瀬々敬久監督「とにかく楽しい」、川瀬陽太監督「ほたる監督はまだ底を見せてはくれない」著名人絶賛!『短篇集 さりゆくもの』予告編&場面写真

日本映画の異才たちに愛され続けてきた女優・ほたるの呼びかけで集まった、多彩な監督たちによるオムニバス映画『短篇集 さりゆくもの』が、2月20日より公開される。このほど、予告編と場面写真がお披露目となり、併せて、各界著名人より本作を絶賛するコメントが寄せられた。

これまで映画・舞台など数多く出演し、2013年には映画監督としてもデビューを果たした女優・ほたるが、35mmフィルムで監督第2作となるサイレント映画の短篇を製作。去って行ったものや亡くなった人たちを遺すというテーマに共鳴した監督たちを誘ってオムニバス映画となる本作を完成させた。

ほたる監督作『いつか忘れ去られる』のほか、『恋とボルバキア』の小野さやか監督が2011年に撮影したドキュメンタリー『八十八ケ所巡礼』、フジテレビ深夜ホラードラマ「あの子が生まれる……」などの山内大輔監督が生まれつき醜い痣のある女を主人公にしたホラー『ノブ江の痣』、数々の国際映画祭に招待され今も8mm映画で映画を作り続ける映像作家小口容子監督作『泥酔して死ねる』、そして『名前のない女たち うそつき女』のサトウトシキ監督が、昨年若くして亡くなった櫻井拓也を主演に親子の離別を描いた『もっとも小さい光』。ジャンルも様々な5本が見事なアンサンブルを見せる。予告編では、その多様な作品の面白さが次々に展開されていく。

▼著名人 絶賛コメント

■瀬々敬久(映画監督)
このプロジェクトはとにかく楽しい。扱っているのは「死」であり、翻っていえば「生きること」だ。それでも友達の家で8ミリ上映会をわいわい見ている気分に近く、心地いい。それは、「さりゆくもの」たちへ「遺されたもの」たちが「どう関わりながら生きていくのか」についての問い方の暖かさに他ならない。

■川瀬陽太(俳優)
自分が商業映画の俳優を始めて程なく女優・葉月螢と出会った。ほたると名を変えて久しいがその間二十余年、ずっと彼女の事をうまく説明できずにいる。何十回共演したかわからないが、本当にそうなのだ。少し怖くもある。今回の短編集を観て益々惑わされた。ジャンルや表現の強烈な振幅の只中に身を投げ、常に「空っぽの器」として総てを受け入れてしまう彼女はまだ、底を見せてはくれない。

■小林政広(映画監督)
いやあ、参った。参りました。ほたるプロデュース『さりゆくもの』は、ほたる自身の監督作を含めて5本の短編が収められているが、どの作品も、個性的で、魅力的。ジャンルの垣根を飛び越えて、脳天に突き刺さってくる。 いやあ、参った。参りました!コロナ禍の中、ソーシャルディスタンスをとりながらの映画鑑賞にも、最適の一本です。

■港岳彦(脚本家)
みんな去っていくんだよね。見送っているうち、いつのまにか新しい命が背中に追いついて、自分も見送られる側なんだと気づく。愛したり愛されたりしながら、おれもあなたもみんな彼岸へ流されてしまう。この映画を見ながら、そんな儚さをずっと感じていました。

■いまおかしんじ(映画監督)
ほたるさんのは、最初音がしなくてびっくりした。小野さやかのは、山田さんとやっちゃうんじゃないかとドキドキした。山内さんのは、ぶら下がったトイレットペーパーが怖かった。小口さんのは、狂ってて笑った。トシキさんのは、櫻井くんに会えて良かった。

■常本琢招(映画監督)
「いつか忘れ去られる」。生々しい、映画だった。サイレントで延々続く家族の朝の儀式を、自分もその食卓に参加して体感させられるような…この生々しさは何かに似ている、何だろう?と考えていたらわかった。ピンク映画の『ラッシュ』を見ている時の感覚にそっくりだったのだ。音がつき、アフレコのセリフが入り、映画としての結構が整えられていくにつれ失われる「生々しさ」と「強度」。今はピンクも同録と聞くが、かつてあったその感覚を、ほたる監督は取り戻したかったのか…。

■橋口卓明(映画監督)
「短篇集 さりゆくもの」を見て思いました。さりゆくものの世界って地層のようにどんどんとパラレルに折り重なっていくようです。重力に逆らっては生きられない私たちは、積みあがった、さりゆくものの地の上で生きていく。地の上は決して美しいだけの場所には思えないけれど、不確かなその先に悲しみのかすかな光が小さな希望のように見えたような気がしました。

■牧村朝子(文筆家)
「八十八ヶ所巡礼」の重要なシーンで流れる音楽を担当したバンド、その名もまた八十八ヶ所巡礼の略称は、「88」。八十八ヶ所巡礼っていう言葉ができた頃、日本に未だアラビア数字は入ってきていなかったはず。なのに。88∞∞。昔の人は、想像しただろうか?未来の日本に入ってくる異国の数字で、「八十八」をこんなふうに書くだなんて。さりゆくものは、めぐる。向き合い、寄り添い、解き放たれて。

■木村文洋(映画監督)
遺志はおそらく、耳をそばたてる者にしか囁かれない。浴室に沈む死体のように、暴力を忘れ生きる人間の人生の背後に、数重なる耽溺のノイズの底に。遺志は、いつの間にか硬く沈む。囁きが、なにかを喪う覚悟で感覚を凝らさなければ対峙できないとする人生の態度は、恐らく映画のフィルムでなにが映せるのかという問いと、じっと正座し待つほたるの立ち姿に通っているのかもしれない。ただそれはまだどちらかといえば、櫻井拓也の寒空の苛立ちの人生と、小野さやかの、世界の豊穣に出逢う喜びとに、感情移入してしまう自分にとっては、未だ分からない心境なのかもしれない、が…。大事なひとが戻ってきていないことを、失語で見つめつづけることは、沈めることではない。映画の無言のはじまりが、竹浪春花の素晴らしすぎる言葉で掘り起こされる瞬間に泣いた。

▲「いつか忘れさられる」

▲「八十八ヶ所巡礼」

▲「ノブ江の痣」

▲「泥酔して死ぬる」

▲「もっとも小さい光」

『短篇集 さりゆくもの』
2月20日(土)より、新宿K’s cinemaほか全国順次公開
配給:ぴんくリンクフィルム

「いつか忘れさられる」
監督・脚本・出演:ほたる
出演:銀座吟八 祷キララ 山下洋子 サトウリュースケ
【ストーリー】 郊外の一軒家。表札には渡辺家5人の名前。リビングには一家の母と父、高校生の娘、そして祖母。 そこに一人足りないのは、この家の長男。その日、駅のホームで母親が受け取ったのは、白い布で覆われた四角い木箱。箱の中には…。

「八十八ヶ所巡礼」
監督・撮影・編集:小野さやか
音楽:八十八ヶ所巡礼
出演:山田芳美

「ノブ江の痣」
監督・脚本・編集:山内大輔
出演:ほたる 可児正光 森羅万象 杉浦檸檬

「泥酔して死ぬる」
監督・脚本・編集・出演:小口容子
出演:佐藤健人 鈴木隆弘 加藤麻矢

「もっとも小さい光」
監督:サトウトシキ
脚本:竹浪春花
音楽:入江陽
出演:櫻井拓也 ほたる 影山祐子 古川一博

©2020「短篇集 さりゆくもの」製作委員会