山田孝之「思い出したくもないし、しゃべりたくもない」佐藤二朗監督作について心境を明かす

鬼才俳優・佐藤二朗が主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で2009年に初演、2014年に再演され演劇界からも絶賛された舞台を、佐藤が監督・原作・脚本さらには自ら出演も果たし、山田孝之主演、仲里依紗、坂井真紀共演で映画化する『はるヲうるひと』が、6月4日より公開される。このほど、4月28日にホテル インターコンチネンタル 東京ベイにて完成報告会見が行われ、佐藤二朗、山田孝之、坂井真紀、今藤洋子、笹野鈴々音が登壇した。

本作は、架空の島の売春宿で、生きる手触りが掴めず死んだ様に生きる男女が、それでも生き抜こうともがく壮絶な闘いを描く。映画化にあたり佐藤は、「頭が悪く、気が小さい、泣き虫で、でもよく吠える、どうしようもないチンピラを山田孝之にやってもらいたかった。そんな山田孝之を見てみたかった」と山田にオファーした理由を説明。

そんな佐藤の思いを受けた山田は、主人公・得太役を引き受けた理由について「脚本を読んで、めちゃくちゃ面白かった。得太が可愛そうだったので、寄り添ってあげたかった」とコメント。続けて「全力でやらないとできないと思ったので、一度お断りした」ことを告白。「すごい本で、すごい役だからやりたいんだけど、全編通して関西弁だったので。方言指導の方についてもらって意識しながらやるのは無理」だと判断したのこと。最終的には山田が佐藤に「標準語じゃダメですか?」と聞いたそうで、佐藤は「孝之がやってくれるなら!」と設定を変更したという。

厳しい撮影を終えた山田は「2年経って、取材で映画の質問をされて、とても辛かった過去を思い出させられる。本当に辛かった」と撮影中の思いを告白。「こんなことを会見で言うのもあれですけど、思い出したくもないし、しゃべりたくもないんですよ」と、孤独な得太を生きたからこその心境を述べ、「重くはなっちゃうんですけど、得太が背負っている重荷をみんなで少しずつ分けてあげて欲しい」と語っていた。

『はるヲうるひと』
6月4日(金)より、テアトル新宿ほか全国公開
監督・原作・脚本・出演:佐藤二朗
出演:山田孝之 仲里依紗 今藤洋子 笹野鈴々音 駒林怜 太田善也 向井理 坂井真紀
配給:AMGエンタテインメント

【ストーリー】 その島は、至るところに「置屋」が点在する。本土からは日に二度連絡船が出ており、客の往来の足となっている。住民たちはこの閉塞された島で一生を過ごす。女は客から「外」の話を聞いて思いをはせる。男は、女たちのそんな「夢」を一笑に附して留まらせる。ある置屋にその「三兄妹」はいた。長男の哲雄(佐藤二朗)は店を仕切り、その凶暴凶悪な性格で恐れられている。次男の得太(山田孝之)は哲雄にこびへつらい、子分のようにしたがっている。長女のいぶき(仲里依紗)は、長年の持病を患い床に伏している。ここで働く4人の個性的な遊女たちは、哲雄に支配され、得太をバカにして、いぶきに嫉妬していた。女を売る家で唯一女を売らず、それどころか優遇された箱入り娘。しかも、いぶきはだれよりも美しかった。その美しいいぶきを幼少から見守り寄り添う得太であった…。

© 2020「はるヲうるひと」製作委員会