第92回アカデミー賞モロッコ代表作『モロッコ、彼女たちの朝』の公開日が8月13日に決定し、併せて、新場面写真がお披露目となった。
カサブランカのメディナ(旧市街)で、女手ひとつでパン屋を営むアブラと、その扉をノックした未婚の妊婦サミア。それぞれに孤独を抱えていた二人だったが、丁寧に捏ね紡ぐ伝統的なパン作りが心を繋ぎ、やがて互いの人生に光をもたらしていく。モロッコの伝統的なパンや焼き菓子、幾何学模様が美しいインテリア、軽やかなアラビア音楽…、あふれる異国情緒とともに、親密なドラマが描き出される。自分らしく生きると決めた彼女たちが迎える朝の景色とは…?
新場面写真は、「魅惑の国」とも呼ばれるモロッコのインテリアや雑貨が美しい写真5点。地中海に面した北アフリカに位置するモロッコは、アフリカやアラブ、欧州などさまざま国の文化が混ざり合い、独自の文化を築き上げてきた国だ。モロッコでは砂糖をたっぷり入れた甘いミントティーが定番の味。サミアが持つ美しい細工が施された銀のティーポット以外にも、「バブーシュ」と呼ばれるサンダルやカラフルなカゴバッグ、遊牧民の伝統的なラグ「ベニワレン」など、エキゾチックなモロッコ雑貨は日本でも人気が高い。またアブラと娘のワルダの食事シーン、ワルダが机に向かって勉強をするカットで印象的なのは、繊細な幾何学模様の壁紙である。モロッコをはじめとしたイスラーム世界の建物で多く見ることのできるこういった模様には、その歴史が深く関係する。偶像崇拝を禁じるイスラームでは、人物や動物を描くのはタブーであるため、抽象的な幾何学模様が発達していったと言われている。そしてサミアとアブラの笑顔が眩しい写真では、彼女たちのカラフルなスカーフが美しい。信仰のために肌や髪の毛を隠すという目的以外にも、日中の温度が40度を超える所もある夏のモロッコでは、スカーフが必需品。柄や巻き方で思い思いのお洒落を楽しむ。さらに、アブラが屋上で洗濯をするカットでは、その奥にカサブランカのメディナ(旧市街)が映し出される。外的からの侵入を防ぐため迷路のように狭い路地が張り巡らされたメディナは、今も、熱気に溢れた人々の生活の場であり、観光客でも大賑わい。カサブランカ=「白い家」を意味するその名の通り、白壁の建物が立ち並ぶ。
『モロッコ、彼女たちの朝』
8月13日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
監督・脚本:マリヤム・トゥザニ
製作・共同脚本:ナビール・アユーシュ
出演:ルブナ・アザバル ニスリン・エラディ
配給:ロングライド
【ストーリー】 臨月のお腹を抱えてカサブランカの路地をさまようサミア。イスラーム社会では未婚の母はタブー。美容師の仕事も住まいも失った。ある晩、路上で眠るサミアを家に招き入れたのは、小さなパン屋を営むアブラだった。アブラは夫の死後、幼い娘のワルダとの生活を守るために、心を閉ざして働き続けてきた。パン作りが得意でおしゃれ好きなサミアの登場は、孤独だった親子の生活に光をもたらす。商売は波に乗り、町中が祭りの興奮に包まれたある日、サミアに陣痛が始まった。生まれ来る子の幸せを願い、養子に出すと覚悟していた彼女だが…。
©︎Ali n’ Productions – Les Films du Nouveau Monde – Artémis Productions