佐藤浩市「被災された方に観ていただくことは恐怖でもある」、渡辺謙「何か素晴らしいパワーを届けられるに違いない」

2011年3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原発事故で、最前線で戦い続けた者たちを描く、佐藤浩市主演、渡辺謙共演の映画『Fukushima 50』(読み:フクシマ フィフティ)が、3月6日より公開される。それに先立ち、1月26日に東京国際フォーラムにてワールドプレミア舞台挨拶が行われ、佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、平田満、萩原聖人、佐野史郎、安田成美、そして若松節朗監督が登壇した。舞台挨拶前のオープニングアクトでは、五嶋龍、長谷川陽子、NHK東京児童合唱団、東京フィルハーモニー交響楽団、そして本作の音楽を手掛けた岩代太郎の指揮による生演奏も披露された。

当選倍率が200倍越えの中で見事当選した1100人が会場を埋め尽くした本イベント。舞台挨拶を前にオープニングアクトとして、五嶋龍、長谷川陽子、NHK東京児童合唱団、東京フィルハーモニー交響楽団、岩代太郎が、本作のサウンドトラックより「Chapter All Life」、「Chapter Home Country Forevermore」、「Be with Danny Boy」の3曲を演奏。満員となった客席はNHK東京児童合唱団の優しく包み込むような歌声と五嶋龍、長谷川陽子、東京フィルハーモニー交響楽団が奏でる洗練された音によって魅了されていき、演奏が終了すると客席からは大きな拍手が沸き起こった。そしてオープニングアクトが終了し、キャスト陣と若松監督が登壇すると改めて大きな拍手が上がり、キャストそれぞれが観客に向けて感謝の想いを込めて挨拶した。

本作を披露するにあたっての心境を聞かれた佐藤は、「先日キャンペーンで福島を訪れて本作を上映しました。福島から始めなければいけないだろうと思っていましたし、福島の方々に作品を見ていただくことは非常に怖いことです。公共の電波で津波の映像が流れる前には『津波の映像が流れます』というテロップを流さなければ映像を流すことができません。暗い映画館の中でとても辛い映像を見なければならないので、被災された方や被災された方をご家族・友人に持つ方々、福島の方や宮城の方に見ていただくことは恐怖でもありますけど、それを乗り越えらなければいけないんです。エンディングまで作品を見た時に 必ずこの映画は記録としても記憶としても残るだろうと思います。それをまず福島に持って行きました。そして本日東京の皆さんに見ていただいて、これから全国に持って行きます」と本作に対する強い意気込みを吐露。続けて渡辺が「郡山で当時高校生の時に被災し、TV局のアナウンサーになった方のインタビューを受けました。『最初は体の震えが止まらなくなり、それでも最後まで見なければいけないと思っていても途中で心が折れそうになりました。電気が無く携帯もパソコンも見ることが出来ない中で色々なニュースが飛び交っていたけれどこの映画を見ることで、当時何が起きていたのかということがわかりました。ありがとうございます』という言葉をいただいた時はこの映画を届けていける自信をいただきました」とコメントすると、若松監督も「お二人に対して思うことは福島の方に寄り添ってお話しをしてくれているので映画が始まる前にお客さんが泣いているんです。福島の皆さんが映画を見終わった後に『このような映画を作ってくれてありがとうございました』と言ってくれたことがとても嬉しかったです」と先日行われた福島キャンペーンでの一幕を語った。

過酷な撮影中の雰囲気について、佐藤は「本作は時系列に沿って順撮りしているので、私含めた中央制御室のメンバーは色々と思いながら現場にいるんですけど、シーンを重ねていく内にみんな同じ境遇の中にいるという意識が強くなっていきました。結束感というものが普通の映画とは違うものでしたね」と述懐。そしてその中央制御室(中操)の一員として出演する吉岡も、「撮影が終わった後マスクを取るとみんな老けてましたね(笑)。(佐藤)浩市さんは『64-ロクヨン-』の撮影より疲れたと言っていましたし、本当にみんな必死でした」と撮影時のことを振り返った。そんな大変な撮影が続く中で、同じく中操メンバーの平田は「真っ暗の中、防具服を着て撮影をしていると誰が誰なのか分からなくなるんですけど、不思議と何日か経ってくると分かってくるんですよ。これがチームなんだなと思いました」とコメントし、荻原も「チームの結束力が高まったのはクランクイン前に浩市さんが決起集会を開いてくださったからだと思います。中操の皆はそのおかげで一つになりました」と役柄としてだけではなく主演としての佐藤の心意気に感謝を述べた。

