山田孝之「試写会で、客観視できなかった」撮影期間中、役に没入しすぎて辛い思いを抱えていたことを告白!

「とんび」、「流星ワゴン」など、大切なものを失った家族が再生していく姿を描いてきた重松清による累計発行部数8.5万部を超える小説を、山田孝之を主演に迎えて映画化する『ステップ』が、7月17日より公開中。このほど、7月24日に大ヒット記念オンライントークショーが行われ、山田孝之と飯塚健監督が登壇、そして國村隼、白鳥玉季、角田晃広、主題歌を担当した秦基博がそれぞれリモートで登場した。

男手一つで娘を育てる等身大のシングルファザー・健一を演じた山田は、開口一番「こんにちは!」と大きな声で元気いっぱいに挨拶し、「まだ観ていない方はぜひ観に行ってください」と作品をアピール。飯塚監督も、コロナの影響で一度延期になった本作がようやく公開を迎えられたことを喜びながら、「大変な情勢の中ですが、ぜひ映画館でご覧ください」と口にした。続いて“リモート出演”という形で、健一の義父・明役の國村、健一の娘・美紀役の小学生時代を演じた白鳥、健一の義兄・良彦役の角田が画面上に登場。久々に顔を合わせた共演者たちに「みなさん元気そうで嬉しいです!」と山田が声をかける中、國村、白鳥、角田もそれぞれ笑顔で、やっと本作が公開され今回のイベントが実施できた喜びを語った。

まずは最初のコーナー「リモート家族会議を考えよう!」がスタート。本イベントではリモートで『ステップ』“ファミリー”トークが展開されていくが、登壇者たちは普段どのようにリモートでコミュニケーションをとっているのか、それぞれの使い方について語られた。山田や飯塚、國村が取材や打ち合わせなどでのリモート会議を挙げる中、角田は東京03のメンバー同士でのリモート飲み会や、リモート単独ライブの実績についてコメント。出演者の中で一番リモート慣れしているかと思いきや、「今日はWi-Fiの環境が悪くて…」と絶妙なタイミングでフリーズし笑いを誘った。

続いて、ゲスト陣が出演したシーンを紹介するコーナーへ。山田、國村、角田の3人が並んで寿司屋で食事をするシーンを実際に上映しながら、それぞれ撮影当時を振り返った。本シーンでは國村の絶妙な会話の“間”が印象的だが、実はこの間は、國村が台詞を一瞬忘れたために生じたものだったことが飯塚監督によって明らかに。「(國村)隼さんに『俺、いま本当に忘れてたけど大丈夫?』と聞かれたんですよ(笑)。でも僕はそれが素晴らしかったから、『すごく面白かったからOKです』と言った記憶があります」とまさかの裏話を披露した。山田は撮影当時を振り返りながら、「テストの時に、何をどのタイミングで食べるかすごく考えないといけないから、緊張します」と食事シーンの難しさをコメント。角田は「3人きりでやらせていただいているので、贅沢な空間だなと思いながら演じさせていただきました」と日本を代表する名優たちとの貴重な共演を振り返った。

話題がそのほかの印象的なシーンに及ぶと、白鳥は、電車が走る陸橋の上を山田と二人で走るシーンをピックアップ。「休憩時間に、山田さんが電車は電気で走っていることを教えてくれた。山田さんは優しかったです!」と答え、これには山田も「100点の答え、ありがとう」と笑顔に。飯塚監督はそんな二人を「あったかいなと思いながら撮っていました。お似合いでしたね(笑)」と笑顔を見せた。

ここで、スペシャルゲストとして、本作の主題歌「在る」を手掛けた秦基博が登場。映画を観た上で本楽曲を書き下ろしたという秦は、本作で一番印象的だったのは「存在するということ」だったと明かし、「(健一の亡くなった)奥さんやいろんな関係の人たちがそこに存在していることを感じた。自分がこの曲で一番言いたいことが“そこに在る”ことだったので、『在る』というタイトルにしました」と曲に込めた想いを告白。飯塚監督は、初めて「在る」を聴いた時、エンドロールで主題歌として流れる本楽曲について「本編を最後まで観ていただいて、お客さんを送り出していただく音楽として、これ以上ないなと思いました」と感慨深げに話した。

トークショーでは、映画のロケ地で秦が歌う印象的な「在る」のミュージックビデオも上映された。秦はミュージックビデオの撮影について、「陸橋とか坂とか、映画のロケ地で歌わせていただく機会はなかなかない」としてその貴重さを振り返り、映画と同じく監督を務めた飯塚は「この映画の象徴のひとつが陸橋なので、そこで秦さんに歌ってほしいという思いがあった。その中で何を見せられるかということだけを考えた」とミュージックビデオへの想いを語った。

