山崎まさよし、篠原哲雄監督、原作・横山秀夫がロケ地・群馬県3市長を表敬訪問『影踏み』

「64 ロクヨン」、「クライマーズ・ハイ」などで知られる作家・横山秀夫による犯罪ミステリーを、主演に山崎まさよしを迎え、『花戦さ』の篠原哲雄監督が映画化した『影踏み』が、11月より公開される。このほど、6月5日に山崎まさよし、篠原哲雄監督、原作の横山秀夫が本作のロケ地となる群馬県の前橋市・山本龍市長、伊勢崎市・五十嵐清隆市長、高崎市・富岡賢治市長を表敬訪問し、撮影の御礼を兼ねて本作の完成を報告した。

まずはじめに前橋市を訪問し、篠原監督は「前橋では弁天通り商店街や図書館、裁判所、刑務所等で撮影させていただきました。映画を始めてから毎年群馬に通っていて、ずっと繋がりがあるので、群馬は第二の故郷のようです」と挨拶。山本市長は「映画作りはパワーが要りますよね。でも、映画の中で見る自分たちの街はまた少し違って見えたりするので、とても楽しみです」と3人を労った。

ここで山崎が語ったのは横山作品の魅力。「横山作品は根底に“民”と“官”のせめぎあいを感じます。主人公の真壁は泥棒で、地べたを這いずり回っているような人間で。もちろん犯罪はだめなので自分との共通項を見出すのは難しいけれど、私はオーラが出ていないとよく言われるので(笑)、ちょうど良かったのかもしれません。足音をできるだけ立てないようにしました」と語り、横山作品の魅力を伝えた。

続いて、保育園や尾野真千子演じる久子の住むアパート、真壁が忍び込む家、川沿いの土手等、主要キャストが登場する印象的なシーンを多く撮影した伊勢崎市を訪問。五十嵐市長が「横山さん原作という日本を代表する映画が群馬から生まれて大変嬉しいです。伊勢崎が少しでもお手伝いできたのはとても名誉なことです」と喜びを口にすると、山崎は「撮影で使わせてもらった文房具屋の横にあった楽器屋でギターを購入し、そのギターを主題歌に使わせてもらいました!」と伊勢崎での思い出を披露した。

そして本作の魅力について、篠原監督は「山崎さんが忍び込む姿。尾野真千子さん演じる恋人との関係や、北村匠海さん演じる弟との関係。原作の設定を映画ならではの方法で活かしています」、山崎は「すべてがクライマックス。泥棒は犯罪者なので本当のヒーローではないけれど、“民”の立場からどんどん動くという役を演じ、とてもやりがいを感じました」、横山は「自分の作品が映像で表現されるとどうなるのか。はっと息を呑む場面も何度かありました」と3者3様の言葉でコメントした。

続いて、3人は高崎市へ。篠原監督は「冒頭の野良猫にえさをあげるシーンは柳川町あたりで撮影しました。山崎さんに本当に猫が寄ってきてドキュメンタリーのようなシーンになっています。風景もすごく良かったです」と挨拶。富岡市長は「高崎では毎年たくさん映画の撮影をしていますし、エキストラもすぐに集まり、協力体制が整っています。とても嬉しいことですし、高崎を映画の街にしたいですね」と語った。

横山はこの映画が誕生した経緯について、「伊参スタジオ映画祭でたまたま出会って始まった。これまで何度も自分の作品が映画化されていますが、今回のように自分の目の前で企画が動いているのを感じることができるのは初めて。『影踏み』は映像可不可能と言われていて、ここまで映画化されずに残っていた。もう一年くらい待ってくれたら山崎さんに一級建築士の役がやってもらえたのに(笑)」と自身の最新作「ノースフライト」を笑顔でアピールしつつ、「映画が完成して、今思うのは、想像以上に山崎さんが泥棒にはまっていて、真壁役は山崎さんしかいなかったと思う」と山崎の演技を絶賛。「家族のこと、世間と個人との関係性、地べたスレスレから物を見る視点…この映画は観る人によって引っかかるところが違います」と異色の犯罪ミステリーである本作の魅力をアピールした。

山崎は主人公の真壁役のオファーが来た時の感想を「自分にはもったいない話。自分は役者ではないけれど、求められるならやりたい、というスタンスでここまで来ました。“民”と“官”なら“民”の方が自分の目線のままで演じることができる。弁護士や医者を演じることは出来ないが、(この映画の中での)“民”代表の泥棒役の方が感情移入ができそうだなと思った」と語り、「泥棒役なので、今日も表から入るか、裏から入るか、とても悩みました(笑)」と会場を和ませた。

篠原監督は、本作での山崎さんの演技について、「『月とキャベツ』はミュージシャンとしての役どころだったが、今回は泥棒という滅多にない役。とても大変だったと思うけど、お互い葛藤しながらセリフにもひとつひとつ拘った。山崎さんが演じてくれたことで皆さんに親しみやすいキャラクターになったと思います」と山崎の苦労を労った。

山崎は主題歌を含め、本作の音楽も担当している。「自分の主演の作品で音楽を担当するのは非常に苦しい作業で、自分の演技を見ながら2、3回は挫けました。でも開き直るしかない。色々な挑戦をさせていただき、ストーリーに寄り添うような音楽が作れたと思います」と語り、「役者のスタートである『月とキャベツ』も群馬。群馬にはとても親近感があるので、是非この映画を盛り上げてください!」と各市で本作をアピールした。

『影踏み』
11月 全国ロードショー
監督:篠原哲雄
原作:横山秀夫「影踏み」(祥伝社文庫)
脚本:菅野友恵
音楽:山崎将義
出演:山崎まさよし 尾野真千子 北村匠海 鶴見辰吾 滝藤賢一 中村ゆり 中尾明慶 下條アトム 根岸季衣 大竹しのぶ
配給:東京テアトル

【ストーリー】 真壁修一(山崎まさよし)は“泥棒”を生業としていた。単なる「空き巣」ではなく、深夜に人の居る住宅に侵入し盗みを働く、通称「ノビ師」と言われる泥棒。寝静まった民家を狙い“現金”を盗み出す忍び込みのプロで、その中でも真壁修一は一線を画すスゴ腕。証拠も残さず決して口を割らない、その高く強固な壁を思わすしたたかさから、いつしか警察からは「ノビカベ」とあだ名された。ある夜、修一は侵入した稲村邸の寝室で、夫の寝ている側に火を放とうとする妻・葉子の姿を目撃する。咄嗟の行動で放火現場を止めに入ったが、その直後、修一をマークしていた幼馴染の刑事・吉川に逮捕される。2年後、刑期を終えた修一を迎えてくれたのは弟・啓二、そして恋人の久子だけ。ただ、修一の頭にはこの2年ずっと気がかりなことがあった。何故、あの日の侵入がバレていたのか?何故、自分だけが逮捕されたのか?そして、あの時夫を殺害しようとしていた妻・葉子の行方は?それらを解明するために、修一と啓二は探偵さながらの行動を開始する。だが、すでに稲村邸は売却され、その後の彼女に纏わる事件は何も起こっていなかった。しかし、どうしても稲村夫婦の行方が気になる修一は、2年前に自分を逮捕した刑事の吉川や、バッタ屋の大室に彼らの足取りを探っていく。しかし、数日後、吉川は溺死で発見され、捜査の手は修一らにも…。次第に事件と人間関係が明らかになるに連れて、20年前のある事件から止まっていた修一と啓二、そして久子の3人の運命の歯車も再び動き出す。

©2019 「影踏み」製作委員会