オダギリジョー、長編初監督作『ある船頭の話』がベネチア国際映画祭に正式出品され「身が引き締まります」

オダギリジョー長編初監督・オリジナル脚本作品で、主演に柄本明、共演に村上虹郎を迎え、一人の船頭を通して「本当に人間らしい生き方」を見つめる映画『ある船頭の話』が、9月13日より公開される。このほど、8月21日にスペースFS汐留にて完成披露試写会が行われ、オダギリジョー監督、キャストの柄本明、川島鈴遥、村上虹郎が登壇した。

本作のポスタービジュアルに合わせて、赤と黒の衣装で登場したキャストと監督。監督として登壇したオダギリ監督は「いつもより何倍も緊張しています」と挨拶し、「どういう反応が起こるのか心配でもあり、不安、期待、いろんな気持ちがあります」と今の心境を語った。

村と町を繋ぐ“渡し”を生業としている主人公・トイチを演じた柄本は、「夏の撮影の40日がとにかく過酷」だったそうで、「改めて本(台本)を読んだら、ほとんど全シーンに出ているんです。それで疲れたのか、とにかく暑いし逃げ場所がない。大変な撮影でした(笑)」と厳しい状況での撮影を振り返った。

オーディションで100名以上の中からトイチと出会う少女役に抜擢された川島は、共演した柄本は「後ろ姿が印象的」だったようで、「寂しさや悲しさが感じられて、改めて柄本さんはすごい方」とコメント。年齢が近い村上とは「私が人見知りなので話しかけてくれるんですけど、なかなかうまく返事ができなかった。あまり話が盛り上がらなくて…」と明かすと、村上が「俺の話がつまらない?!(笑)」とすかさずツッコみ、客席の笑いを誘っていた。

トイチを慕う村人・源三役を演じた村上は、柄本とは本作で3度目の共演となったが、「現場では過酷すぎて何かを喋った記憶がない」とのこと。村上は「孫のよう」だと言う柄本は「昔、(村上の実の父親の)村上淳の親父役をやったことがあるんですけど、だから、ちょうど孫(笑)」と特別な親しみを感じているようだった。

オダギリ監督は、今回のキャスティングは、「僕自身俳優をやっているから、同業者のなかでも好きな方と嫌いな方がいるんですけど、好きな人に声をかけた」という。また、撮影監督のクリストファー・ドイルについて、「日本の風景の切り取り方が独特で、僕らが気づかない日本の美しさをしっかりと収めてくれていると思う。日本なんだけど日本じゃないように感じるのも、その理由の一つはクリスの画なのかな」と映像の独特な色彩についても語った。

また、本作は8月28日に開幕する第76回ベネチア国際映画祭ベニス・デイズ(コンペティション)に正式出品される。オダギリ監督は「身が引き締まります。“俳優・オダギリジョー”のフィルターがない形で評価してもらえるのかなと思うとすごく嬉しい」とその想いを伝え、柄本も「日本がどう伝わるのか、大変楽しみです」と海外の反応に期待を寄せていた。

『ある船頭の話』
9月13日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開
監督・脚本:オダギリジョー
撮影監督:クリストファー・ドイル
衣装デザイン:ワダエミ
音楽:ティグラン・ハマシアン
出演:柄本明 川島鈴遥 村上虹郎 伊原剛志 浅野忠信 村上淳 蒼井優 笹野高史 草笛光子 細野晴臣 永瀬正敏 橋爪功
配給:キノフィルムズ/木下グループ

【ストーリー】 近代産業化とともに橋の建設が進む山あいの村。川岸の小屋に住み船頭を続けるトイチ(柄本明)は、村人たちが橋の完成を心待ちにする中、それでも黙々と渡し舟を漕ぐ日々を送っていた。そんな折、トイチの前に現れた一人の少女。何も語らず身寄りもない少女と一緒に暮らし始めたことで、トイチの人生は大きく狂い始める…。

© 2019「ある船頭の話」製作委員会