MC:李監督にとっては『怒り』以来6年ぶりということになります。監督ご自身はこの原作のどこに一番ぐっときたんでしょうか?
李:僕で時間を使うわけにいかないんで(笑)。美しい物語でした。本当にただ綺麗なだけじゃなくて、今を生きる僕たちが直面している社会の状況が鋭い視線で描かれていましたし、人と人の求める力というか、魂と魂の結びつきっていうんですかね。「名前が付けられない関係」って小説には書いてありましたけど、何かそういった定義を超えて純粋につながろうとする、そういったところがすごく美しい小説だなと。そして何より、広瀬すずの代表作を撮らねばと思っていました。
MC:広瀬さん、というお話がありましたけれども。李監督とは『怒り』以来2作目ということになりますが、前作で作品の中で「あまり応えられなかった」という話も以前されていたかなと思うんですけれども、今作についてはいかがでしたか?
広瀬:前回の応えられなかったというのも、ちょっと違くて、当時の私はあれが限界で、あれしかできなかったんです。全部は出し切ったという実感はあるんですけど、すごく毎日色々厳しいことも、でも味方でいてくださる監督と1本撮り終えたことで、映画作りってこういうものなんだと、演じるってってこういうものなんだと初めて知ったような現場だったんです。今回はそれから6年経って、自分も6年の中でいろんなものを経験して、価値観であったりとかお芝居の感覚であったりとか、いろんなものが私の中でもだいぶ変わってたんですけど、監督にお会いしたときに「ちょっとどうしたらいいか分からないです」って相談をすぐにしてしまって(笑)。
MC:監督からはどういったお答えが?
広瀬:「それじゃあこの映画はダメだね」って言われて(笑)、「そうですよね、頑張ります」って言いました(笑)。
MC:かなりでも時間をかけて準備もされてきたと思うんですけれども、どういった準備をされたのですか?
広瀬:役とかよりも流星くん演じる亮くんとの関係性を作るところから、たくさん時間を設けていただいて、文のことは自分の中に溜めて溜めて、違うところで全部亮君に捧げるような毎日でした。
MC:松坂さんは文を演じられましたけれども、お声が掛かった時、また作品をご覧になってどんな感想をお持ちになりました?
松坂:最初はまだ正式なオファーというよりかは、「一度お会いしてお話しましょう」っていう所からスタートして、そこから監督とお話をさせて頂いた後に、正式にオファーを頂いて、佐伯文役を演じさせていただきました。文は僕史上、一番難しくて、掘っても掘っても答えが見つからないというか、ずーっと霧の中でもがいているような感じといいますか。ずっと彷徨っているような感じだったんですけれども、李さんも一緒にそこを彷徨ってくれて、寄り添ってくれるとか、そういうことではなくて、監督は一緒にその役になってくれるというか。それを一番すごく感じたのが、更紗と文の終盤のシーンで何度もリハーサルを重ねて、後日また同じところのリハーサルをやる時に、監督が「俺も一回、ホテルに帰ってやってみたんだよ」っていうことをおっしゃってくれて、なんかそれがすごく嬉しかったんですよね。寄り添うというよりかは、その役として同じ熱量というか、向き合い方というか、その角度で一緒になって挑んでくれるっていうのが、今まで味わったことが無かったので、僕にとってはすごく救われたというか、すごい嬉しい瞬間だでした。
李:その姿は、とても見れたもんじゃないんですけどね(笑)。僕は演じることができませんけど、なにか見つかればいいなって思って、「やってみるか」っていう。やってみたら何か見つかるかもしれないっていうだけですけどね。
MC:松坂さんは、文のためにどういった役作りをされてきたんですか?
松坂:監督と話をさせていただいて、文のシルエットだったりとか内面を掘り下げていくにあたって、李監督は提案してくださったんですけど、実際に文がその当時住んでいたアパートで寝泊まりしてみるっていうことを提案してくれたり、実際にそこで寝泊まりしてみたり、自分の中で日記も書いてみたりとか、コーヒーをひたすら入れ続けたりとか、現段階で考えつくことをとりあえず手当たり次第やってみようっていうことで、ずっと模索している感じでしたね。