鬼才俳優・佐藤二朗が主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で2009年に初演、2014年に再演され演劇界からも絶賛された舞台を、佐藤が監督・原作・脚本さらには自ら出演も果たし、山田孝之主演、仲里依紗、坂井真紀共演で映画化する『はるヲうるひと』。新型コロナウイルスの感染状況を鑑みて5月15日の劇場公開が延期されていたが、このほど、新たに2021年6月に公開されることが決定した。併せて、本作が11月5日から7日に渡り開催された第2回江陵国際映画祭にて最優秀脚本賞を受賞したことが発表され、場面写真もお披露目となった。
本作は、架空の島の売春宿で、生きる手触りが掴めず死んだ様に生きる男女が、それでも生き抜こうともがく壮絶な闘いを描く。
■佐藤二朗(監督) コメント
韓国の江陵国際映画祭で最優秀脚本賞を頂いた。言うまでもなく、役者は「演じる」のみに執心するのがよい。当然のことだ。しかし僕にはどうしても「演じる」欲求とは別腹に「書く」欲求がある。役者ゆえ「書く」欲求は捨てるべきだと考えた時期もあった。しかし「お前は書いていい人間だ」と背中を押してくれた人が何人かいた。その人たちや、「何度読んでも魂が震える」と主演を受けてくれた山田孝之、日頃はわりと辛口(笑)なのに「このホンは面白い」と真っ直ぐに僕の目を見て言った坂井真紀、「このホンをつまらなく撮ったら僕の責任」と言ったカメラマン神田創らに、ほんの少しかもしれないが報いられた気がする。役者界隈の賞で、頂いた唯一の賞がNG大賞のみの僕が、まさか異国の地で最優秀脚本賞を頂けるとは思いもよらなかった。そして石橋貴明さんとの対談で「賞なんていらない!」とカッコつけて言ったが、石橋さん、ごめんなさい、頂いたら頂いたで、嬉しいもんですね、賞。
『はるヲうるひと』
2021年6月 テアトル新宿ほか全国公開
監督・原作・脚本・出演:佐藤二朗
出演:山田孝之 仲里依紗 今藤洋子 笹野鈴々音 駒林怜 太田善也 向井理 坂井真紀
配給:AMGエンタテインメント
【ストーリー】 その島は、至るところに「置屋」が点在する。本土からは日に二度連絡船が出ており、客の往来の足となっている。住民たちはこの閉塞された島で一生を過ごす。女は客から「外」の話を聞いて思いをはせる。男は、女たちのそんな「夢」を一笑に附して留まらせる。ある置屋にその「三兄妹」はいた。長男の哲雄(佐藤二朗)は店を仕切り、その凶暴凶悪な性格で恐れられている。次男の得太(山田孝之)は哲雄にこびへつらい、子分のようにしたがっている。長女のいぶき(仲里依紗)は、長年の持病を患い床に伏している。ここで働く4人の個性的な遊女たちは、哲雄に支配され、得太をバカにして、いぶきに嫉妬していた。女を売る家で唯一女を売らず、それどころか優遇された箱入り娘。しかも、いぶきはだれよりも美しかった。その美しいいぶきを幼少から見守り寄り添う得太であった…。
© 2020「はるヲうるひと」製作委員会