田中裕子「朝起きて日めくりカレンダーをめくること。今日は大安」日々の小さな楽しみを告白!

芥川賞と文藝賞をダブル受賞した若竹千佐子のベストセラー小説を、田中裕子が15年ぶりとなる主演をし、蒼井優が共演する、沖田修一監督作『おらおらでひとりいぐも』が、11月6日より公開中。このほど、同日にTOHOシネマズ 日本橋にて初日舞台挨拶が行われ、キャストの田中裕子、蒼井優、濱田岳、青木崇高、そして沖田修一監督が登壇した。

田中にとって『いつか読書する日』以来15年ぶりに主演作となった本作。映画舞台挨拶への参加は、2014年公開の『家路』以来約6年半ぶりとなり、初日を迎え、満を持しての登壇となった。本作について、「この映画は想像を超えてポップです。観終わってちょっとでも弾けてもらえたら幸せです」と柔和な表情を浮かべた。さらに、桃子さんの心の声である“寂しさ”たちを演じた濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎に囲まれての撮影には、「沢山の自分自身と出会う中で、目と目を合わせていいものなのか、存在をわかっていいものか難しかったけれど、余計なことをしないよう心掛けました。変だったら監督が言ってくれるだろうと、絶大なる信頼のもと演じました」と振り返った。

そんな田中との初仕事に、沖田監督は「撮影中から嬉しいというか、ふとした瞬間に“田中裕子さんとお仕事をさせてもらっている”という喜びがあった。田中さん演じる桃子さんが凄くチャーミングで、撮影中もずっと見ていたいと思いました」と笑顔を見せた。

昭和時代の桃子さん役の蒼井も「田中さんと同じ役を演じられる機会なんてそうそうないですし、ずっと夢みたいでした!(現場では)自分の家族のこれからと過去を考えながら、こんなに自分の人生と合わせながら撮影をしたのは初めてでした。いい仕事だったと思います」と喜んだ。桃子さんの脳内の声を演じるために、田中が撮影中の現場にも行ったが、「たまに台詞を言うのを忘れるくらい現場での芝居がとても楽しくて。田中さんの視界に入らないようにこっそりといました(笑)」と撮影の舞台裏についてのエピソードも披露。それに対し田中は、「照明さんかな?と思うくらい現場の隅にいらっしゃいましたね」と振り返り笑顔を浮かべた。

桃子さんの心の声である“寂しさ1”役の濱田は、「チャレンジングな役だし、僕は桃子さんのペースを乱す役回りでした。でも青木さんや宮藤さんら心強いお兄さん方がいたので、末っ子全開で自由にペースを乱すことを目指しました」と熱演を報告。また“寂しさ2”役の青木は、先日行われた第33回東京国際映画祭での舞台挨拶を振り返り、「英語通訳の方が役名を“ロンリネス2(ツー)”とめちゃくちゃカッコ良く紹介してくださって。撮影中に自分が“ロンリネス”だと聞いていたら役作りも違った気がする」と会場を笑わせた。

映画の内容にちなんで、日々の小さな楽しみを聞かれた田中は、「朝起きて日めくりカレンダーをめくること。今日は大安でした。カレンダーに『一粒万倍日』と書かれていたりすると、いい事をしたら万倍に返ってくるのかなあ?と思って、そんな日は“良し!”と思ったりします」と素朴な素顔を覗かせた。

「育てている植物を愛でる」という蒼井は、「新しい花芽が出来たりすると嬉しくて、植物と向き合っている時間は本当に楽しい。今の時期はパールアカシア。立派な花芽を付けているので、誇らしいです」と満面の笑み。濱田は「家に帰って缶ビールを開けること。撮影で残りワンカットの時とかは、頭の中では真っ暗な台所でブ〜ンと唸る冷蔵庫が浮かんでいます」と告白。青木は「小銭貯金」というも、「最近は銀行の手数料が上がっているので、割に合いません。ショックです」と残念そう。手数料の高騰に蒼井が「え〜?本当ですか?」と疑問を挟むと、青木は「どんどん手数料が上がっている。銀行に預けるのはそろそろやめようかなぁと思っています」と口にした。一方、沖田監督は「近所の喫茶店のポイントカードを貯めること」と告白。「50杯くらい飲まないとたまらないカードで、貯まったとしても200円くらいの割引。でもそれを貯めようと挑戦中です。貯まって嬉しいというよりも“貯める奴もいるんだぞ!なめるなよ!”という反骨心なのかもしれない」と明かした。

最後に、田中は「一日でも早く、気兼ねなく映画館で映画が観られる日が来るように。肩をぶつけ合ってコンサートを聞きにいける日が来るように。小さな小屋で息を潜めて芝居を観ることができるように。映画館で久しぶりに映画でも観ようかなと思ってくれる人がいたら『みんなで待っています』と伝えたいです」とメッセージを送り、イベントは幕を閉じた。

『おらおらでひとりいぐも』
11月6日(金)より全国公開中
監督・脚本:沖田修一
原作:若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」
音楽:鈴木正人
主題歌:ハナレグミ「賑やかな日々」
出演:田中裕子 蒼井優 東出昌大 濱田岳 青木崇高 宮藤官九郎 田畑智子 黒田大輔 山中崇 岡山天音 三浦透子 六角精児 大方斐紗子 鷲尾真知子
配給:アスミック・エース

【ストーリー】 1964年、日本中に響き渡るファンファーレに押し出されるように故郷を飛び出し、上京した桃子さん(田中裕子)。あれから55年。結婚し子供を育て、夫と二人の平穏な日常になると思っていた矢先…突然夫に先立たれ、ひとり孤独な日々を送ることに。図書館で本を借り、病院へ行き、46億年の歴史ノートを作る毎日。しかし、ある時、桃子さんの“心の声=寂しさたち”が、音楽に乗せて内から外から湧き上がってきた。孤独の先で新しい世界を見つけた桃子さんの、ささやかで壮大な一年の物語。

© 2020「おらおらでひとりいぐも」製作委員会