惜しくも昨年5月に95歳で亡くなった、世界的絵本作家ジュディス・カーによる自伝的小説を映画化した『ヒトラーに盗られたうさぎ』が、11月に公開される。このほど、本作の予告編がお披露目となった。
本作は、1933年、ヒトラーの台頭によってナチスが政権を握る直前にその迫害から逃れるために家族とともに故郷ドイツを出国、スイス、フランスを経て1936年にイギリスへと渡ったジュディス自身の少女時代の過酷な亡命生活の体験をもとに、“9歳の少女アンナ”が貧困や差別などの困難を乗り越えながら家族との絆を深めていく姿を描く。
予告編は、ヒトラーの権力が強まりつつある第2時世界大戦前のドイツで、無邪気にその物真似をしていたころのアンナの姿から始まる。「ユダヤ人との闘いとはすなわち排除だ!」まるで“他人ごと”のように振る舞う妹に対して、兄マックスは「僕らはユダヤ人だろ?」と呆れながらたしなめるほどだった。そんなある日母親から突然呼び出された二人。「ヒトラーが(選挙に)勝ったら弾圧が始まる」…ナチスの脅威から逃れるため、何の不自由もなかったアンナの子供時代は突然終わりを告げ、大切にしていた“ももいろうさぎのぬいぐるみ”を家に置き、わずかな荷物だけをもって家族とともに逃げる様にドイツから出国することになる。しかしそれは、スイスを皮切りに、フランス、イギリスへと続いていく長い逃亡生活の旅の始まりでもあった…。映像には、これまでのドイツでの恵まれていた生活から一転して生活が困窮、しかも国を渡るたび、言葉も友達もすべてゼロからスタートするという経済的にも精神的にも辛い生活の中で“明るい絵”を描けなくなってしまったアンナが、優しい父の言葉や家族の愛情に後押しされ「失くしたって平気」「新しいものを見つけるから」と言えるほど、どんな環境でも前だけを向いて歩き、そしてどんどん強くたくましく成長していく姿が映し出される。
ナレーションは、女優・タレントの三田寛子が務める。本作で映画予告編のナレーションに初挑戦した彼女は、実際に3児の母親として奮闘している。その姿が、どんなに辛い環境でも強く、同時に優しさも忘れず生き抜こうとするアンナや家族の姿を感じさせることから今回の起用が決定した。
■三田寛子(ナレーション) コメント
母親の明るく強く家族を支える姿と、平和な日常の暮らしが奪われても、例えゼロからの出発になろうとも、希望を持ち続け、無くしても再び見つけ出せると信じる事の大切さを、10歳の少女が時代を超えて教えてくれました。
『ヒトラーに盗られたうさぎ』
11月 シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
監督・脚本:カロリーヌ・リンク
原作:ジュディス・カー
脚本:アナ・ブリュッゲマン
出演:リーヴァ・クリマロフスキ オリヴァー・マスッチ カーラ・ジュリ
配給:彩プロ
【ストーリー】 1933年2月。ベルリンに住む9歳のアンナ(リーヴァ・クリマロフスキ)は、兄のマックスや友人とともにカーニバルを楽しんでいた。しかし、同じ夜、クラシックのコンサートに行く準備をしていたはずの両親はなぜか出掛けないまま、深刻な顔で話し込んでいた。そして翌朝アンナは「家族でスイスに逃げる」と母(カーラ・ジュリ)から突然告げられる。実は、新聞やラジオでヒトラーへの痛烈な批判を展開していた辛口演劇批評家だった父(オリヴァー・マスッチ)はユダヤ人であったため“次の選挙でヒトラーが勝ったらヒトラー反対者への粛清が始まる”という忠告を受けており、選挙が近づきヒトラーの勝利が現実味を帯びてくるにつれ、身の危険を感じた父と母はヒトラーの弾圧から逃れるために密かに逃避行の準備を始めていたのだ。住み慣れた家を離れる際「持ち物は一つだけ」と母に告げられたアンナは、大好きな“ピンクのうさぎのぬいぐるみ”、そしてお手伝いさんのハインピー、食卓、書斎、ピアノ、台所…一つ一つに別れを告げる。そしてそれは、それまで何不自由なく暮らしていた彼女の平和な家族の風景が一変、この日を境に過酷な逃亡生活へと足を踏み入れていく始まりでもあった。
©2019SOMMERHAUS FLIMPRODAKTION GMBH/LA SIALA ENTERTAINMENT GMBH / NEXTFILM FILMPRODAKTION GMBH&CO.KG/WARNER BROS.ENTERTAINMENT GMBH