MC:ありがとうございます。それでは、お話を伺って参ります。まずは山田監督にお伺いいたします。いよいよシリーズ第3弾ということになったわけですけれども、今回のタイトル、皆様も画面を見ていただきますと『妻よ薔薇のように』とあるんですよね。今回は「主婦への賛歌」をテーマに作られたと伺っておりますが、夏川さんが演じていらっしゃる史枝さんを軸にこの作品を作ろうと思われたきっかけ、製作にあたっての想いなどがあればお聞きかせください。
山田:それまでの『東京家族』を含めれば3作になりますが、『家族はつらいよ』シリーズ1、2を作りながら、どうもこの西村、夏川両夫婦の間に大きな問題があるなぁとだんだん思い始めましてね。これをなんとかしなきゃいけないだろうと、そのためにも第3作ができるのではないかと。「もし今度作るならば、夏川くん、今度は君が大変だよ」という話をしましたね(笑)。そんなことで結果として、主婦が抱えている悩み、それから日本の矛盾、今の社会における依然として女性差別が激しい…なぜかこの国はそうなんですよね、そういう問題を念頭に入れながら作ったわけです。
MC:夏川さんも頷いていらっしゃいましたが、後ほど女性の視点からのお話を伺って参ります。続きまして、キャストの皆様にお話を伺って参ります。夏川さんが演じられる史枝さんが主人公という感じの本作の軸になっているわけですけれども、一家にとって欠かせない存在である史枝さんが家出をすることで平田家が大変な騒動になるわけなんですが、台本を最初に読んだときはどんなことを思いましたか?
夏川:正直、そんなことになっているとは思いもせずに、「え?フラメンコ!?」とか「家出!?」とか(笑)、いろいろなワードがあって、嬉しいんだけれども、監督がおっしゃったように、これは大変なことになったというのが正直な感想です。
MC:大変なことが起きますからね、後でご覧になっていただきたいんですけれども。西村さんにもお伺いします。今回はその奥様の史枝さんとかなり激しくぶつかり合うシーンだとか、怒ったり泣いたりと感情が様々あったと思うんですけれども、撮影中大変だったこと、忘れられないシーンがあったら教えてください。
西村:幸之助は怒ってばっかりだよね。
MC:結構怒っていましたね。
西村:忘れられないシーンっていうのは、最後の史枝とのやり取り、その前の弟とのやり取り、そこがやはり僕の中ではすごく残っているシーンでございまして、他のシーンがそうじゃないというわけではないんですが、(妻夫木と蒼井に対して)本当にお二人に助けられて…。
MC:演じるということを考えますと、怒るというものは難しいことなんですか?普段皆さん、けんかしたりしたらすごい体力を使うじゃないですか。それをお芝居でするのはすごいなぁって思って、ずーっと怒っていらっしゃったから思いました。
西村:ほんとですよねぇ(笑)。大変だと思いますよ!よく彼は頑張ったと思いますよ!彼っていうか幸之助が!怒ってたなぁ!って思って(笑)。
MC:妻夫木さん、こういうときはこのままいってもよろしいでしょうか?(笑)。
妻夫木:無視して先に進めたほうが、みんなのために…(笑)。
MC:わかりました(笑)。お話を続けさせていただきます(笑)。ありがとうございます。続いて、橋爪さんと吉行さん、お二人にお伺いします。第1作目では、周造と富子の熟年離婚のお話だったんですけれども、今回は史枝と幸之助の夫婦のラブストーリーともいえる物語になりましたね。なんとなく第3弾があると、皆さん思われていたということですが、どんな内容なのか、事前に予想されたりとかなさっていたんでしょうか?橋爪さん、いかがでしょうか?
橋爪:1作目も2作目も、夏川くんの役が言いたいことも言えないし、じーっと我慢しているあの姿が、当然監督の中でもおありになったんでしょうし、これはいずれ爆発するんだろうなぁと僕も思っていましたし、1作、2作とも撮影終了後に夏川が…何て言うんでしょう、正直な演技をしていないというか、私はこんなんじゃないっていう不満な顔があったので…(笑)。
夏川:してないですよ!
橋爪:やっぱりこれは爆発させとかなきゃいけないって、新燃岳じゃないけど、監督の目線は確かだなぁって思いました。それで問題が起きるとしたら、幸之助と史枝以外ないんですよ!今のところは。長男も俺と似てひどいやつだし…(笑)。
山田:お宅の二人はいいの?
橋爪:我々ですか?我々はもういっぺんやりましたからね。でも、ずっと忘れてるんですよ。
山田:もう諦めてるんじゃないかなぁ、彼女は。今回は本格的にすれ違っていますよね。いろんな意味でね。
吉行:でも、3回目で、本当にとんでもない夫なんですけれども、今回「あ、やっぱりこの人っていい人だった」って思いました(笑)。やっぱり幸せだったんだなぁって。
山田:(笑)。
MC:橋爪さん、今のお話を聞いていかがですか?
橋爪:いや、周造ってとんでもないやつですよ!度し難いやつで、こんな人そばにいてほしくないって僕自身も思います。でも、あるインタビュアーに言われましたけど、「でも、どこかかわいいんですよね」って(笑)。へっへっへ、そうだろう!と(笑)。でも、お母さんが今回、またあることで私を引っかくんですけれども、今の結婚していらっしゃる中年以上の女性は誰しもが思う問題を、実にスラッと、私が立ち直れないぐらいの口調でスラッとおっしゃるんで、あれはすごいですよね(笑)。
吉行:私、随分勝手だなぁって改めて思いました(笑)。自分の人生をいかにマイペースで行っているか、それを受け止めてくれるあなたがどれほど大きい夫であったか、ご覧になったらわかる人もおりますので。
橋爪:ありがとうございます!
