映画愛に満ちたイスラエル発の人生ドラマ『Golden Voices(英題)』が、邦題『声優夫婦の甘くない生活』として12月18日より公開されることが決定した。併せて、予告編、ポスタービジュアル、場面写真がお披露目となった。
“洋画の吹き替え声優夫婦”というこれまでにない設定で“人生の再スタート”を描き、アキ・カウリスマキを思わせるクラシカルな映像でコミカルかつドラマティックに展開する本作。ソ連からイスラエルに移民してきたスター声優夫婦は、夢と希望を抱いて第2の人生をスタートさせる。しかし現実は厳しく、声優の仕事にありつけない二人がようやく手にしたのは、人には言えない闇仕事だった。妻の秘密が発覚したことをきっかけに、長年気付かないふりをしてきたお互いの「本当の声」が噴出し始める。
本作は、現在、新型コロナウイルスの影響で本国イスラエルでは未公開にありながら、ヨーロッパを中心とした各国の映画祭で上映され、2019年タリン・ブラックナイト映画祭で脚本賞、NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞、2020年バーリ国際映画祭では監督賞、特別賞(女優部門)を受賞するなど、世界から喝采を浴びた。
監督を務めたエフゲニー・ルーマンは、自身の旧ソ連圏から移民した経験をもとに、7年の歳月をかけて丁寧に作り上げ、イスラエル史上最大の移民の波である、「鉄のカーテン」崩壊後により良い生活を願って海を渡ったロシア系ユダヤ人たちの歴史の一幕をスクリーンに描き出す。
溢れんばかりの映画愛に包まれた本作は、今年、生誕100周年を迎えるイタリアの名匠フェデリコ・フェリーニに最大のオマージュを捧げている。作中ではフェリーニの『ボイス・オブ・ムーン』のほか、ダスティン・ホフマン主演『クレイマー、クレイマー』など往年ハリウッドの名作が登場し、映画ファンをノスタルジックに楽しませてくれる。
予告編は、主人公夫婦の夢であったイスラエルへの移住から始まる。妻ラヤがテレフォンセックスの仕事を始め、夫ヴィクトルは海賊版ビデオの制作のために映画泥棒になってしまう、夫婦の決して甘くはない新生活が映し出される。そして、「映画は人生を豊かにする。声優はその出会いの案内人だ」と語るヴィクトルに、「私の人生も豊かにしてほしかった」と答えるラヤ。互いがすれ違っていく様もほろ苦く、ラヤの秘密のロマンスや、フェリーニの新作を上映しようと奮闘するヴィクトルなど、怒涛の展開が気になる仕上がりになっている。
ポスタービジュアルには、映画館に座る夫婦の姿が収められ、「ほんとうの声、聴こえてますか?」という、パートナーがいる人はドキッとしてしまうような、コピーが添えられる。後ろには怪しげなガスマスクの人物が座っており、どこか一筋縄ではいかない夫婦の物語が想像させられる。
『声優夫婦の甘くない生活』
12月18日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:エフゲニー・ルーマン
脚本:ジヴ・ベルコヴィッチ
出演:ウラジミール・フリードマン マリア・ベルキン
配給:ロングライド
【ストーリー】 1990年、イスラエルへ移民したヴィクトルとラヤは、かつてソ連に届くハリウッドやヨーロッパ映画の吹き替えで活躍した声優夫婦。しかし、夢の第2の人生のはずが、新天地では声優の需要がなかった。生活のため、ラヤは夫に内緒でテレフォンセックスの仕事に就き、思わぬ才能を発揮。一方ヴィクトルは、違法な海賊版レンタルビデオ店で再び声優の職を得る。ようやく軌道に乗り始めたかに見えた日々。しかし、妻の秘密が発覚したことをきっかけに、長年気付かないふりをしてきたお互いの「本当の声」が噴出し始める。