長澤まさみ「コツコツと積み重ねる仕事だと改めて思った」『すばらしき世界』ナレーションを担当したスポット映像2種

「復讐するは我にあり」で直木賞を受賞した佐木隆三の小説「身分帳」を、西川美和監督が役所広司主演で映画化する『すばらしき世界』が、2月11日より公開される。このほど、TVプロデューサーを演じた長澤まさみがナレーションを担当した15秒スポット映像2種「ドラマ編」と「問題作編」がお披露目となり、併せて、彼女より本作についてのコメントが寄せられた。

これまで一貫してオリジナルにこだわり続けた西川美和監督が、初めて実在の人物をモデルとした原案小説をもとに、その舞台を約35年後の現代に置き換え、徹底した取材を通じて脚本・映画化に挑んだ本作。13年の刑期を終えた三上を待っていたのは、目まぐるしく変化する、想像もつかない世界だった。三上に近づき、彼の姿を面白おかしく番組にしようする二人の若手テレビマン。まっすぐ過ぎるが故にトラブルばかりの元・殺人犯が、いつしか彼らの人生を変えてしまう。

スポット映像「ドラマ編」は、冒頭、「今ほど生きづらい世の中は無いと思うんです」とTVプロデューサー吉澤(長澤まさみ)の今の社会を映し出す印象的なセリフから始まり、13年ぶりに出所した元殺人犯、三上(役所広司)が社会で新たな一歩を踏み出す姿が映し出される。そして最後に、「あなたはこのラストに何を感じますか?」という長澤のナレーションが問いかけてくる。人生の大半を刑務所で過ごした男が見た「新たな世界」は、地獄か?あるいは?この世界は「すばらしき世界」なのか?観客それぞれの胸に突きつけてくるラストシーンが期待できる。


▲スポット映像「ドラマ編」

スポット映像「問題作編」では、「俺はとうに足を洗ってる!」と人生の大半を刑務所で過ごした三上の怒号が鳴り響く。13年ぶりに出所して社会のルールにとまどう元殺人犯、三上。そんな三上を番組のネタにしようと、テレビマンの津乃田(仲野太賀)と吉澤がすり寄るが…。笑顔で走り、泣き崩れ、怒り狂うなど、様々な感情を爆発させる三上。彼に待ち受ける運命は?再生か?再犯か?それとも…。


▲スポット映像「問題作編」

長澤まさみは、2000年のデビュー以来、シリアスからコメディまで作品ごとにころころと色を変え、数々の話題作に出演。人気テレビドラマの映画化『コンフィデンスマン JP プリンセス編』、『MOTHER マザー』では一筋縄ではいかない母親役を演じ、日刊スポーツ映画大賞で主演女優賞を受賞するなど、いま最も輝き、その勢いから目が離せない女優の一人だ。

そんな彼女が演じるのは、TVプロデューサーの吉澤役。若手テレビマンの津乃田に刑務所の受刑者の経歴を事細かに記した台帳「身分帳」を送り、13年ぶりに出所した三上正夫という人物をテレビ番組のネタとして取材するよう焚きつける。乗り気ではなかった津乃田は言われるがままに三上に近づき取材を敢行。三上の密着映像を目にするなり、「もう最高じゃん…!」と様子を伺う津乃田の事は素知らぬふりで不敵な笑みを浮かべる。三上と対面するや、本音と建前を使い分け言葉巧みに三上をそそのかそうとする。そんな場面で吉澤が津乃田へ放つ口撃はなんとも痛烈で、傍観する観客も思わずハッとさせられるはずだ。

“この役には長澤まさみしかいない”と思ったという西川監督は、「(長澤さんは)年齢と共にどんどん幅が広くなっている。もちろん、画面的にもNo.1の美しさだと思います。きれいな女優さんであればあるほど、なかなかヒール役(悪役)を受け入れることに時間がかかると思うんです。でも今の長澤さんなら、これくらいの悪役は、跳ね返してやってくれるだろうなと思ってお願いしました」と語る。

吉澤というキャラクターについて、西川監督と衣裳合わせの際に人柄や仕事に向かう姿勢などを話したという長澤。西川組、役所の芝居に対する姿勢に触れ、「常に緊張感があり、コツコツと積み重ねる仕事だと改めて思った」「求められているものが、どんどん明確になっていくのが楽しかった」と現場を振り返る。「台本はのめりこむようにあっという間に読んでしまいました、時代の流れと共に変わっていく人間の感覚について考えさせられましたね。(出所したばかりの三上は)時代錯誤な人に感じられるけど、そういう時が経ったことに気付いていない人はじつは世の中には沢山いると思います。最後はふしぎと心が温かい気持ちになる作品です」と思いをはせた。

また、役所演じる三上、西川作品の男性像について「三上はどこか愛らしくて可愛らしい一面があるので、(観客は)感情移入していけると思います。過激なシーンもあるんですけど、それがクスクス笑えるシーンになるんです。お芝居を重ねるうちに三上の別の顔をもっともっと観たいと思っていました。西川監督の作品に出てくる男性たちは、どこか欠点があって、完璧でない部分が人間らしさにつながっていると思います」と語る。

一見、吉澤というキャラクターは利益の為なら厭わない下世話さや冷徹さが前面に出ていくのだが、実は彼女の放つ言葉には社会の不寛容や憤りに問題点を感じ、この世の中に一石を投じてやるという確固たる信念も垣間見える。吉澤のセリフの端々にはテレビマンとしての誇りも感じさせるのだ。“才色兼備の切れ者”吉澤がただのヒールではおさまらないのは、長澤まさみの演技力の賜物にほかならない。真っ直ぐにしか生きられない三上とは真逆の、スキルも強みも自覚しながら世間を冷静に見つめ、強くしなやかな女性を演じる長澤まさみ。初めての西川組参加でまた新たな一面にシビれつつ、今後の更なる躍進に期待したい。

『すばらしき世界』
2月11日(木) 全国公開
監督・脚本:西川美和
原案:佐木隆三「身分帳」
出演:役所広司 仲野太賀 六角精児 北村有起哉 白竜 キムラ緑子 長澤まさみ 安田成美 梶芽衣子 橋爪功
配給:ワーナー・ブラザース映画

【ストーリー】 下町の片隅で暮らす短気ですぐカッとなる三上(役所広司)は、強面の見た目に反して、優しくて真っ直ぐすぎて困っている人を放っておけない男。しかし彼は、人生の大半を刑務所で暮らした元殺人犯だった。一度社会のレールを外れるも何とか再生しようと悪戦苦闘する三上に、若手テレビマンの津乃田(仲野太賀)と吉澤(長澤まさみ)がすり寄りネタにしようと目論むが…。三上の過去と今を追ううちに、逆に思いもよらないものを目撃していく…。

©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会