堀江:現実の佐和子は割と感情を抑え込んであまり表に出さないタイプのキャラクターなんですけど、漫画の中では佐和子が夫の俊夫が見たことがないぐらい笑顔であったり、感情が表に出ている人だと、より俊夫が嫉妬して、それが恐怖であり笑いになるだろうなっていうところで、黒木さんに繊細に二面性のあるキャラクターを演じていただきました。
MC:柄本さんは、奈緒さんが役じてる千佳という編集者と不倫をしていて、その不倫の内容を妻に書かれている。そのマンガ原稿を読んでしまうという、大変シリアスでありながら、笑ってしまう滑稽だなぁと思ってしまうようなシーンが多かったんですけれども、俊夫についてはどんな人物だと感じていらっしゃいましたか?
柄本:監督とも撮影前に話したことなんですけど、とにかく100、俊夫が悪いと。この物語の中において、とにかく俺が招いたことで、この結果になるということもしょうがないと。だけど単純に不倫して、映画を観終わった後に観客の人が「俊夫がやっぱ悪い奴だね。こんな結果になってしょうがないよね」じゃなくて、監督が「そういう悪い人じゃなくて、逆に親しみのある人間的なところに触れたらいいね」っていう、「こんな奴じゃしょうがないよなぁみたいな、頑張れよ」みたいな、そういったところに監督が俊夫さんを持っていきたいというふうなことで、やっている時はそこまで意識してたわけじゃないですけど、今思うと俊夫さんていうのは明らかに不倫に向いてないんですね。バカ正直なんで。もののはずみでそんなことになってしまって。だから馬鹿正直な男風に演じれば監督のおっしゃる俊夫像に近づけるのかなみたいなことを思いながらやっていたのかもしれないですね。
MC:漫画原稿を読んで脂汗をダラダラ流している俊夫さんを、黒木さんはどんなふうにご覧になったんですか?
黒木:私は結構チャーミングだなと思っちゃいましたけどね。本当に不倫が向いてないじゃないですか。右往左往している姿がかわいらしいと言いますか、憎めないですね(笑)。
柄本:俊夫さんを分かりやすく語る上でのエピソードなんですけど、最後のほうで僕が佐和子といよいよ向き合おうってと言って、2階に駆け上がって行くところがあるんですけど、その時にオクラをたまたま持ってたんですよ。普通、その状況下で絶対にオクラを食べちゃいけないんですよ。でもね、俊夫って食べちゃう男なんですよ。そんな状況下でもオクラを食べちゃうような奴だから、不倫もしちゃうんだぞみたいな、そういう男になってますかね(笑)。
MC:ありがとうございます(笑)。黒木さんと柄本さんは、完成した映画をご覧になって、どんなご感想をお持ちになったでしょうか?
黒木:面白かったですよね。
柄本:とっても面白かったってのと、これはとても良い意味で、台本の中で漫画と現実がすり替わったりするのが、かなり緻密に書かれてるんですけど、どうなるんだろうなぁと思いながらも、原稿通りのアングルで撮ったりとか、流れが非常にスムーズだったんです。監督、目立たないんですよ、現場で。監督はどこへ行った?みたいな感じなんです。これ良い意味でというか、この柔らかさなんですけど出来上がりを見たときは“策士だな”っていう感じで、確信犯じゃないけど、そんな感じを受けました。
MC:監督は遠くでご覧になっていたんですか?
堀江:結構近くにいるんですけど、静かにしているからかもしれないですね(笑)。
黒木:カメラの側にいて、私たちの芝居を近くで見てニコニコしてくださっていた印象ですね(笑)。
MC:ありがとうございます(笑)。柄本さんが本作をご覧になって、この映画をギュッとコンパクトにまとめた大変魅力的なワードがあると。プロモーションにもこの言葉使われていて、映画のキャッチコピーにもなってしまったんですけれども(笑)。
柄本:“爽快快活健康的不倫ムービー”ということを謳わせていただいたら、ピッタリだということで、いろんなところで使っていただいてるんですけど(笑)。不倫を題材にして、ここまで気持ちの良い作品っていうのはあまりないと思いますし、黒木さんがとある決断をしたときに突き進んで行く女性の強さみたいなものも恐らくこの作品の中にはあって、その爽快さもあったりすると思うんですけど、ドロドロする要素はたくさんある気がするんですよ。でもそこを突き詰めずに、別のこっちでいくっていう偏らない王道な方向で監督がやっていきたいというふうなことがあったんじゃないかなとは思います。
MC:そして金子さん。佐和子が描く漫画のもう一つのストーリーに教習所の先生との淡い恋というのがありまして、そこに登場されるのが教官役の金子さんということになるんですけれども、普段、佐和子が夫には見せない表情を見せてくれるという。この恋はどうなるんだろうとドキドキしながら見守っていたんですが、2人での車内のシーンが多かったですよね、どんな風に撮影は進んでいったんですか?
金子:教習所の先生の役なので、ガチガチになった佐和子を優しくリードする役なんですけど、実際は逆で、ガチガチになった僕に、優しく声をかけてくれる黒木さんがいて、先生と呼びたくなるぐらい(笑)。もっとリードできたらなあってちょっと思いましたね(笑)。すごい緊張してた僕を、ほぐすような優しい雰囲気を作ってくださいました。
MC:金子さんはガチガチだったんですか?
黒木:いや、そんなイメージはなかったんですけど、そうだったんですかね?
金子:このコメントすら、優しいなあっていう(笑)。
黒木:いやいや全然ですよ(笑)。
MC:リードしていただいていると、どういう時に感じたんですか?
金子:黒木さんと車の中で二人きりになるので、ちょっと緊張してたんですけど、気さくに話しかけてくださったり、ほぐしてくれて、「ああ、優しいなぁ」って、さっきも言いましたけど(笑)。
MC:金子さんは本作をご覧になってどんな感想をお持ちになりました?
金子:不倫を題材にしている作品なのにドロドロしていないというか、本当にポップで、どの層にも見やすく、そして本当に爽快で面白い作品になって楽しめると思います。