日本を代表する3人の俳優、竹中直人、山田孝之、齊藤工が共同監督を務め、大橋裕之の短編漫画集を実写映画化する『ゾッキ』が、2021年に公開される。このほど、本作が2月24日にクランクアップを迎え、3監督より撮影を振り返るコメントが寄せられた。
撮影は原作者・大橋裕之の生まれ故郷である愛知県蒲郡市で2月4日にクランクイン。3監督は「海のまち」と呼ばれ、三河湾や山々の情緒ある風景が広がる、原作が生まれた蒲郡での撮影にこだわり全編オールロケを決めた。初日は竹中監督と齊藤監督が二人で演出するシーンからスタート。3監督にはそれぞれ担当のエピソードやキャラクターがあり、それらが繋がったり交差するシーンで、2人または3人で一緒に演出。3監督は互いを尊重し、アイデアを出し合ったり、本番のスタートを誰がかけるのかなどのやりとりをしながら進められた。
映画の初監督を務める山田監督は、二人の撮り方を見て、後半から始まる自身の担当シーンに備えていたが、撮影が始まると、初めてとは思えないほど落ち着いていた。3監督は俳優としての視点を生かしてキャストの立場に立ち、身体やメンタルのケアなど、演じやすい環境作りに努めた。それぞれ実演して演出する場面が見られたが、それ自体が見事で拍手が湧き上がった時もあった。
2月の撮影で寒い日が続いたが、天気にも恵まれ撮影は順調に進行。2月24日、ラストカットの撮影は、予定になかった齊藤監督が急遽駆けつけ、竹中監督、山田監督と3人一緒にスタートをかけた。そして21日間の撮影は無事にクランクアップ。齊藤監督自身が操作したドローン撮影や、原作・大橋裕之による美術協力など、見所の詰まった素材が集まった。これより編集作業に入る。キャストは秋頃の発表となるが、3監督は口を揃えて「理想の、最高のキャストが集まった」と語る。
蒲郡市では映画支援のため、蒲郡商工会議所を中心とした官民一体の実行委員会「映画『ゾッキ』蒲郡プロジェクト委員会」が組成され、3週間の撮影期間は映画スタッフに加わって、200人を超える実行委員によってロケ地支援、食事支援、ドライバー支援、警備支援、託児支援、プロモーション支援などが行われた。実行委員からは、スタッフ・キャストに支給するロケ弁当に、応援メッセージを添えるアイデアも出た。スーパーや学校・幼稚園など、市内の様々な施設で募った手書きのメッセージカードは3000枚も集まり、映画製作者と市民を繋げる大変大きなイベントとなった。蒲郡市全体を巻き込んだことで街は賑わい、観光客も増えた。今後も実行委員会のメンバーを追ったドキュメンタリー制作や、映画とコラボレーションした商品開発、エコ・チャリティー活動を取り入れるなど、新たな映画製作の取り組みにチャレンジし、公開に向けて盛り上げていくという。さらに蒲郡市の官民一体の取り組みは、フィルムコミッションやロケーリズムの観点で近隣の自治体から注目され、撮影に愛知県、岡崎市、豊橋市、豊川市、豊田市、東海市の視察が入った。映画をきっかけにした地域連携が模索されている。
■竹中直人(監督) コメント
全てのキャスティングが、山田孝之組も、齊藤工組も最高のキャストが集まったと思いますね。僕も本当に理想のキャストだった。役者を演出するのはとても楽しい仕事なんで、撮影が終わって、今すごい寂しいですよ。でもこれからどんな風に仕上がっていくのかという緊張があるので、これからが始まりです。蒲郡の皆さんには大変お世話になりました。本当に良い所ばっかりでしたね。ロケハンも順調だったし。1箇所許可が降りないってなった時にちょっと焦ったんですけど、撮影がなかった時に散歩したら素敵な場所が見つかって、近所の方々もとても協力的な方で、とても皆さん優しくて。蒲郡の天候にも恵まれて、寒いと言っても耐えられない寒さじゃなかった。どこに行ってもご飯が美味しかった。皆さんが作ってくれたお弁当も、とても美味しかった。毎日毎日手書きのメッセージを頂けたのは本当に素敵な時間で、あっという間でした。
■山田孝之(監督) コメント
大変なことはありましたが、本当に楽しかったですね。そして何より嬉しかった。このスタッフとチームで撮影が出来たことや、理想的なキャストが集まってくれて、目の前で芝居をしてくれているのが本当に嬉しかったです。特別な演出や見せ方はしていないですが、「お芝居をしていない風に見えること」が一番重要かなと思っていて、その人がその時を生きていて、その時感じた感情から言葉が出てくるようにしなければいけない。なので「相手の言葉を聞いて」というのはよく言っていたかも知れないですね。蒲郡での撮影は、本当に多くの人に助けてもらいました。そのおかげで、極限まで無駄なストレスなく、俳優さんたちに芝居をして頂くことが出来たと思います。地元の方の協力がなかったら出来なかったです。本当に感謝しかないです。大勢で動いていると頭で考えた通りにいかないことがほとんどですが、でも確実に今後の映画作りにおいて何かしら希望になる作品になるんじゃないかと、確信してますね。そうなったらいいな。
■齊藤工(監督)コメント
これまで映画を撮ってきた中で、原作が初めてだったり、このスタイルは初めてだったのですが、振り返ると不安はなかったですね。ロケハンに来る度にここ最高だなって。蒲郡の方々にどうしてもセットじゃ映らない生きた時間があって、街自体の歴史みたいなものが絶対に宿るだろうなって。ここに役者さん達が存在することで間違いなく実写ならではの、ゾッキの世界になるんだろうなって確証があって。撮影が始まっても、キャリアのある竹中さん、山田監督、僕も含めて状況を見てじゃあ一歩下がろうとか、ここはイニシアチブを自分が取ろうとか三者が三様で出来たと思います。その複雑性みたいなものをスタッフの皆さんがきちんと指揮をとって下さって、僕らにとってもやりやすかったし、最高だった。僕らに困惑を見せることなく伸び伸びと、それぞれのシーンを一緒に切り取って下さった。編集に入るのが楽しみです!本当に満足のいく撮影ができたなと思います。
■大橋裕之(原作) コメント
お弁当に付いてくるメッセージカードは、幼稚園の園児さんたちが書いてくれて、すごい嬉しいなと思ったんですけど、漫画の内容として、友達のお姉ちゃんのパンツを売ってもらったりとか、道すがら女の人のお尻を触ろうとしたりと、ちょっと大丈夫かな…?僕は大丈夫なんですけど…。でも本当に10何年前になんとなく描いた漫画が映画化して、取り上げて頂いてすごい嬉しいです。やり続けてきて良かったなと思います。映画のスタッフ様も、蒲郡の街の方も関わった皆様が喜んで下さってるのが本当に嬉しいです。まだまだ公開前、公開後も大変だと思うんですけど、宜しくお願いいたします。楽しみにしています。
『ゾッキ』
2021年 全国公開予定
監督:竹中直人 山田孝之 齊藤工
原作:大橋裕之「ゾッキ」
配給:イオンエンターテイメント