宮沢氷魚が映画初主演を務め、共演に藤原季節を迎えた、『愛がなんだ』の今泉力哉監督最新作『his』が、2020年1月24日より公開される。このほど、今泉監督、宮沢、藤原が撮影時のことを語り、宮沢演じる迅と藤原演じる渚が額を合わせる“おでこコツン”シーンの撮影秘話などが明かされた。
本作は『愛がなんだ』の今泉力哉監督が、初めて男性同士の恋愛を題材に、迅と渚の同性カップルが親権獲得や周りの人々への理解を求めて奮闘する姿を描く。
今泉監督は“おでこコツン”シーンについて、「この“おでこをくっつける”という動きは、もともと脚本にはありませんでした。私が撮影現場で思いつき、氷魚さんにはあえて何も伝えず、季節さんにだけ“静かに近づいていっておでこをくっつけてほしい”と伝えました。つまり、本番撮影時、氷魚さんは相手がどう動くか一切知らないまま演じていたので、季節さんが近づいてきたとき、もしかしたらキスされるのでは?と考えて演じることになる。そうした緊張感と心のざわめきを狙ったシーンになります。実際、カットをかけた後、氷魚さんに聞いたらキスされると思った、と話していました。狙い通りです(笑)」と語る。もちろん、この演出方法のため何度も撮り直すことはなく、少ないテイクでOKが出たとのこと。
今泉監督の演出について宮沢は「自由に演技させてもらった」と振り返る。「だから僕らも悩みましたが、監督が一番悩んでいたと思います」と宮沢が口にするには理由があり、今泉監督は明確なビジョンやゴールを指し示して導いていくという演出方法ではなく、「役者には常に現場でも不安でいてほしい」と一緒に出来る限り悩み、共に生み出していくスタイルを採用しているからだ。今泉監督は役者が演じることに慣れてしまうこと、役を掴んで理解し過ぎてしまうことを怖れていたと言う。
藤原も「人を好きになるっていう気持ちに答えはないんだなって、今泉さんと一緒に作品を作って思いました。答えがないところに向かうときは、めちゃくちゃ苦しいですが、そういう答えのないものを撮ろうとするのが“今泉映画”の真髄なんだなと思いました」と今泉監督の演出方法だからこそ、恋愛や本作でいう親子、家族といった人間関係の感情の機微をリアルに切り取れるのだと語る。
『his』
2020年1月24日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
監督:今泉力哉
企画・脚本:アサダアツシ
音楽:渡邊崇
出演:宮沢氷魚 藤原季節 松本若菜 松本穂香 外村紗玖良 中村久美 鈴木慶一 根岸季衣 堀部圭亮 戸田恵子
配給:ファントム・フィルム
【ストーリー】 井川迅(宮沢氷魚)は周囲にゲイだと知られることを恐れ、ひっそりと一人で田舎暮らしを送っていた。そこに、6歳の娘・空を連れて、元恋人の日比野渚(藤原季節)が突然現れる。「しばらくの間、居候させて欲しい」と言う渚に戸惑いを隠せない迅だったが、いつしか空も懐き、周囲の人々も3人を受け入れていく。そんな中、渚は妻・玲奈(松本若菜)との間で離婚と親権の協議をしていることを迅に打ち明ける。ある日、玲奈が空を東京に連れて戻してしまう。落ち込む渚に対して、迅は「渚と空ちゃんと3人で一緒に生きていたい」と気持ちを伝える。しかし、離婚調停が進んでいく中で、迅たちは、玲奈の弁護士や裁判から心ない言葉を浴びせられ、自分たちを取り巻く環境に改めて向き合うことになっていく…。
©2020 映画「his」製作委員会