町田樹、伊藤みどり、魔夜峰央、佐野稔、松村充ら著名人より絶賛コメント!『氷上の王、ジョン・カリー』ポスタービジュアル

伝説の男子フィギュアスケート金メダリスト、ジョン・カリーの知られざる人生を描いたドキュメンタリー映画『氷上の王、ジョン・カリー』が、5月31日より公開される。このほど、本作のポスタービジュアルがお披露目となり、併せて、各界著名人より本作を絶賛するコメントが寄せられた。

アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリー。彼はバレエのメソッドを取り入れた演技で、1976年インスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルの金メダルを獲得する。しかし、マスコミが真っ先に伝えたのは、表に出るはずのなかった彼のセクシュアリティだった。同性愛が公的にも差別されていた時代に、ゲイであることが公表されたメダリストの存在は、世界中を驚かせ論争を巻き起こす。しかし、彼は華麗な滑りで多くの人を魅了し続け、現在の日本人スケーターにも影響を与えている。

本作は、アスリートとしてのカリーだけでなく、栄光の裏にあった深い孤独、自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、そして彼を蝕んでいく病魔AIDSとの闘いを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族や友人、スケート関係者へのインタビューで明らかにしていく。

著名人 絶賛コメント

■伊藤みどり(アルベールビル五輪フィギュアスケート銀メダリスト)
フィギュアスケートを新しい時代へと導くには、大変な努力と勇気、そして誰しもの心に永遠に残るようなインパクトが必要です。 ジョン・カリー氏はまさに芸術の領域を奥深く探り、フィギュアスケートの概念を変えるほどの演技を残して下さいました。彼なくして、今みなさんが心を震わせて鑑賞している美しいフィギュアスケートは存在しなかったことでしょう。スケートにおける芸術とは何なのかを考え直す機会になる作品です。

■町田樹(慶應義塾大学・法政大学非常勤講師)
ジョン・カリーは、ともすれば「男が華やかに踊るなんてみっともない」と揶揄されるような時代に、芸術としてのフィギュアスケートをその生涯をもって追求し続けた孤高のスケーターである。この映画では、貴重な映像資料や身近にいた者の生の証言によって、様々な困難に抗いながらもアーティストとして生き抜いたカリーの人生を、彼が紡いできた珠玉の作品群と共に色鮮やかに甦えらせていく。だが一方で、私はその華やかな舞台の裏で彼が一人抱えていた葛藤を目の当たりにした時、このスポーツを取り巻く諸問題が、未だ根本的に解決されていないことに愕然とするのである。私たちは、今もなお多くのスケーターがカリーと同じような芸術上の葛藤を抱えて氷上に立っていることを、決して忘れてはいけない。

■魔夜峰央(漫画家、『パタリロ!』『翔んで埼玉』原作者)
ドビュッシーの「牧神の午後」から始まる本作。フィギュアスケートは好きで拝見するのだが、音楽を技のきっかけにしか使用していないのでは?と思うことがしばしば。もちろん難度の高い技が決まり、着氷が成功することは素晴らしいのだが私が惹かれるのは、選曲し、振付、表現するまでの芸術性や統一感。演者の個性が花開くには必須と感じている。氷上の「牧神の午後」はニジンスキー、ロビンスにも匹敵な出来である。ジョン・カリーの舞は音楽性に溢れ、情緒的で曲の神髄を表しており、彼の踊ることへの愛と類まれな才能で私たちを魅了する。「牧神…」や「シェヘラザード」を踊る姿は氷上のヌレエフというよりニジンスキー。自らのカンパニーのダンサーに恋をされる姿はバランシンのようである。カンパニーへの当代一の芸術家を招くのはバレエ・リュスのようでもある。彼が居なければ今日のジョニー・ウィアー、羽生結弦の流れはなかったかもしれない。LGBTに広く認められ、エイズの認識も世に広まった現代に彼が生きていたらと残念でならない。

■佐藤信夫(日本フィギュア・スケーティング・インストラクター協会会長/インタビューより抜粋)
競技場の中で、あそこまで本格的に氷上でバレエを表現した人は、私の記憶にはいませんでした。ジョン・カリーは、男子のフリー・スケーティングを新しい世界に導きました。

