蒼井優&高橋一生、黒沢清監督から「持って生まれた“何か”がある」「舌を巻くほどうまい!」と大絶賛!

日本を代表する映画監督・黒沢清が、主演に蒼井優、共演に高橋一生を迎え、6月6日にNHK BS8Kにて放送された同名ドラマを、スクリーンサイズや色調を新たにして映画化する『スパイの妻<劇場版>』が、10月16日より公開中。このほど、10月17日に新宿ピカデリーにて舞台挨拶が行われ、キャストの蒼井優、高橋一生、東出昌大、坂東龍汰、そして黒沢清監督が登壇した。

観客が入った状態の劇場での本作の舞台挨拶は今回が初めて。蒼井は、多くの観客が詰めかけた客席を見て「映画館に帰ってきてくださってありがとうございます」と笑顔で語り、高橋も「感慨深いです」としみじみと語った。

蒼井は、黒沢監督作品の魅力について、限られた美術セットの中での撮影でありながらも、完成した作品が大きなスケール感を持っている点に触れ、「画の中を撮りながら、画の外も撮られているところがすごい。銀獅子賞監督の前で何をえらそうにって感じですけど(笑)、すごく骨太な映画ができたと思います」と力強く口にした。

黒沢監督は、これまでも何度も仕事を共にしてきた蒼井を「華がある」と絶賛。「画面に映ると隅にいても、後ろを向いていても絶対に輝くんですね。持って生まれた“何か”があると今回、とりわけ強く感じました」とコメント。また、本作で初めて黒沢作品に出演した高橋についても、「舌を巻くほどうまい!『うまい』に尽きます。長ゼリフでも短いものでも、見ている側にセリフが飛び込んできて、喚起させる。たぶん、世界で一番うまいんじゃないかなと思います」とこれまた大絶賛した。高橋は、そんな黒沢監督の言葉に「もう思い残すことはないんじゃないですかね。今日、終わってもいいくらい嬉しい言葉をいただきました」と感激していた。また、黒沢監督は本作と近年の黒沢作品の常連となっている東出について、「大好きです。ご本人はこう言うと嫌がるかもしれませんが、『あやしい』んですね。妖怪の“怪”のあやしさもあるし、“妖”のあやしさもある。出てきた瞬間、何かが起こりそうな感じがするところが大好きです」と半ば“妖怪”を彷彿させながらも存在感を褒め称えた。

坂東は、本作への出演を「緊張が最初はすごくありました。でも、みなさんがいろいろ話をしてくださったり、リラックスして終えられました。試写を見て、作品の一部になれていたのが嬉しくて、鳥肌が立ちました」と述懐。黒沢監督はそんな坂東について、「全然、緊張してらっしゃらなくて、蒼井さんともかなりハードなやりとりがあったけど、楽々やっていて、この人はものすごい大物になるかも」とそのポテンシャルにお墨付きを与えた。

ここで、MCより、本作に登場する強い信念を持った登場人物たちにちなんで、登壇陣に「これだけは折れないというものは?」という質問が投げかけられると、一同思案顔。高橋は「『これだけは折れない』というものを、いつでも折ろうと思える覚悟」と回答。坂東は「折りたくないものは、芝居の中でワクワクする気持ちをずっとなくしたくないということ」と語り、蒼井はこの言葉に「素敵ですね。私もそういう時期があったのかな…」としみじみ。なかなか答えが出ずに考え込んでいた東出は、まさにその自身の状態「あきらめないで考え続けることですね」と回答した。

この日は、ベネチア国際映画祭の銀獅子賞のトロフィーも生の観客の前で初めてお披露目された。黒沢監督は「(トロフィーを)目の当たりにすると、ささやかながら映画の歴史にこの『スパイの妻』が名を刻んだんだなと実感がわいてきます」と喜びを口にした。蒼井は、そんな監督に「本当におめでとうございます。そして、こうして私たちにも見せてくださりありがとうございます。素晴らしいこと過ぎて、自分の言葉をどう添えたらいいのかわからないくらいですが…こうしてみなさんと共有できてうれしいです」と祝福の言葉と感謝の思いを贈った。

最後に、蒼井は「いま、劇場のみなさんも大変な状況ですが、映画館にくる喜びを少しでも多くの方が体験してくださったら幸せです」、高橋は「人間が志や信念を貫いていく中で、のっぴきならない秘密や抱えなくちゃいけないことはたくさんあるのかもしれませんが、そうすればそうするほど、個人というものと、その真逆の大勢というものの対比が見えてくるんじゃないかと思うし、それはいまの世界でも通じると思います。心の中に一人一人の答えが出てくる作品になっていると思います」と語り、温かい拍手の中で本舞台挨拶は幕を閉じた。

『スパイの妻<劇場版>』
10月16日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー中
監督・脚本:黒沢清
脚本:濱口竜介 野原位
音楽:長岡亮介
出演:蒼井優 高橋一生 東出昌大 坂東龍汰 恒松祐里 みのすけ 玄理 笹野高史
配給:ビターズ・エンド

【ストーリー】 1940年、神戸で貿易商を営む優作(高橋一生)は、赴いた満州で偶然恐ろしい国家機密を知り、正義のため、事の顛末を世に知らしめようとする。聡子(蒼井優)は反逆者と疑われる夫を信じ、スパイの妻と罵られようとも、その身が破滅することも厭わず、ただ愛する夫とともに生きることを心に誓う。太平洋戦争開戦間近の日本で、夫婦の運命は時代の荒波に飲まれていく…。

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