トークショーの後半には、視聴者から映画公式TwitterとInstagramで募集した質問に、ゲスト陣が回答するコーナーを実施。「ゲスト陣が最近言われて嬉しかった言葉は?」という質問には、角田が「仕事で失敗した時に、東京03メンバーの飯塚が『そういうダメなところも角ちゃんの面白いところなんだよな』って言ってくれる」と笑顔で答え、「嬉しいなあというか救われるというか…すいませんノロけちゃって!」と東京03の仲良しぶりをアピール。続いて國村が、人からかけられた嬉しい一言はあまり覚えていないと語ると、飯塚監督がすかさず「かねてから一緒にやりたかったから、本人に『光栄です』と伝えた」「『ステップ』を観た人は隼さんがすごいって言ってる」とコメント。これには國村も「それはすごくうれしい言葉!この映画を観てそんな風に思ってくださって、今、本当にほっこり…嬉しい!」と満面の笑みを見せた。さらに山田も「出演する作品に國村さんがいらっしゃると、みんな安心って言いますよ」とフォローすると、國村は「役者として二つも嬉しい言葉をいただいた」とさらに笑顔を見せた。秦は、あまり思いつかないとしながらも「『体幹がしっかりしてる』って褒められて嬉しかった」と意外なポイントを語り、山田がこれに「わかります!軸だからかな?」と共感する一面も。そして山田は、「やっぱり『ステップ』を観た方々が、『素敵な映画だね』って言ってくれたことが、非常に嬉しかったです!」とカメラ目線でばっちりコメントした。

次に、「共演者の演技ですごいと思ったポイントは?」という質問には、國村が「山田君と一緒の時は、彼の集中力やお芝居はもちろん、本当に想像のつかないものが出てくる」と山田を絶賛。今回の役は、義理の父子ではあるものの、年月を経てやがて健一を本当の息子と呼べるようになる関係だったが、これには、山田が作り上げた“10年間を過ごしてきた健一”の姿によって、自らのキャラクターに影響を受けた部分も大きいという。このエピソードにはゲスト陣からも拍手が。最年少の白鳥は、山田や國村、余貴美子らと共演した、亡き母の故郷に帰省して「迎え火」を行うシーンを挙げ、「みなさんの雰囲気がすごかった」と当時を振り返った。また、本作を経てどんな役者になりたいか問われると、「現場を明るくできる女優さんになりたい!」と、実力派子役らしく笑顔で語った。

改めて本作を振り返った山田は、妻を亡くした健一の役作りに真摯に取り組んだ結果、撮影期間中はずっと健一として辛い思いを抱えていたことを明かし、試写でも「健一の辛かった過去をもう一度見せつけられた気がして、客観視できなかった」と告白。「何人か他の役で人生を経験していけば薄れていくので、時間はかかるけど観られるかもしれません」と語り、飯塚監督に対して「どうします?いきなり5年後ぐらいに、『ステップ観ましたよ!』ってすごい熱いメールが来たら!」と笑わせた。

最後に、角田は「凄くいい映画なんですよ!こういう時期なので、タイミングが合って行ける時が来たら観てほしいです」、白鳥は「とても素敵な映画だと思うので、すごくたくさんの人に観てもらいたいです」、國村は「1回観た方でも、今日の撮影シーンの裏話を聴いて、また劇場でも観てください」、秦は「『在る』という曲が生まれるぐらい、色んなインスピレーションをもらえる素敵な映画だと思います」、飯塚監督は「何か特別なことが起きる話ではないかもしれないですが、続いてく日常が当たり前じゃないということを描いた映画なので、ぜひ劇場でご覧ください」、そして山田は、「僕は健一としてその期間を生きたので辛かったんですけど、この映画は愛の物語です。辛い涙というよりは、彼らの愛情を観て、嬉しくなって、涙が出てるんじゃないかと思います。とても良い映画らしいので(笑)。もしタイミングが合えば、劇場という集中力の高い空間で、この作品とまっすぐ向き合っていただけたら嬉しいです」と視聴者へメッセージを贈り、本イベントは幕を閉じた。

『ステップ』
7月17日(金)より全国ロードショー中
監督・脚本・編集:飯塚健
原作:重松清「ステップ」
主題歌:秦 基博「在る」
出演:山田孝之 田中里念 白鳥玉季 中野翠咲 伊藤沙莉 川栄李奈 広末涼子 余貴美子 國村隼 中川大志
配給:エイベックス・ピクチャーズ

【ストーリー】 健一(山田孝之)はカレンダーに“再出発”と書き込んだ。始まったのは、2歳半になる娘・美紀(中野翠咲、白鳥玉季、田中里念)の子育てと仕事の両立の生活だ。結婚3年目、30歳という若さで突然妻を亡くした健一はトップセールスマンのプライドも捨て、時短勤務が許される部署へ異動。何もかも予定外の、うまくいかないことだらけの毎日が始まった。そんな姿を見て、義理の父母(國村隼、余貴美子)が娘を引き取ろうかと提案してくれたが、男手一つで育てることを決める。妻と夢見た幸せな家庭を、きっと天国から見ていてくれる妻と一緒に作っていきたいと心に誓い、前に進み始めるのだ。美紀の保育園から小学校卒業までの10年間。様々な壁にぶつかりながらも、前を向いてゆっくりと“家族”への階段を上る。泣いて笑って、少しずつ前へ。

(C)2020映画『ステップ』製作委員会