■佐野稔(フィギュアスケート評論家)
1972年札幌オリンピック、ここで初めてジョン・カリーという選手を見た。長髪をなびかせて滑るその姿は衝撃的でその恰好良さは劇的だった。その後1976年まで同じ試合で戦ってきたが、彼のコンパルソリーは天下一品で常に僕の目標だった。これは彼の才能の根源を掘り下げた映画である。プロスケーターとして一緒に滑ることが出来なかったのを誠に残念に思った。

■松村充(KOSÉ新横浜スケートセンター専属インストラクター、1976年インスブルック五輪男子シングル日本代表)
フィギュアスケートに求め続ける自分の表現・想い・感覚・感情・愛などを、彷徨いながら追い続ける情熱と信念は、スポーツの世界観を超えた芸術のようだ。理想と現実のギャップに翻弄されながら苦しみ立ち向かう姿は、彼の人生そのもののように思える。一人の人生をかけた計り知れない時間と思いが作り出した表現は、現在のフィギュアスケートに大きな影響を与えるとともに、アーティスティック要素の基盤になり、重要な結果として評価され続けることだろう。この作品は、スケートの歴史を知るとともに、フィギュアスケートの本質を理解する上でも貴重な内容になっている。スケーターの評価とは、ジャンプやスピンのエレメンツだけではないコンポジションの重要性を感じることだろう。

■上野水香(バレエダンサー・東京バレエ団プリンシパル)
フィギュア金メダリストの彼が、芸術スポーツとしての価値を見出し、ついにはMETに氷を敷きつめ生オーケストラで氷上に舞う彼の芸術スケートを讃え沸きに沸く劇場。無理としか思えない領域へ堂々と進み、成功させるさまが格好いい。先駆者であるがための苦悩や、バレエの基礎が完璧であることが見た瞬間にわかる彼の美しいスケーティングも見どころ。

■柄本弾(バレエダンサー・東京バレエ団プリンシパル)
氷上と舞台、ステージや時代は違いますが同じ舞踊の表現者として彼の物語に引き込まれてしまいました。苦難を越えアイススケーティングを大きく変えた彼のセンスと努力、意地に拍手です!

■武田砂鉄(ライター)
私たちは、アスリートに対して、身勝手な物語をぶつける。その物語に勝手に落胆し、勝手に感動する。消費されていくなかで、選手の身体が痛み始める。銀盤の上に残された孤独を知るとき、これまで自分が向けてきた眼差しの危うさに気づく。

■杉山文野(フェンシング元女子日本代表、NPO法人 東京レインボープライド共同代表理事)
スポーツには様々な戦いがある。相手との戦い、自分との戦い、そして社会との戦い。ジョンの戦いは、スケートを超え、性別を超え、あらゆる壁を壊した。強い意志と感動は歴史をも変える。2020という大きな戦いで私たちは何に挑戦し、何を壊し、そして次世代に何を伝えるのか。ジョンの人生、この作品からの学びを大切にしたい。

■PELI(DJ、デザイナー)
スポーツ界において男性が美しく優雅に表現する事が評価されるという今の常識を作った彼は、当時はとんでもない異端児だっただろう。しかし人並み外れた才能と相反する、人と同じ様に愛を求める姿がとても魅力的に見えた。彼の言う“魂の悪魔”とは彼自身の孤独であり、そして美しさでもあると感じた作品。

『氷上の王、ジョン・カリー』
5月31日(金)より、新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
監督:ジェイムス・エルスキン
ナレーション:フレディ・フォックス
出演:ジョン・カリー ディック・バトン ロビン・カズンズ ジョニー・ウィアー イアン・ロレッロ
配給:アップリンク

【作品概要】 アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリーの、アスリートとしての姿だけでなく、栄光の裏にあった深い孤独、自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、そして彼を蝕んでいく病魔AIDSとの闘いを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族や友人、スケート関係者へのインタビューで明らかにしていく。

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