続けて佐藤が「防護服を着て、マスクも被ってるんで台詞も明瞭には聞こえないんですけど、出来上がった映像を見てみると不明瞭でありながらもちゃんと意思が伝わるんだなと思いましたし、映画の神様はいるんだなと感じましたね」と中央制御室での撮影を振り返った。そして当時の総理大臣役を演じた佐野は「よく今回の役をお受けになりましたねと言われるんですけど、何でそんなことを言うのだろうと思いますね(笑)。今は情報が分かっているから当時何が起きていたかを語れるんですけど、当時は何の情報も分かっていない中でどう判断するべきか、あの時の総理は東京でじっとしていたらそれはそれで責められたでしょう。けれど現場を見てみなければ判断できないというのが正直なところだと思います」と今回のオファーを受けた際の気持ちを口にした。

緊急対策室(緊対)総務班のメンバーとして出演する安田は「なんとか役目を果たせたとは思います。本当に参加できて良かったと完成した作品を見て思いました。映像を通して伝える素晴らしさが感じられました。本当に見た方が良い作品というよりも絶対に見なければいけない作品だと思っております」と語り、同じく緊対の一員として出演する緒形も「映画を撮ってるとオンとオフがありますけどこの現場はオフがなくずっと突き進んでいるような現場でした。そんな中で渡辺謙さんを見て芝居をしていこうと決めていました」と緊対のリーダーでもある渡辺の背中を見て撮影をしていたことを明かした。それを受けて渡辺は「中操チームが先に撮影をしてその後に僕と浩市くんの回想シーンを撮って、緊対の撮影に入ったんです。僕のクランクインは浩市くんとの回想シーンからだったんですが彼らが必死の思いで撮った想いをそのまま渡されたような気がしました。この想いを落としてもいけない、そのまま緊対の中にぶつけていかなければならないと思いましたし、最後まで完走できたという思いです」と本作の出来栄えに自信をのぞかせた。

そして、MCより、キャスト・スタッフ陣が並々ならぬ想いを込めて作り上げた本作が、73の国と地域にて配給・上映されることが決定したことも発表された。

最後に、渡辺は「なぜ作品タイトルが英語表記なのか、福島県郡山から発信したものが東京に来てこれから全国に向かってそして世界に向かってこの映画を届けるために『Fukushima 50』というタイトルになったんだと思います。この映画を見ていただいたら何か素晴らしいパワーを届けられるに違いないと信じています」と挨拶をし、佐藤は「災害というものはいつも深い傷跡、爪痕を残すものです。その負の遺産を我々のほんの少しの努力で遺産として明日へそして未来へバトンとして渡すことができるはずです。この負の遺産を明日への遺産に変えられるよう皆さん願っていてください」と願いを込めて客席に向かって語りかけた。最後までキャスト・監督へ盛大な拍手が上がりながらイベントは幕を閉じた。

『Fukushima 50』
3月6日(金) 全国公開
監督:若松節朗
原作:門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」
脚本:前川洋一
音楽:岩代太郎
出演:佐藤浩市 渡辺謙 吉岡秀隆 緒形直人 火野正平 平田満 萩原聖人 堀部圭亮 小倉久寛 和田正人 石井正則 三浦誠己 堀井新太 金井勇太 増田修一朗 須田邦裕 邱太郎 池田努 皆川猿時 前川泰之 ダニエル・カール 小野了 金山一彦 天野義久 金田明夫 小市慢太郎 伊藤正之 阿南健治 中村ゆり 矢島健一 田口トモロヲ 篠井英介 ダンカン 泉谷しげる 津嘉山正種 段田安則 吉岡里帆 斎藤工 富田靖子 佐野史郎 安田成美
配給:松竹 KADOKAWA

【ストーリー】 2011年3月11日午後2時46分。マグニチュード9.0、最大深度7という日本の観測史上最大の東日本大震災が発生した。太平洋から到達した想定外の大津波は福島第一原発(イチエフ)を襲う。内部に残り戦い続けたのは地元出身の作業員たち。外部と遮断されたイチエフ内では制御不能となった原発の暴走を止めるため、いまだ人類が経験したことのない世界初となる作戦が準備されていた。それは人の手でやるしかない命がけの作業。同じころ、官邸内では東日本壊滅のシミュレーションが行われていた。福島第一原発を放棄した場合、被害範囲は東京を含む半径250km。避難対象人口は約5,000万人。それは東日本壊滅を意味していた。避難所に残した家族を想いながら、作業員たちは戦いへと突き進む…。

© 2020『Fukushima 50』製作委員会