2011年3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原発事故で、最前線で戦い続けた者たちを描く、佐藤浩市主演、渡辺謙共演の映画『Fukushima 50』(読み:フクシマ フィフティ)が、3月6日より公開される。それに先駆けて、1月22日に佐藤浩市、若松節朗監督、井上伸一郎・KADOKAWA代表取締役副社長が富岡町役場を表敬訪問、さらに1月23日に福島・郡山テアトルにて舞台挨拶が行われ、佐藤浩市、渡辺謙、若松節朗監督が登壇した。
■1月22日(水)富岡町役場表敬訪問
佐藤浩市、若松節朗監督、井上伸一郎副社長が富岡町役場に訪れ、宮本皓一町長に本作の完成を報告した。まずは代表して井上が「本日は映画『Fukushima 50』の完成を富岡町にご報告しに参りました。是非、町長にも早く本作を観ていただければと思います」と挨拶し、若松監督は「撮影前の取材も含めまして、富岡町の方々には本当にお世話になりました。是非、皆さまにも観ていただいて『この映画は世界に発信していくべき映画だ』と発信していっていただきたいと思っています」と感謝とともに力強く作品をアピール。そして佐藤は「(事故から)決して遠い過去ではなくて、ふと振り返ると昨日のことのように思い出される方もたくさんいらっしゃると思います。思い出されたくない方々もたくさんいるかと思いますが、この事故を風化させてはいけないためには、どうしても映像の力も必要であり、痛みを伴うけどこの事実を後世に伝えていくためにもこの映画は必要だと踏まえて観ていただけるとありがたいと思います」と静かに語った。
本作で富岡町の夜ノ森公園(※現在は帰還困難区域で立ち入りが禁止されている)での撮影も行ったことについて、若松監督は「劇中でも重要な“桜のシーン”の撮影をさせていただいたのですが、桜は美しいがこの桜を誰も見ることが出来ないと思うと非常に複雑でした」と吐露。佐藤も「(自身が演じた主人公・伊崎利夫)彼がどんな心境でこの桜を見ているのかという複雑な心をどこまで表現できたかはわかりませんが、桜の美しさと儚さ、この事故を絶対に繰り返してはいけないという想いが交錯して観る方々に届いてくれればいいなと思います」と想いを語った。
最後に宮本町長は富岡町での撮影について、「この映画を私たちが生き証人として後世に伝えていくために、撮影許可を出すというよりはこちらからお願いしたいという気持ちでいっぱいでした。今まで富岡町をロケーションとして撮影したことなど無かったと思うので、町としてもみんなに観て頂けるようにPRしていきたいと思います」とコメントした。
■1月23日(木)舞台挨拶
一般の方へ初お披露目となる本日は、「まずは、福島の方々に本作を観ていただきたい」という想いから実現。佐藤浩市、渡辺謙、若松節朗監督が登壇し、地元福島の方々へ本作への想いを語った。はじめに福島の観客を前に、佐藤は「やっとここまで来れたという想いでいっぱいです。決して、楽しんでくださいと言える作品では無いです。観るには苦しすぎるシーンもあるかと思いますが、どうか最後まで観ていってください」、渡辺は「今現在福島に帰れない方々、この事故で人生を変えられてしまった人がたくさんいます。その想いを僕らが全て背負うことはできないけど、その人たちの想いを少しでも汲み取ってこの映画にぶつけていきましょうと、作品がクランクインした際にお話させていただきました。そこから作品が完成しこの地を皮切りにここの作品を発信できることを僕は誇りに思っています。この作品は必ず未来に繋がる何かを感じていただけるんじゃないかなと思っています」、そして若松監督は「5年前からこの映画のプロジェクトが始動しまして、ようやく完成しました。それも福島からこの映画を発信できるということを誇りに思います。誠実にこの映画を作ったつもりです」と挨拶した。
続いて福島で舞台挨拶をすることについて、佐藤は「客席を見渡しただけでも、こみ上げるものがある方がたくさんいらっしゃる。本当にここからスタートして、日本全国を周りながらもう一度考え直し、未来に繋げるということをここからスタートさせていただきます。応援してやってください」と深々と頭を下げてコメント。そして渡辺は「正直申し上げますと、ちょっとドキドキしています。あの震災と事故を経験した多くの方々がいらっしゃるこの地でこうして試写会をするということで、果たしてどう受け止めていただけるかと不安もありました。でもこの作品の中には良い人間ドラマがあると思っています。私たちは一生懸命に撮ってきたつもりですので、深い映画だなと思っていただけるのではと思っています」と改めて作品について語った。そして若松監督は佐藤、渡辺について「この二人がいなかったらこの作品は作り上げることは出来なかったです。現場のスタッフはこの二人の背中をずっと見ながら撮影に臨んでいました。とてつもなく熱い芝居を繰り広げています」と二人のすごさについて観客へ語りかけた。
復興について、佐藤は「去年撮影をして、本当に復興は始まっているのかと思いました。この地の現状を他の方々はどれぐらい知っているのか。それをもう一度皆さんに感じてもらいたい。皆さんがこの作品を観てどう思われるかはわかりませんが、復興を始めるためには人間の力が必要でそれを進めていかなければならないことを各都道府県の方に伝えていきたいと思います」と訴え、渡辺は「復興というのは、それぞれ違う状況やバックグラウンドがあるので、一つの答えはないと思います。ただ、海も山も里も美味しい食べ物がたくさんある素敵な県が、もっと誇りを持って若い方たちが『福島出身なんだ!』と自信を持って言えるよう戻ってほしいなと思います」と切実に願った。
最後に、佐藤は「負の遺産を少しだけ形を変えた遺産に変えましょう」、渡辺は「僕の中で今まで福島を支えていくということが出来ていなかったと思います。ただ、一番自分ができる最大の仕事で福島の皆さまにお届けすることができたなと思っています。どうか受け取ってください」と挨拶し、会場からは盛大な拍手が上がりながら舞台挨拶は幕を閉じた。
『Fukushima 50』
3月6日(金) 全国公開
監督:若松節朗
原作:門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」
脚本:前川洋一
音楽:岩代太郎
出演:佐藤浩市 渡辺謙 吉岡秀隆 緒形直人 火野正平 平田満 萩原聖人 堀部圭亮 小倉久寛 和田正人 石井正則 三浦誠己 堀井新太 金井勇太 増田修一朗 須田邦裕 邱太郎 池田努 皆川猿時 前川泰之 ダニエル・カール 小野了 金山一彦 天野義久 金田明夫 小市慢太郎 伊藤正之 阿南健治 中村ゆり 矢島健一 田口トモロヲ 篠井英介 ダンカン 泉谷しげる 津嘉山正種 段田安則 吉岡里帆 斎藤工 富田靖子 佐野史郎 安田成美
配給:松竹 KADOKAWA
【ストーリー】 2011年3月11日午後2時46分。マグニチュード9.0、最大深度7という日本の観測史上最大の東日本大震災が発生した。太平洋から到達した想定外の大津波は福島第一原発(イチエフ)を襲う。内部に残り戦い続けたのは地元出身の作業員たち。外部と遮断されたイチエフ内では制御不能となった原発の暴走を止めるため、いまだ人類が経験したことのない世界初となる作戦が準備されていた。それは人の手でやるしかない命がけの作業。同じころ、官邸内では東日本壊滅のシミュレーションが行われていた。福島第一原発を放棄した場合、被害範囲は東京を含む半径250km。避難対象人口は約5,000万人。それは東日本壊滅を意味していた。避難所に残した家族を想いながら、作業員たちは戦いへと突き進む…。
© 2020『Fukushima 50』製作委員会