MC:ありがとうございます。今、妻夫木さんと蒼井さんが「一体どうしたんだろうね?」とざわざわしておりましたから、お二人はどうですか?吉行さんは、今日はいつもと違う感じですか?
妻夫木:そんな、お母さんがお父さんを褒めることなんて今までなかったので(笑)。
蒼井:あと、そんなに褒めるところ、あったっけ(笑)?
妻夫木:そうだよね(笑)。ないはずなんですけど(笑)。
MC:そのあたりもご覧になったときに確認していただきたいんですけれども(笑)。続いて、妻夫木さんと蒼井さんにお伺いします。1作目ではお二人は恋人同士で、2作目でついに結婚されて、お二人を見守っている『家族はつらいよ』ファンの皆さんもたくさんいらっしゃると思うんですけれども、今回の作品では、平田家の問題の中枢にお二人が踏み込んでいって解決に動こうとする姿が非常に印象的でした。演じられていて、どんな感じだったんでしょうか?妻夫木さん。
妻夫木:僕は特に、史枝さんが出て行ってから兄を説得する場面があったんですけれども、『東京家族』から含めて、長い時間、西村さんとずっと過ごさせていただいて、その時間っていうのが芝居として僕も庄太っていう役が染みついていたのかなぁという、その時間に助けられたなぁと思いましたね。あまり頭で深く考えることもなく、西村さんに、幸之助に対して感情をぶつけていけたというか、そういう感じでしたね。やっていて自分自身も本当に「頼むよ!」っていう気持ちになりましたね(笑)、兄貴に対して。
MC:蒼井さんはいかがですか?
蒼井:今回、私はそんなに核心にいくっていう感じではなかったんですけど、お嫁さん同士の絆だったりとか、シーンをやるごとに「私、本当に平田家のお嫁になったんだな」っていう実感を得ることができました。それはお嫁さん同士の雑談、会話のシーンだったり…やっぱり、前は結婚する前とかだったので、きちんとした、ちゃんとした女性だったんですけど、今回は平田家で第一ボタンを開けていたりとか、来てすぐに焼きそばを食べ始めたりとか、平田家に馴染んできている感じがやっていて楽しかったです。こういうのってシリーズものだからこそ味わえる感覚だと思うので楽しかったです。
MC:家族の中にどんどん入り込んでいっている感じが伺えたんじゃないかなと思います。続いて。林家さんに伺います。
正蔵:屋号ですか?(笑)。林家です(笑)。
MC:私もちょっと「林家さん」って思わず言ってしまいました(笑)。シリーズで毎回違う役で登場する笑福亭鶴瓶さんに加えて、今回は立川志らくさんも山田組初参加となりました。噺家さんが3人も出演する映画ってすごく珍しいと思うんですけれども、志らくさんとの共演はどうでしたか?
正蔵:台本をいただいて、衣装合わせの前に監督から「今回、志らくくんと絡むシーンがあるんだけれども、君は大丈夫か」って聞かれたんです。よく落語のまくらとか下駄でバッサバッサに私は志らくさんに切られていますので、どうしようかなと思ったんですが。でも、高座って一緒に上がることがないじゃないですか。山田監督のことが大好きですし、志らくさんって辛口なコメントを言うんですが、目がすごくかわいいんです。例えると、ペットショップで売れ残ったプードルみたいな、そんなかわいい目をしていて、それ以来、あんまり一緒に長くいることはできなかったんですが、噺家として志らくさんのことが大好きになりました。愛しています、今では。
MC:想いが変わったんですね。
正蔵:いや、気がついたっていうことです(笑)。ありがとうございました。林家でございました(笑)。
MC:ありがとうございます。正蔵さんでした(笑)。さて、この作品では「主婦への賛歌」ということがテーマになっているんですけれども、一家の家事を全て支えている史枝さんの姿がとっても大変そうだったんですね。女性陣の皆様、その点はどういうふうに見ていらっしゃるんでしょうか?吉行さん、いかがでしょうか?
吉行:2作目のときに、もし3作目があるとしたら「このままじゃ終われないな。史枝さんが何かやりだすに違いない。もう当然だ」と思いながら、ハラハラしていただいた台本を読みました。それで「よし!そうだろう!」と思ったんですけど、本当に大変だということがよくわかりますね、主婦の仕事が。私は経験がないものですから、大きいことは言えないんですけど(笑)。本当に頭が下がります。
MC:夏川さん、蒼井さんはいかがですか?
夏川:私たちも家事は自分のためにするんですけど(笑)、でも改めて、特に史枝さんですとスーパーマダムじゃないけど、私からしたら完璧です。朝ごはんを作って、それぞれのメニューは違うし、洗濯して何してって、結構スーパーな主婦ですけど、改めて大変だなぁって、お金に換算したら月にすごい給料をもらえるんじゃないかって思います。
MC:蒼井さんはいかがでしょうか?
蒼井:うちの母もこういうふうにしてくれていたんだなって、わかっているつもりでも、こうやって改めて客観的に見るのとは違うじゃないですか。本当にありがとうございましたって母に伝えたいです。