NHKで放送されギャラクシー賞候補になるなど大きな反響を呼んだドキュメンタリーを、全長版として映画化する『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間』が、5月22日より公開されることが決定した。併せて、ポスタービジュアルがお披露目となった。
昨年11月に、本作を短縮版として再編集した「僕が性別“ゼロ”になった理由」がNHKで放映されると、ギャラクシー賞候補になるなど大きな反響を呼んだ。加えて、公開に先立って行われる自主上映会は全国で50回以上開催、3000人以上を動員。多くの観客から熱心な支持を受ける本作が、いよいよ劇場公開となる。
女性として生まれたが、自分の性に違和感を持ち続けていた小林空雅(たかまさ)さん。13歳のとき、心は男性/生物学的には女性である「性同一性障害」と診断され、17歳の時に出場した弁論大会では、700人もの観客を前に、男性として生きていくことを宣言。そして弱冠20歳で性別適合手術を受け、戸籍も男性に変えた。本作はそんな一人の若者の9年間の変化と成長を描いた“こころの居場所”についてのドキュメンタリー。
空雅さんは、78歳で性別適合手術を行い女性となった八代みゆきさん(95歳)、男と女に二分される性に違和を感じ、自ら「Xジェンダー(性別なし)」であることを明かして、性の多様性を伝える中島潤さん(26歳)らと出会っていく中で、改めて自身の性について見つめなおす。そして映画の最後では驚くべき判断を下す。LGBTQやジェンダー、同性婚の問題など、いま性についての関心が世界中で広がっている。本作は、性の違和に苦しみ、それでも自分らしく生きる人々の姿を通して、“性別”に限らず、誰もが生きやすい社会に近づくための気付きを与えてくれる。
監督を務めたのは、元NHKディレクターの常井美幸。2010年、常井は新聞記事で「心と体の性別が一致しない性同一性障害の子供たちは、男女別の生活を求められる学校で、さまざまな悩みや苦しみを抱えている」ことを知る。当時は、LGBTという言葉も普及していなかったころ。そんな子供たちを取材したいと考えていたとき、偶然知り合ったのが小林さんだった。まだ迷いと不安が見え隠れする15歳。男子生徒として多くの友人に恵まれた高校時代。身体を男性に近づけるための二つの手術。法的な手続きを経て正式に男性になるまで。そしてそれから…実に9年間にわたりカメラはその生活の一部始終を捉えていく。
■常井美幸(監督) コメント
「どうしたら自分らしさを失わずに、この社会で生きていけるのだろう?」私は常に自分自身に違和感をもちながら、自分の居場所を探してきました。人格の根幹である“性”が揺れている人たちを描くことで、その答えを見つけようとしたのかもしれません。登場人物たちはそれぞれ「自分とは何者か」「自分らしい生き方」を真剣に模索する人たち。“性別”という枠を超えた向こう側には、本当の自分がいることを見つけた人たち。彼らと出会うことで、私は自分の生き方を問い直し、新たな気づきをもらい、自分が目指す社会へのイメージを膨らませるきっかけをもらいました。このドキュメンタリーは“性別”をモチーフにしていますが、“性別”のことだけを描きたかったわけではありません。男と女だけではない、いろいろな形の性別があることを描くことで、カテゴリーの枠をはずれて自分らしく生きられる社会、ひとりひとりが互いの違いを超えて受け入れあえる社会。そういう自由な社会に少しでも近づけたらと思って制作しました。このたび劇場で公開されるにあたって、ひとりひとりが自分らしい生き方を問い直すきっかけになったらうれしいです。
『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間』
5月22日(金)より、アップリンク渋谷にてロードショー、以降全国順次公開
監督:常井美幸
出演:小林空雅 八代みゆき 中島潤
配給:Musubi Productions
【作品概要】 女性として生まれたが、自分の性に違和感を持ち続けていた小林空雅(たかまさ)さん。13歳のとき、心は男性/生物学的には女性である「性同一性障害」と診断され、17歳の時に出場した弁論大会では、700人もの観客を前に、男性として生きていくことを宣言。そして弱冠20歳で性別適合手術を受け、戸籍も男性に変えた。本作はそんな一人の若者の9年間の変化と成長を描いた“こころの居場所”についてのドキュメンタリー。
©2019 Miyuki Tokoi