松本動監督「明確な台本がありません」12人の役者たちによる独白劇『2020年 東京。12人の役者たち』特報映像

新型コロナウイルスの状況下で、松本動監督がワークショップに参加した12人の役者たちとオンラインで制作した長編作『2020年 東京。12人の役者たち』が、近日公開される。このほど、本作の特報映像がお披露目となった。

新型コロナウイルスがパンデミック化し、緊急事態宣言が発表されて閉塞感が蔓延する2020年東京を舞台に、松本動監督のワークショップに参加した12人の役者たちが、「私の職業は自分です」をテーマに自分自身を演じる本作。自らスマートフォンを使って日々撮影し、様々な世界を切り取り、自撮りや独白という表現方法も用いながら、人生観、役者論、未来への展望などなど、内に秘めたあらゆる思考や感情を浮き彫りにしていく。現実と虚構の間であるイマジナリーラインを往来する事により、ドキュメンタリーで“事実”を捉え、それをフィクションへと昇華し“真実”をあぶり出す、そんな「ドキュフィクション」作品として構築される。

2019年9月、映画監督・松本動は、俳優向け演技ワークショップ「CiNEAST」にてゲスト講師を務めるにあたり、ワークショップを通しての映画制作を提案。俳優と映画監督のコラボレーションワークショップ「シネアストラボ」がスタートする。約半年の準備期間を経て、今春より本格的な撮影を開始しようとしていた矢先、新型コロナウイルスの感染拡大で、撮影中止を余儀なくされる。そして今年4月、プロジェクトの中止も検討される中、松本監督とCiNEASTは今だからこそ伝えるべきテーマを、今だからこそできる手法で制作できないかと模索し、オンラインで映画を制作することを決定した。

映画界全体が危機に瀕している最中でも、映画人たちがオンラインにより映像制作を試み、既に幾つかの短編作品がインターネット上に配信され始めている。そんな中、本作は敢えてネット配信ではなく、新型コロナウイルスが終息し、再び映画館で映画が思う存分楽しめる未来に希望を込め、長編映画にこだわって制作される。日々記録した映像を松本監督がネット経由で受け取り、編集するスタイルで進められており、7月中旬に完成予定だ。

■松本動(監督) コメント
自分という存在は、他の何者でもなければ、自分以外の何者にも成り得ない。それが人間への天命でありますが、それを逸脱しようと藻掻く人種が“役者”という輩たちです。成れもしない他者に成りきる為には、自分自身を分析し、追求してゆく事が重要であり、天賦の才を信じ、世の中がどう変化しようとも、その全てを学びとし、自分の内に秘めた未知の能力を引き出す事によって、はじめて役者は他者に成り得る事が出来るのです。役者という生き物には、境界線がありません。役者にとって日々の生活全てが人生であって仕事でもあります。役者という職業は、“自分自身”に他ならないのです。新型コロナウイルスの終息を、ただ待ち侘びるだけの動かざる者と、今こそ動く者とでは、必ずや終息後の未来を左右する事となるでしょう。この映画には明確な台本がありません。12人の役者がそれぞれの色を出し、監督の私がその12色の絵の具を使い、下書きをする事なく、一枚の絵を完成させるというものです。12人による映像という色を、如何に上手く混ぜ合わせ、“映画”という一枚の絵を完成させるのか、それは作品が完成するまで誰にも分かりませんが、既に綺麗な色の絵の具が揃い始めています。12人の役者が、この状況下で如何に自分の魅力ある色を表現するのか、是非ご期待下さい。

『2020年 東京。12人の役者たち』
近日公開
監督・製作・編集:松本動
出演:秋田ようこ 秋山大地 井之浦亮介 小⻄有也 杉谷玲奈 清水杏樹 田中栄 田村陸 みやたに 迎祐花 本山勇賢 和田悠佑

【ストーリー】 COVID-19がパンデミック化し、日本政府は2020年4月7日、東京都に緊急事態宣言を発効。東京で暮らす人々は、不要不急の外出自粛を余儀なくされ、当初一ヶ月の予定であった宣言も、終息の兆しが見えないコロナ禍により、5月4日に緊急事態宣言の延長が発表され、人々のストレスによる心身の状態は、いつ限界に達してもおかしくない状況となった。そんな中、“役者”として息衝く12人の者たちは、何を思い、何を感じ、何をしているのか、閉塞感が蔓延する2020年東京を舞台に、“12人の役者”たちによる独白劇が、今、幕を開ける。