池松壮亮「家族とは自由な共同体」、オダギリジョー「血のつながりは関係ない」“家族”の在り方について語る!

『舟を編む』、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』、『町田くんの世界』、『生きちゃった』の石井裕也監督最新作で、池松壮亮が主演、オダギリジョー、チェ・ヒソが共演する『アジアの天使』が、7月2日より公開される。このほど、5月1日に韓国で開催された全州国際映画祭にてQ&Aイベントが行われ、池松壮亮、オダギリジョー、石井裕也監督がリモート登壇、チェ・ヒソが現地にて登場した。

4月29日から5月8日に渡り開催された全州国際映画祭のCinema Fest部門に出品された本作は、5月1日に韓国で初上映され、上映後の舞台挨拶に主演の池松壮亮、オダギリジョー、石井裕也監督がリモートにて登壇した。上映を終えた観客へ一言求められた池松は「アニョハセヨ」と挨拶し、「韓国のお客さんに初めて観てもらえて嬉しいです、本来であれば韓国に行きたかったのですが、この状況下なのでなかなか韓国に行けず残念です」とコメント。続いてオダギリは「映画祭自体を開催するのが大変な状況だと思いますが、お客さんもこういう状況の中、映画を観にきてくれて嬉しいです、映画祭を心から応援したいと思っています」と口にし、映画祭の舞台上にいるチェ・ヒソからも「この映画が完成した当時(新型コロナウイルス蔓延初期)は映画祭などで直接お客さんに観せられると思っていなかったので、ぜひこの時間を楽しみたいです」と舞台に立てた喜びが語られた。

韓国、日本のキャストを起用して韓国で映画を撮ろうと思ったきっかけを聞かれた石井監督は、「プロデューサーのパク・ジョンボムさんと2015年に釜山映画祭で出会って韓国は特別な国になりました、“彼と出会えた奇跡”を韓国で撮りたいと思っていました、それが数年越しに叶いました」と企画の成り立ちのエピソードを披露した。

オダギリは撮影中のエピソードや大変だったことを尋ねられ、「海外での撮影はもちろん大変なことだらけですが、日本のシステムを捨て、その国に合わせて0から戦っていかないといけないのが実は新鮮で心地いいんです。実際、韓国の俳優の皆さんとの撮影は楽しかったですし、夜お酒を飲みかわしながら友情を育んでいけたと思います」と韓国での撮影時の思いを振り返った。

池松へは小説家である剛(池松壮亮)に対して、もし劇中で小説を書き上げていたとしたら最後の言葉は何で締めくくったのか?という質問が及び、オダギリ、石井監督からも「難しい!」とガヤが飛ぶなか、池松は頭を抱えながらも「“天使に会った”というのはどうでしょうか」と返答。会場からは拍手が起こった。

チェ・ヒソは、自身が演じるソルが劇中よくサングラスをかけている意図に関して問われ、「ソルはアイドルを目指しながらも失敗して、その悲しみやトラウマで傷ついた心を隠したくてサングラスをかけていたと思います。ソルは剛たち家族に出会って変わりはじめます、そのきっかけのシーンとして愛人関係にあった社長と喧嘩するシーンがあるんですけど、そこで吹っ切れて無名でもいい、このままの自分でいいと決心するのです。それ以降彼女は変わっていき、愛の表現を家族にもできるようになったと思います、あるシーンでも警察官に剛の息子・学(佐藤凌)に対して『家族ですか?』と尋ねられた時にもはっきり『家族です』と言うのです。家族ではないけど家族のような繋がりを確かに感じて出た言葉だと思います」とソルの劇中での感情の変化を丁寧に語った。

最後に、本作で出会う韓国と日本の二つの家族とはどういうものかという質問に、石井監督は「家族の価値観や固定概念を無くそうと思って作りました、どんな関係であってもいい、好きなものを食べて、お酒を飲むこと、それだけでいいと思っています」と回答し、池松も「家族、天使、言葉、価値観、あらゆるものが概念であり、いかに自分たちがそういうものに縛られているかと感じます。韓国ロケの最中、僕たちは、家族でもない、チング(友人)でもない、ゆるやかな生命共同体みたいなものになれました。家族とは“自由な共同体である”と思います。この映画の家族はともに同じ物語を信じられた人たちだと思う。それが、この映画においての家族だったと思います」とコメント。オダギリは多くの家族が住むシェアハウスを引き合いに出し、「例えばシェアハウスのような環境で育った子供にとって、血のつながりはなくても、彼らのことを大切な家族だと思うでしょう。いくら血が繋がっていても不幸な形はあるだろうし、血が繋がっていなくても幸せという事があるように、人と人との繋がりのほうが重要だと思います。血のつながりは関係ないんじゃないかなと思います」と家族の在り方について持論を明かした。

終盤、客席にいたチェ・ヒソ演じるソルの妹・ポム役のキム・イェウンも舞台に登壇するなどのサプライズも起こり、本イベントは温かい拍手で包まれながら幕を閉じた。


▲左:チェ・ヒソ/右:キム・イェウ

『アジアの天使』
7月2日(金)より、テアトル新宿ほか全国公開
監督・脚本:石井裕也
音楽:パク・イニョン
出演:池松壮亮 チェ・ヒソ オダギリジョー キム・ミンジェ キム・イェウン 佐藤凌
配給:クロックワークス

【ストーリー】 8歳のひとり息子の学(佐藤凌)を持つ小説家の青木剛(池松壮亮)は、病気で妻を亡くし、疎遠になっていた兄(オダギリジョー)が住むソウルへ渡った。ほとんど韓国語も話せない中、自由奔放な兄の言うがまま怪しい化粧品の輸入販売を手伝う羽目に。元・人気アイドルのソル(チェ・ヒソ)は、自分の歌いたい歌を歌えずに悩んでいたが、亡くなった父母の代わりに、末端労働者の兄・ジョンウ(キム・ミンジェ)と喘息持ちの妹・ポム(キム・イェウン)を養うため、事務所の社長と関係を持ちながら細々と芸能活動を続けていた。ソウルから江原道(カンウォンド)へと走る列車で巡り会った二つの家族は、一台のおんぼろトラックに乗って、それぞれの行き先を目指す…。しかし、その時彼らはまだ知らない。どん底に落ちた二つの家族が共に運命を歩む時、ある“奇跡”を目の当たりにすることを…。

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