ウーマン村本大輔「沖縄で基地をネタに漫才をした。僕には“こんなことになってるんだぞ”と言いたい怒りがあった」

ジャーナリストの堀潤が5年の歳月をかけて追った、“分断”された世界を描くドキュメンタリー『わたしは分断を許さない』が、3月7日より公開される。このほど、公開に先駆けて2月25日に朝日新聞東京本社読者ホールにて完成披露試写会が行われ、堀潤監督と、恐れることなく政治風刺や時事ネタを取り上げる芸人ウーマンラッシュアワーの村本大輔が登壇した。堀監督は制作の途中にたびたび村本と意見交換をしていたという。

堀監督:タイトルについて、「ずいぶん思い切った、強いタイトルをつけたんだな」と驚かれます。それは、分断を許さない、という言葉よりむしろ、“わたしは”、と言っていることについてのようです。単に意見を言っているだけなんだけど、それが驚かれる世の中になってしまった。いつもはっきりと意見を発している村本さんはそのへんどうですか。

村本:そうですね、どうしても、“一般的には”、とかつけてやわらげちゃう、保険をかけちゃう言い方をするっていうことはあるでしょうね。…それにしても、どういう意図で堀さんはこの映画で取り上げてる世界のいろんなところに行ったの?

堀監督:それはその場所が「知ってほしい!」と訴えかけてくるんです。例えば“天井のない監獄”なんて呼ばれてるパレスチナのガザから、グーグル翻訳みたいなカタコトの文章で自分たちの窮状を知ってほしい、というメッセージが発信されている。それに対して日本人が知らないということが彼らを孤立させている。それをなんとかしたいんです。

村本:沖縄はこんな状況、福島は、入国管理局は、といろんなことがある。そこから堀さんが渡してくれたバトンが本作ですよね。僕は堀さんの話を聞いたりして沖縄で基地のことやおもいやり予算をネタにした漫才をやった。それがものすごいウケて拍手が鳴りやまなかった。それは嬉しかったけれど、僕にはこんなことになってるんだぞ、ということを言いたい怒りがあったんです。堀さんはどういう気持ちでこの映画をつくったの?怒ってるひと、悲しんでいるひと、そのどんな声を伝えたいの?

堀監督:わたしは常に悩んでます。ジレンマです。Aか、Bか、どちらが正しいそちらが間違っている、っていうことを強い言葉でやりあって非難しあうとそこに分断が起こる。そういう設問を立てる連中の思うツボです。どれも正しい、みんなが存在してる、その気持ちでつくっています。

村本:そうですね。あと数字じゃない。多数決というものについて人は逆に考えちゃってる。それは結果であってその多数だったということは正しいということではない。数字で拾えないものを大事にしなくちゃいけない。

堀監督:そういう効率だけを見ることは民主主義を捨てることですね。

村本:優しく、強くやっていきたいです。表現っていうのは堀さんみたいなジャーナリストとか、僕みたいな芸人だけのものじゃない。皆さんひとりひとりができることです。そういう機能とか能力は誰にでもある。この映画という材料から観てくれた皆さんが何を持ち帰るのか、楽しみです!

堀監督:この映画がつくれたのは各地のNGOの皆さんの協力のおかげです。その時々に訪れるだけのジャーナリストと違って、現地の人と何年も一心同体になって活動している方々の導きによって取材ができました。アフガニスタンで亡くなられた中村元さん、あの方のことや活動を亡くなってから知るのではなく、もっと早く知っていきたい。世界のいろんなことを。それが真の安全保障ではないでしょうか。この映画を今日皆さんに観ていただけたことと、制作中から相談していた村本さんと登壇して話せたことが嬉しい。本日はありがとうございました。

『わたしは分断を許さない』
3月7日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次公開
監督・撮影・編集・ナレーション:堀潤
脚本:きたむらけんじ
配給:太秦

【作品概要】 堀潤は「真実を見極めるためには、主語を小さくする必要がある」という。香港では“人権、自由、民主”を守る為に立ち上がった若者と出会い、ヨルダンの難民キャンプではシリアで拘束された父との再会を願い、いつか医者になり多くの命を救いたいと話す少女に出会う。美容師の深谷さんは福島の原発事故により、いまだに自宅へ戻ることが許されず、震災以来ハサミを握っていない。久保田さんは、震災後に息子と共に水戸から沖縄へ移住し、普天間から辺野古への新基地移設に対して反対運動を行う人々と出会った。彼女は「声をあげること」を通して、未来の為に“わたし”ができるのはなにかを見つけていく。国内外の様々な社会課題の現場で深まる“分断”。ジャーナリスト堀潤が、分断の真相に身を切る思いで迫っていく。

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