MC:ありがとうございます。そしてこの作品では、岩男は安田顕さんしかできないんじゃないかと観終わった後に思ったぐらいですが、安田顕さんはお話をお二人から受けて、今回主演の話が来た時は正直どういうふうに思われたんでしょうか?
安田:まず、本を読ませていただいて、すごいなと(笑)。本に心を打たれる部分がありまして、その後、原作を拝読しまして、なぜ私を誘ってもらえたのか、素朴な疑問の中、衣装合わせも前日に監督とお酒の席を設けさせていただき、監督の20年の熱い想いを伺い、よし!と。その想いを受ける重要なポジションをいただけたのかなぁと、ちゃんと自分をきっちりさらけ出して、想いを届けられるように頑張ろうと思った次第でございます。吉田監督のお言葉を聞いて、これが10年前とかに映画化にならなくてよかったなと。待っててもらえてよかったなと。10年前なら確実に自分はここにいないだろうなと。そしてその作品を観た時に衝撃を受けて、きっと岩男役の人間に嫉妬するだろうなと。吉田さんはもっと早くにその夢を実現したかったとは思いますけれども、今、これが吉田監督のもとで作られたことに心から感謝を申し上げます。自分が間に合ってよかったなと思っています。そして今日、新井さんにお会いした時に、「素晴らしかった」と言ってもらえた時に、ものすごくホッとする自分がおりました。そして、映画を拝見して、木野花さん、ナッツ・シトイさんの演技に改めて最敬礼、心の底から脱帽した次第でございます。長々と話してしまいましたけれども、そんな感じです…。
MC:ありがとうございます。そんな安田顕さんが絶賛されたヒロインのアイリーンを演じたナッツ・シトイさんは、オーディションでこの役を勝ち取ったんです。役が決まった時はどういう気持ちになられたんでしょうか?
ナッツ:とてもやりがいがあると思いました。私の国だけでなく他の多くの国でもそうですが、一般的に主題(結婚)に関して話そうとしない人が多いので、挑戦しがいがある役でした。
MC:ありがとうございます。そして、木野花さんは映画を観ていただくとわかると思うんですけれども、本当に精神的にも体力的にも大変だったと思うんですが、あの役をもらって脚本を読んだ時はどう思ったのでしょうか?
木野:原作を読ませていただいて、「これ、人間ができるのかな?」ってまず思いました(笑)。「人間でやるの?」って思って、しかもこの役が私。まず、似てないんですよ、造形が。安田さんも実は似てない、もっと獣のような大男だし。でも見え方っていうことよりは、中身のことかなって、安田さんがキャスティングされているのを知って。ということは、私の中に何かがあるからツルをキャスティングしてくれたんだと思って、その何かをあると信じて、とにかくぶつかっていこうというふうに思いました。でも、身体が壊れちゃうんじゃないかという恐れが…原作を読んだ印象があまりにも強くて。だからものすごく覚悟したし、ジムに通いました(笑)。どんなふうに飛ばされても壊れないようにしようとか、心も身体も覚悟しながら臨みました。
MC:すごくエネルギーに満ちているんですけど、監督、原作とキャラクターの外見は違う。ベストマッチングだと観ている側は感じるぐらいのキャスティングだったんですが、どういうふうにそこは決めていったんですか?
吉田:見た目を重視するよりも、観終わった後に、岩男だったのか、ツルだったのかということのほうが大事じゃないですか。それってやっぱりキャラクターの持っている…これから観るからあまり性格面とかは言いたくないけれども、そういう歪んだ部分であるとかその熱量であるとか、そういうものを二人はこのキャラクターを演じきるに違いないと見た、僕のこのキャスティング力といいますか、そこが光った作品でございます(笑)。
安田:つまり監督がおっしゃっているのは、我々二人は歪んでるって話ですよね(笑)。
(会場爆笑)
吉田:そうです!(笑)。ごめんなさい(笑)。たぶん観たら「あぁ…褒めてはないかも」って思うキャラクターではある…でも大好きな二人です。
MC:安田さん、どうでした?精神的にも大変じゃないですか?しかもフィリピンでも撮影をして、雪山の新潟でも撮影をされてということで、今回の現場での思い出はどんなことが蘇ってきますか?
安田:まず僕は、この映画における主演というものは3人だと思っています。私だけじゃなく、ナッツ・シトイさん、木野花さんが演じられた3人の主役がいると思っています。全編を通じてアイリーンというものが核にあり、僕はなんとなくリレーをしてくような気がしていました。バトンを渡していくような、そういう役割だったと思います。監督が言ってくれたのは、「とりあえず安田さん、夏終わったんで、冬は木野さんで!で、フィリピンはフィリピンで!」ってそんな感じのお話で(笑)。僕は夏ですね。この方(ナッツ)はフィリピン、夏、冬、全部。で、木野さんも夏もあるんですけれども、僕が渡したバトンは木野さんの冬にあたると思いました。そういった面持ちでいました。夏の撮影中は、木野花さんが言ったようにちょっと尋常じゃなかった気がします。一人でロケ現場に行ったんですけれども、同じスタッフさんであったり、同じキャストの方以外の方が見えた時に、日常に引き戻される自分が嫌で。マネージャーとかもたまにいらしてくださるんですけども、本当にありがたいんですけど、せっかく安田顕ならぬ“ゲス田顕”を演じているのに、安田顕に戻ってしまうような気がして、「ごめん!本当に来てくれてありがとう!本当にありがたいんだけれども、俺の視界から消えてくれ」って(笑)。それぐらい世界に同化しないと、吉田監督の熱量に応えられないんじゃないかっていう、そんな状態で過ごしていた気がします。
MC:たしかに観ると黒い何かに覆われているような、安田顕さんの姿じゃないですが、岩男が。木野花さんとナッツさんは、そんな安田さんと共演して、撮影現場はどんな印象をお持ちですか?
木野:なんか暗かったですよ(笑)。部屋で出番を待っている間、なんとなくボソボソしゃべるんですけれども、私は初めてだから、安田さん。「あー、こういう人なんだなー」って思って(笑)。
安田:すごく話しかけてくださる時に、「いやー、参ったねぇ!これ、参ったねぇ!」って共感をしてくださって、僕、全然そんなこと思わないんですけど、「あたしたちは不器用だからさ…」って(笑)。
(会場爆笑)