【全文掲載】若葉竜也「1年延期して良かった。図らずも、朝ドラに出させていただいて…」、今泉力哉監督「朝ドラに出たことで劇中のネタが1個潰れた」

MC:萩原さんには、いかがですか?

萩原:私もそのシーンがすごい好きなんですけど、好きなのと同時に一生か敵わない悔しさみたいなのがすごかったです。絶対やれないから、あんなこと。「負けた…、悔しい…」と思いましたね(笑)。

MC:嫉妬されてます、中田さん。

中田:でも、私ももう一回やれと言われてもできないっていうか。あの時期の私だったから、相手が若葉さんだったからできたシーンだなと思います。

MC:中田さんが好きなシーンはどこですか?

中田:朝、バーのマスターと(穂志演じる)雪さんと、私と(若葉演じる)青と集合して、自転車が来て雪が自転車を奪っていくのに坂道で登れないっていうシーンがすごい好きで(笑)。私から見ると雪さんってずっと怖いというか、可愛らしい一面が見えなかったんですけど、登れないところでようやく雪のかわいらしさが見えて、すごい好きです。

今泉:脚本にあったわけじゃなく、実際に坂で登れない様は現場で起きたんで。普通だったら追いつかれるとかリアリティをとっちゃうかもしれないけど、登れないほうが面白いよねって、そのまま採用になっていきました。

MC:なるほど(笑)、ありがとうございます。では、最後に監督と若葉さんに一言ずつ締めのご挨拶をいただきたいと思います。まずは監督からよろしいですか。

今泉:最初も言いましたけどご来場ありがとうございます。まだまだコロナの感染が関西も増えていったり東京も増えてたり気をつけつつではあるんですけど、こうやって満席の劇場で上映できてすごくうれしいです。なんというか中の世界と今見える世界が、ちょっと変わってきちゃってる部分がすごくあるんですけど、戻ってくると信じている部分もあるし、あとライブハウスでライブを観たりとか、今どんどん戻ってきているので、気をつけながらでも映画だけじゃなくていろんな文化に触れてもらえたらすごく意味があるなと思うのと、ライブとか、人と飲んだりといろいろな接触ごとがすごく尊いものになっちゃっているのは、実はこの映画が求めたことではなくて、勝手にちょっと高尚な映画になっちゃってるんですけど、娯楽とかを気楽に観てもらえるつもりで作ってた部分もあるので、本当に早く戻ってきてほしいのもあります。この映画に限らず、それこそ出口にも貼ってある若葉さんも出ている『くれなずめ』などのいろいろな映画とかをきっっかけに。あと、自分は不安視してたんです、1年延期したことが。この映画を観たら気に入ってもらって若いキャストさんたちの次の仕事が決まったりするぐらい自信がある作品だったので。だから1年延びるの嫌だなと思っなんですけど、それどころか1年間の間にそれぞれがすごく活躍してくださって(笑)、この映画にお客さんを連れてきてくれるっていう状況になっていることを、すごく喜ばしく思っています。また自分も皆さんとご一緒したいと思ってますし、また面白い映画を届けられればと思います。あと、SNSとかで感想を書いてくれるのもうれしいんですけど、直接、口から口に伝わる感想というのが一番広がると思っていますので、ぜひ周りの人に感想を伝えて頂ければと思います。本日はご来場ありがとうございました。

MC:ありがとうございます。若葉さん、お願いします。

若葉:コロナというものが世界を変えてしまって、それと同時に娯楽とか映画のあり方っていうのを考えざるを得ない状況になっていって、僕自身。今までは余裕がある中で楽しむものだったものが、余裕がない人たちだらけになっていて、余裕を作るための娯楽に帰っていかなきゃいけないと切実に思っていて。だから日常生活が嫌になったとか、もうほんと辛いことばっかで嫌だよという時に、最後に逃げ込める場所が映画館になったら嬉しいなと、本当に切実に思っています。そしたらきっとこの映画は、明日だけ頑張ろうかなと思えるお守りみたいな映画になっていると思うので、この映画を観に来てください。宜しくお願いしますございます。

『街の上で』
4月9日(金)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
監督・脚本:今泉力哉
脚本:大橋裕之
音楽:入江陽
主題歌:ラッキーオールドサン「街の人」
出演:若葉竜也 穂志もえか 古川琴音 萩原みのり 中田青渚 村上由規乃 遠藤雄斗 上のしおり カレン 柴崎佳佑 マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN) 左近洋一郎(ルノアール兄弟) 小竹原晋 廣瀬祐樹 芹澤興人 春原愛良 未羽 前原瑞樹 タカハシシンノスケ 倉悠貴 岡田和也 中尾有伽 五頭岳夫 渡辺紘文 成田凌
配給:「街の上で」フィルムパートナーズ

【ストーリー】 下北沢の古着屋で働いている荒川青(若葉竜也)。青は基本的にひとりで行動している。たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったり。口数が多くもなく、少なくもなく。ただ生活圏は異常に狭いし、行動範囲も下北沢を出ない。事足りてしまうから。そんな青の日常生活に、ふと訪れる「自主映画への出演依頼」という非日常、また、いざ出演することになるまでの流れと、出てみたものの、それで何が変わったのかわからない数日間、またその過程で青が出会う女性たちを描いた物語。

©「街の上で」フィルムパートナーズ