「え?テラスの犬になりたいと言ったことも覚えてない!?」佐藤浩市、松岡茉優に厳しいツッコミ食らう!?『愛にイナズマ』公開記念イベント

松岡茉優と窪田正孝がW主演し、石井裕也監督史上最もポップ&ハッピーなタッチで描かれる愛と希望とユーモアに満ち溢れた痛快ストーリー『愛にイナズマ』が、10月27日より公開中。公開を記念して、10月28日に新宿ピカデリーにて公開記念イベントが行われ、松岡茉優、窪田正孝、池松壮亮、若葉竜也、佐藤浩市、石井裕也監督が登壇した。

映画監督を目指す折村花子役の松岡は「マイノリティーのお話かと思いきや、多くの方々が共感してくれている」と大喜び。しかもこの日のファッションは劇中で花子が着ていたコートを取り入れたもので、「私は上映後の皆さんのお顔が見られる舞台挨拶が大好き。この様子を花ちゃんに見てほしくて今日は連れてきました」と嬉しそうにコートをヒラヒラさせた。

花子に惹かれる舘正夫役の窪田は「石井組の常連の池松君や若葉君が土台を築いてくれたからこそ、(初参加同士)茉優ちゃんと思い切りやらせてもらえた。観ていただいた方から良い反応があるのは嬉しい」と高評価に胸を撫でおろしていた。

石井監督は本作について「どういう映画なのか一言で言うのは難しい。家族の話もあるし、恋愛の話もあるから」と悩みながら、「でも浩市さんと飲みに行った時に『これが本当のエンタメだ!』と仰ってくれて、それで答えが出た」と回想。これに佐藤が「アルコールを飲んだ時は自分が何を言ったかなんて覚えていないんだ」と笑い飛ばすと、すかさず松岡が「え?テラスの犬になりたいと仰っていたことも覚えていないんですか!?」と佐藤の珍願望を暴露し、場内爆笑となった。

最初に本作を観た際に松岡は「初号試写を観た時に、この仕事を20年やって来て初めて(普段は自分の演技への反省などで冷静に見れないが、本作は純粋に)『楽しかった』と思った」と明かしながら、「(正夫と出会った赤いバーで)水を吹くシーンは、最初脚本にはなくて、現場で石井監督から『マーライオンでやってほしい』と言われたので練習しました」と舞台裏を紹介。窪田から「美しかった。いいアーチが描けていた」と褒められると、松岡は「美しい初水吹きデビューができました」と満面の笑みだった。

折村家の長男・誠一役の池松は、プライベートでは4人兄弟の長男。「家族を演じる時、自分の家族観と言うものは無自覚に持ち込んでしまうもの。演じる上ではやはり自分の家族のことを考えました」と実感。折村家の次男・雄二役の若葉は、プライベートでは5人兄弟の三男。「長男の池松さんが自分の兄弟とリンクする。(兄というものは)情けないところがあったりして、愛らしく見えていました」と自身の境遇と重ねていた。

そんな中、劇中の推しキャラを聞かれた佐藤は「MEGUMIちゃんが演じた役をやってみたい。かなり嫌なキャラとしてやれる自信がある」とシビアな女性プロデューサー役に興味津々。しかしMEGUMI扮するプロデューサーと火花を散らす役どころの松岡から「え、戦えない。それはきっついかも…。映画が変わる」と拒否されてしまい、「すみません。今の話は忘れてください」と頭をかいていた。

折村家の父・治を演じた佐藤。現代の父親像を演じる難しさについて「少し前の時代までは、特化していてもそれを周囲が受け入れ認める土壌があった。しかし今は画一化が求められる時代。ちょっと特化しただけで、それは違うと否定される。そんな時代の中での父親像は非常に不確かで難しい」と持論を述べた。

また窪田はラストシーンの花子の表情に触れて「それは世の中の理不尽さを受け止めて次のステージに行ったかのような表情。その花子の表情を見た時に、この映画の意味はここにあるのか!と思った」と胸を打たれたラストシーンについて語った。

映画公開を迎えるにあたり、キャスト全員分のインタビュー記事を読んだという石井監督。「それぞれの言葉から皆さんが真摯に愛情を持ってこの作品に向かっていることがわかり、泣きそうになった。そんな方々と映画を作れたことが幸せ。キャスト・スタッフ含めて思いを込めたうえで楽しみ切った作品になった。その躍動感はそんじょそこらの作品では見られないものです」と感無量のコメント。主演の窪田も「みんなで映画を観て幸せを共有できることが幸せだと思うので、その気持ちを育みながら、この作品が広がって映画の世界が豊かになり、ひいては映画館や映画業界が豊かになれば」と期待。松岡は「この映画は反逆あり、アフターコロナあり、ファミリーありラブありコメディあり。そのくらい内容がギュッと詰まった作品です。たとえ自分と合う人や社会がなかったとしても、映画があるじゃないか!と思いました。映画が自分にバッチリ合っていれば、映画が最高の相棒になり、人生のパートナーにもなる。相棒を探している人に、ぜひこの映画のことを伝えてください」と祈りに似たコメント。本当の家族のように深い絆を感じさせるトークを繰り広げ、満員の観客に万感の思いを伝える公開記念舞台挨拶となった。

『愛にイナズマ』
2023年10月27日(金)全国ロードショー
監督・脚本:石井裕也
主題歌:エレファントカシマシ「ココロのままに」
出演:松岡茉優 窪田正孝 池松壮亮 若葉竜也 仲野太賀 趣里 高良健吾 MEGUMI 三浦貴大 芹澤興人 笠原秀幸 鶴見辰吾 北村有起哉 中野英雄 益岡徹 佐藤浩市
配給:東京テアトル

【ストーリー】 長年の夢だった映画監督デビュー目前で、すべてを奪われた花子(松岡茉優)。イナズマが轟く中、反撃を誓った花子は、運命的に出会った恋人の正夫(窪田正孝)とともに、10年以上音信不通だった家族のもとを訪ねる。妻に愛想を尽かされた父・治(佐藤浩市)、口だけがうまい長男・誠一(池松壮亮)、真面目ゆえにストレスを溜め込む次男・雄二(若葉竜也)。そんなダメダメな家族が抱える“ある秘密”が明らかになった時、花子の反撃の物語は思いもよらない方向に進んでいく…。

©2023「愛にイナズマ」製作委員会