MC:ビノシュさん、岩田さんからお話もありましたが、お会いした時に印象はいかがでしたか?
ビノシュ:「この人、知っている。また会えたな」というような、そんな気持ちが最初からしましたよ。岩田さんは覚えていらっしゃらないかもしれませんが、私はあなたの涙をもっと深いところで知ってましたよ。私は日本に息子がいるなんて思ってもいなかったけど、なんか日本に息子がいるような気になっていました。
岩田:僕もフランスのお母さんだと思ってます(笑)。
河瀬:魂のレベルでね、つながるなんてすごいね。
MC:人と人を魂レベルでつなげていく、作品であると皆さんのお言葉を聞いて改めて思います。
(ここで、ビノシュの発言中に河瀬監督が通訳の方に耳打ちをしたため「ちょっと聞き取れない部分があったんですけど…」と通訳)
ビノシュ:…私語を慎むように言われていましたけど、視線を交わしながら一緒に時間をシェアしたなという気がしてます。
美波:私、(ビノシュのコメントが)聞こえたので代わりに言いますけど「世界とか国とかが離れていて、実際的なつながりはなくても、目と目があって、一瞬でパッとつながるものって実在している」ということをおっしゃってました。
ビノシュ:素晴らしい通訳さんです(笑)。
MC:劇中同様、素晴らしい通訳さんです(笑)。ありがとうございました。さあ、夏木さん。以前イベントの際に「もう一度会いたい人は」というお話でジュリエット・ビノシュさんをあげていましたが、今日またお会いすることができて、お気持ちはいかがでしょうか?
夏木:現場で私語が厳禁だったので、先ほど再会して初めて笑顔でご挨拶したんですけども、私は彼女が何年か前に、私の大好きなアクラム・カーンという人と出演していた「in-i(イン・アイ)」という舞台を拝見したんですけど、その時の彼女のメッセージで、「絵でも演技でも動くということから始まる」ということをおっしゃっていて。ジャンヌも吉野に動くところから、自分の気持を浄化できたという映画なので、「動く」ということを徹底的に話したいなと思ってます(笑)。よろしくお願いします(笑)。
ビノシュ:踊りも素晴らしかったですよね。
夏木:あ、私の?ありがとうございます(笑)。どうでしたか?(会場拍手)大丈夫でしたか?今回は岩ちゃんもいらっしゃるし、田中泯さんもいるし、森山未來さんもいるし、ダンサーがいっぱいいるので、監督から森で踊ってと言われた時に、時間がかかりましたけど、ありがとうございました。
河瀬:あの日は本当に神々しい光が朝から差していて、これは奇跡なんじゃないかと思うほどの光でした。その中で舞っていただいたアキというのは、本当に山の主なんじゃないかと。『Vision』の木の中から生まれ出て、そしてまたあの中に行くんだなと思いながらカメラを回していました。彼女の着ていた衣服が綿埃を発するんですね。それがまた逆光でブワッと舞って、まるで『Vision』のように、すごく美しいシーンだったと思います。私としては、本当に映画の歴史に残る素敵な美しさじゃないかなと思います。