ニース国際映画祭で最優秀外国語短編映画グランプリ獲得!震災で大切な人を亡くした人の“心の復興”を描く『漂流ポスト』2021年3月公開!

震災で大切な人を亡くした人の“心の復興”を描き、各国の映画祭で高評判を受けた清水健斗監督作『漂流ポスト』が、2021年3月5日より公開されることが決定した。併せて、ポスタービジュアルがお披露目となった。

“漂流ポスト”とは、「手紙を書くことで心に閉じ込められた悲しみが少しでも和らぎ、新たな一歩を踏み出す助けになるなら」という想いから、被災地である岩手県陸前高田市の山奥に建てられた郵便ポスト。当初は東日本大震災で亡くなった人への想いを受け止める為のポストだったが、今では病気や事故など、震災に限らず亡くなってしまった最愛の人に向けた想いを手紙に綴り、届ける場所になっている。震災から9年以上経った現在も多くの手紙が届き、その数は500通を超える。手紙は同じ境遇の人々にシェアされ、心の復興を助ける。

2011年3月12日に仕事で岩手を訪れる予定だった清水健斗監督は、自分が1週間前に訪れた場所が津波に流されてしまう様子をニュースで見て、他人事とは思えず、長期ボランティアに参加。そこで直に見聞きした被災者の想いを風化させないために、ニュースで知った“漂流ポスト”を舞台に、心の復興の映画を製作した。

本作の趣旨に賛同した漂流ポストの管理人・赤川勇治の全面協力により、実際に漂流ポストのあるガーデンカフェ森の小舎で撮影は敢行された。東日本大震災で親友の恭子を亡くした主人公・園美役の雪中梨世が実際に漂流ポストに届いた手紙を初めて読んでいるところを撮影したドキュメンタリー映像を本編で使うなど、リアリティを大切に制作された。

園美の中学時代の親友・恭子役の神岡実希、園美の中学時代役の中尾百合音は、本人たちの実際の親友に宛てた手紙を書くというオーディションを経て大抜擢された。そのほか、大人になった園美に漂流ポストの存在を教える彼氏・和也役で藤公太、漂流ポストの管理人・赤川役で永倉大輔が出演する。

本作は、ニース国際映画祭で最優秀外国語短編映画グランプリ、ロンドン国際映画祭外国語長編作品部門で最優秀助演女優賞(神岡実希)、ロサンゼルス・インディペンデント映画祭で最優秀外国語短編映画、テキサスのプレスプレイ映画祭で最優秀短編映画及び最優秀監督を受賞した。

■清水健斗(監督・脚本・編集・プロデュース) コメント
2011年3月12日に仕事で岩手を訪れる予定でした。自分が1週間前に訪れた場所が津波に流されてしまう様子を見て他人事とは思えず、何かしたい一心から長期ボランティアに参加しました。避難所等でのふれあいを通じ被災された方の心に触れ、いろいろ考えさせられました。年月が経ち世間では風化が問題視されはじめ、映画の力で何かできないかと考え制作したのが『漂流ポスト』です。言葉や想いを伝えることが希薄になりつつある時代、自分や相手へ向き合うことができる、手紙だからこそ日頃伝えられなかった言葉が届けられる。その概念は奇しくも震災直後の「絆」の本質に似たものを感じ、ぜひ題材にしたいと思い赤川さんにコンタクトをとりました。ポスト前での葛藤や空を見て亡き人のことを考える動作など、ポストに来た方の心情を表現できるよう事実を取り入れ制作していきました。幸運なことに3年間かけて日本国内だけでなく世界の映画祭にも多数選んでいただき、たくさんの人々にも見てもらうことができ、微力ではありますが貢献できたかのかなとは思っています。海外では映像美と音で表現した「二面性」や「普遍的な人間ドラマ」を評価していただき言葉が通じない人々にも受け入れていただけたのが嬉しかったです。来年で震災から10年が経ちます。震災で再認識した、生きていることのありがたさ・命や日常の儚さ・絆と助け合う心・悲しみから立ち上がる勇気。当たり前すぎて忘れがちな人として一番大切な「心」の部分をもう一度感じてもらう事が大事だと思っています。今作がその力になれれば幸いです。

■赤川勇治(漂流ポスト 管理人) コメント
漂流ポストを作ったのは、被災後、私が営むカフェを訪れた方達に「亡くなった身内や友だちへの想いを話せる人がいない」と相談された事がきっかけでした。私が横浜出身の移住者だった事もあり、周囲や過去を気にせず素直に話せるという方が度々訪ねてくるようになり、話し終わった後はみんな「気持ちが楽になった」と言ってくれた。胸に秘めている大切な人への想いを吐き出すことが、前を向く力になるんだと実感しました。でも、ここにすぐ来れる方ばかりではない、東日本大震災で被災された方は遠くにもたくさんいる。カフェにすぐには来られない人の想いも同様に受け止められないか。「会いたいけれど会えない人への気持ちや伝えられなかった言葉を手紙に書くことで、気持ちが楽になって一歩前へ進む事ができるかもしれない。心の復興につながる」そう考え始めました。震災から年月が過ぎて風化が進む中で、まだ苦しんでいる方もいる。自分としても他に何かできないかと考えていた時に清水監督から映画に関する話をいただきました。ご本人が復興ボランティアをしていたことや、被災者心理に寄り添った作品で風化を止めたいと考えていること、さらに若い人達にも震災の記憶を伝えたいという想いがあることなど、熱意を感じ、作品に協力することにしました。監督が案として書いてきた物語に似ている出来事がちょうどあったということもあります。完成した作品を拝見して、漂流ポストで起きたリアルを繊細に描いていたので安心しました。文字にすることで伝えられなかった言葉が届けられる、ありのままに解き放つことで心が楽になれる。苦しんでいる人やあまり手紙を書かなくなった世代の方達にもポストの立っている意味やメッセージが伝わると思っています。来年で震災から10年、心や人との絆と向き合ってもらう機会にこの作品がなってもらえると嬉しいです。コロナ禍で人との付き合い方や日常が見直されている今にも通じるものがあると思います。そして、もし何か伝えたい事がある場合は手紙に書いてみてください。その想いは必ず届きます。

『漂流ポスト』
2021年3月5日(金)より、アップリンク渋谷ほか全国順次公開
監督・脚本・編集・プロデュース:清水健斗
出演:雪中梨世 神岡実希 中尾百合音 藤公太 永倉大輔
配給:アルミード

【ストーリー】 東日本大震災で親友の恭子(神岡実希)を亡くした園美(雪中梨世)は、心のどこかで死を受け入れられず日々を過ごしていた。ある日、学生時代に恭子と埋めたタイムカプセルが見つかる。中には“将来のお互い”に宛てた手紙が入っていた…。蘇る美しい思い出と罪悪感。過去と向き合う中、震災で亡くなった大切な人へ届けたい言葉・伝えることができなかった想いを綴った手紙が届く“漂流ポスト”の存在を知った園美は、心の復興を遂げることができるのか…。

©Kento Shimizu