「山々は歴史の目撃者だ」クーデター後、新自由主義の実験場となってしまったチリの悲劇を映し出す『夢のアンデス』予告編

2019年カンヌ国際映画祭で賞賛され、最優秀ドキュメンタリー賞とインディペンデント批評家賞をダブル受賞した、南米ドキュメンタリー映画の巨匠パトリシオ・グスマン監督最新作『夢のアンデス』が、10月9日より公開される。このほど、本作の予告編がお披露目となった。

本作は、パトリシオ・グスマン監督作『光のノスタルジア』『真珠のボタン』に続く、チリ弾圧の歴史を描く3部作最終章。1973年9月11日、チリ、軍事クーデターは多くの市民の人生を大きく変えることになる。グスマン監督もドキュメンタリー映画『チリの闘い』撮影後、政治犯として連行されるも、釈放。フィルムを守るため、パリに亡命することになる。本作に登場する作家や彫刻家、音楽家たちの告白と記憶。そこにはいつ何時も輝き、鎮座するアンデスの山々があった…。本作は、かつて『チリの闘い』(1975-1978)で映像に残した、永遠に失われた輝かしいアジェンデ時代の歴史と、クーデター後、新自由主義の実験の場となってしまった祖国の現状を、アンデスのように俯瞰した視座から改めて見つめ直す。

予告編は、グスマン監督の幼少時の記憶に残るマッチ箱に描かれたアンデス山脈から始まり、「山々は歴史の目撃者だ」と語るグスマン監督自身のナレーションが見るものに静かに問いかけてくる。1973年9月11日、チリ、軍事クーデターから独裁政権への移行、ピノチェトが主導する独裁に反対する人々の反抗、その後、新自由主義の実験場となってしまったチリの悲劇を映像は映し出す。「私たちの人生を永遠に変えた」とグスマン監督が語る、チリの光と影の記録と記憶。そしてただ静かにそこにあったアンデス山脈の存在。「この詩的なドキュメンタリーは、世界から隔絶された山々を介して、チリの過去と未来を表現している」というsight&sound誌の批評で本映像は幕を閉じる。

『夢のアンデス』
10月9日(土)より、岩波ホールほか全国順次公開
監督・脚本:パトリシオ・グスマン
音楽:ミランダ&トバー
出演:フランシスコ・ガシトゥア ビセンテ・ガハルド パブロ・サラス ホルヘ・バラディット
配給:アップリンク

【作品概要】 1973年9月11日、チリ・軍事クーデター。世界で初めて選挙によって選出されたサルバドール・アジェンデの社会主義政権を、米国CIAの支援のもと、アウグスト・ピノチェトの指揮する軍部が武力で覆した。ピノチェト政権は左派をねこそぎ投獄し、3000人を超える市民が虐殺された。南米ドキュメンタリーの巨匠パトリシオ・グスマン監督は、40年以上にもわたりチリの弾圧の歴史を描いてきた。『光のノスタルジア』『真珠のボタン』に続く一大叙事詩最終章となる本作は、かつて『チリの闘い』(1975-1978)で映像に残した、永遠に失われた輝かしいアジェンデ時代の歴史と、クーデター後、新自由主義の実験の場となってしまった祖国の現状を、アンデスのように俯瞰した視座から改めて見つめ直す。

© Atacama Productions – ARTE France Cinéma – Sampek Productions – Market Chile / 2019