公式確認から今年で65年となる水俣病をテーマにしたドキュメンタリー映画『水俣曼荼羅』の公開日が11月27日に決定し、併せて、ポスタービジュアル、場面写真がお披露目となった。さらに、原一男監督よりコメントが寄せられた。

日本四大公害病の一つとして知られる水俣病。本作は、その補償をめぐっていまだ裁判の続く患者たちの戦いを15年にわたって撮影し、5年間の編集を経て完成させたドキュメンタリーで、裁判の経過とともに人々の日常生活や水俣病をめぐる学術研究までが網羅された一大叙事詩。

ポスタービジュアルには、水俣湾の風景が収められる。

■原一男(監督) コメント
完成作品は、6時間を超える超長尺になった。が、作品の中に入れたかったが、追求不足ゆえに割愛せざるを得ないエピソードがたくさんある。かろうじてシーンとして成立したものより、泣く泣く割愛したシーンの方が多いくらいなのだ。だが私たちは撮れた映像でしか構成の立てようがない。その撮れた映像だが、完成を待たずにあの世に旅立たれた人も、多い。ともあれ、水俣病問題が意味するものは何か?水俣病は、メチル水銀中毒である、と言われていますが、その水銀が、クジラやマグロの体内に取り込まれて今や地球全体を覆っています。日本の小さな地方都市で発生した水俣病が、今や全世界の人間にとっての大きな問題になっています。ことの大きさを強く強く訴えたいと願っています。

『水俣曼荼羅』
11月27日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督・プロデューサー:原一男
配給:疾走プロダクション

【作品概要】
第1部「病像論を糾す」 川上裁判によって初めて、国が患者認定制度の基準としてきた「末梢神経説」が否定され、「脳の中枢神経説」が新たに採用された。しかし、それを実証した熊大医学部浴野教授は孤立無援の立場に追いやられ、国も県も判決を無視、依然として患者切り捨ての方針は変わらなかった。

第2部「時の堆積」 小児性水俣病患者・生駒さん夫婦の差別を乗り越えて歩んできた道程、胎児性水俣病患者さんとその家族の長年にわたる葛藤、90歳になってもなお権力との新たな裁判闘争に賭ける川上さんの、最後の闘いの顛末。

第3部「悶え神」 胎児性水俣病患者・坂本しのぶさんの人恋しさと叶わぬ切なさを伝えるセンチメンタル・ジャーニー、患者運動の最前線に立ちながらも生活者としての保身に揺れる生駒さん、長年の闘いの末に最高裁勝利を勝ち取った溝口さんの信じる庶民の力、そして水俣にとって許すとは?翻る旗に刻まれた怨の行方は?水俣の魂の再生を希求する石牟礼道子さんの“悶え神”とは?

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