オダギリジョー監督「最初、僕が主人公を演じる予定だった」、柄本明「監督に船頭という役で選んでもらえて光栄」

オダギリジョー長編初監督・オリジナル脚本作品で、主演に柄本明、共演に村上虹郎を迎え、一人の船頭を通して「本当に人間らしい生き方」を見つめる映画『ある船頭の話』が、9月13日より公開される。このほど、第76回ベネチア国際映画祭ベニス・デイズ部門に本作が正式出品され、現地時間9月5日に行われた公式上映会に、キャストの柄本明、村上虹郎、そしてオダギリジョー監督が出席した。

上映会場となるSala Perlaには多数のカメラが集結し、約500席のチケットも完売。過去4本の出演作がベネチア国際映画祭に出品され、今年は監督(本作)と、俳優(『サタデー・フィクション』)の2作品での参加となったオダギリ監督の人気の高さをうかがわせた。

公式上映前、日本人メディア向けに行われた会見で、本映画祭に招待されたことについて、オダギリ監督は「俳優として何度か参加した思い入れのある映画祭だったので、とても光栄です」とコメント。主演を務めた柄本は、「監督に船頭という役で選んでもらえて、ベネチアに来られたことを大変光栄に思います」とオダギリ監督への感謝とともに喜びを語った。また、ベニス・デイズ部門への出品についてオダギリ監督は、「長編初監督作品で選んでいただけるのは本当に幸せで、それ以上の言葉が見つからない」と作家性を重視する部門への出品に、喜びを噛みしめていた。

公式上映では、オダギリ監督、柄本、そして村上が参加し、エンドロールから約5分間の鳴りやまないスタンディングオベーションに応えた。上映後のQ&Aで、脚本段階での構想について聞かれたオダギリ監督は、「最初僕が船頭の主人公・トイチを演じるつもりで書いていて、突然現れる少女が大人に変わっていく過程を、親子のような仲で紡いでいくドラマをイメージしていたが、柄本さんにお願いすることになり、関係性を書き直した。結果的に、柄本さんがキャラクターにより深みを与えてくれて、素晴らしい高みに持っていってくれた」と自信を覗かせた。

続いて、諸行無常を表す英題『They Say Nothing Stays the Same』について、「“すべてのものは変わってしまう”というタイトルだが、船頭は何も変わらなかったのではないか?」という質問に対して、オダギリ監督は「船頭は(この先もずっと)舟に乗り続けるし、そのまま変わらないものも確かにある。そう受け取ってもらえた事は嬉しいし、そういう色んな見方をしてもらえる映画であってほしいと思っていたので有難いです」と映画に込めた思いを告白。

さらに、ワールドプレミアとなった公式上映について、オダギリ監督は「(上映の途中で)出ていってしまう人もいるのではないかと心配しましたが、あれだけ長い時間拍手をいただいて、皆さんに満足してもらえたように見えたので本当に嬉しかったです」、柄本は「疲れましたね(笑)。初めて試写で観た時とは感じ方が違いました。監督の志の高さをあらためて強く感じました」、村上は「僕もかなり体力と気力を奪われました。3回目の鑑賞ですが、3回とも違う映画を観ているような不思議な感覚。あと、イタリアの映画好きの方々が観終わった直後に感想を話し合っているのが印象的だった」とそれぞれ感想を口にした。

『ある船頭の話』
9月13日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開
監督・脚本:オダギリジョー
撮影監督:クリストファー・ドイル
衣装デザイン:ワダエミ
音楽:ティグラン・ハマシアン
出演:柄本明 川島鈴遥 村上虹郎 伊原剛志 浅野忠信 村上淳 蒼井優 笹野高史 草笛光子 細野晴臣 永瀬正敏 橋爪功
配給:キノフィルムズ/木下グループ

【ストーリー】 近代産業化とともに橋の建設が進む山あいの村。川岸の小屋に住み船頭を続けるトイチ(柄本明)は、村人たちが橋の完成を心待ちにする中、それでも黙々と渡し舟を漕ぐ日々を送っていた。そんな折、トイチの前に現れた一人の少女。何も語らず身寄りもない少女と一緒に暮らし始めたことで、トイチの人生は大きく狂い始める…。

© 2019「ある船頭の話」製作委員会