【全文掲載】綾野剛、RADWIMPS 野田洋次郎プロデュースの主題歌に救われる「立ち上がるきっかけをもらえた気がした」

MC:ありがとうございました(笑)。すいません、次がラストの質問になります!ではそちらの方で。

観客:本日で2回観させていただきまして、ラストで浩一さんが松明を持って歩いていくじゃないですか。背中に鎌があるのを一回目は知らなかったんですね。すごく善次郎の恨む気持ちというが鎌で印象付けられた感じがして、私はこの作品を観て、浩一さんのどんどん壊れていく姿が印象に残って、最近では瀬々さんの作品でもいい人を演じていることが多いので、ものすごく観ていて引き込まれたというか。浩一さんの憎悪の深い思いに魅了されたので、またいつかやってほしいですが、浩一さんの今回の役作りというか、どんどん壊れていく雰囲気をどうやって作られたかを教えていただければと思います。すごく良かったです。

綾野:浩一さん、ほぼ自然体ですよね?

佐藤:実は普段から鎌を持って、松明持って現場に行ってるんで(笑)。

綾野:素でやってますもんね。本領発揮といいますか(笑)。ごめんなさい、しゃべってください(笑)。

佐藤:まあ、現実的に人を殺すシーンはないじゃないですか? 監督自身も、そこは撮るつもりはなかった。その中で、見せる画の様として象徴的に撮ったカットだと思うんですけど、そうですよね監督?

瀬々:……そうですね(笑)。

綾野:起きてます(笑)?

瀬々:起きてますよ(笑)。

綾野:良かったです(笑)。

佐藤:(笑)。だから、人それぞれの沸点をどこに持っていこうかなと。豪士の沸点、善次郎の沸点、何をもって人というのは壊れるんだろうとか、その基準を監督とよく話してましたね。それが僕の中で言うと亡き妻の骨の場所を荒らされるというところに持っていったんですけどね。なかなか分かりづらいかもしれませんがね。んー、あと監督が説明してください。

瀬々:狂気というよりは、だんだんとピュアになっていくというか。亡くなった奥さんにだんだんと近づいていくようなイメージだったんですよね。そこへ行くことで、おかしくなるというより純化されていって、最後は無になるようなイメージだったんですよね。

佐藤:行動原理としては説明しにくいものなんですよ。なんでそうしたんだろうって。でもたぶん、ほとんどの人が分らないでそうしていることが今、現実問題いろいろなところであるわけじゃないですか。なんかたぶんそんなことだと思います。

MC:ありがとうございました。上映後にしか聞けない質問をありがとうございました。あっという間にお時間になってしましたので、最後に綾野剛さんからメッセージをお願いします。

綾野:改めまして、本日はありがとうございます。先程、浩一さんが沸点の話をされていましたが、僕と浩一さんは死に対する沸点、そして怒りに対する沸点や、憤りに対する沸点などを映画の中で生きてまいりました。しかし、今たくさん世の中には悲惨な事件や、大変なことがたくさんあります。IターンやUターンを含めて、地方も中央も改めて見つめ直さなきゃいけないと思いますし、力を併せていかないと本当に心から思っております。その中で、杉咲さん演じた紡と虹郎が生きた広呂くん、彼らは生きるということに沸点を、最終的につかみ取ったんだと僕は思うんです。そこにしか、やはり希望はないと思っています。この映画は『楽園』というタイトルですが、その奥底に裏テーマとしてあるのは、彼らの中にきちんと希望が見えたということが、僕らにとっても救いになったんです。みなさんのなかで、希望に向かって生きる沸点を懸命に探している人がいたら、抱きしめてあげてください。僕もそのように努めていきたいとこの作品から教わりました。今日は短い時間ですがありがとうございます。そして、くれぐれも気をつけて帰ってください。家に帰るまでが映画です。では(笑)。

『楽園』
10月18日(金)全国公開
監督・脚本:瀬々敬久
原作:吉田修一「犯罪小説集」
主題歌:上白石萌音「一縷」 作詞・作曲・プロデュース:野田洋次郎
出演:綾野剛 杉咲花 村上虹郎 片岡礼子 黒沢あすか 石橋静河 根岸季衣 柄本明 佐藤浩市
配給:KADOKAWA

【ストーリー】 あるY字路で起こった少女失踪事件。未解決のまま、家族や周辺住民に深い影を落とし、直前まで一緒にいた少女の親友・紡(杉咲花)は罪悪感を抱えたまま成長する。12年後、またそこで少女が姿を消し、町営住宅で暮らす青年・中村豪士(綾野剛)が容疑者として疑われた。互いの不遇に共感しあっていた豪士を犯人とは信じ難い紡だったが、住民の疑念が一気に暴発し、追い詰められた豪士は街へと逃れ、思いもよらぬ自体に発展する。その惨事を目撃していた田中善次郎(佐藤浩市)は、Y字路に続く集落で、亡き妻を想いながら、愛犬・レオと暮らしていた。しかし、養蜂での村おこしの計画がこじれ、村人から拒絶され孤立を深めていく。次第に正気は失われ、想像もつかなかった事件が巻き起こる。Y字路から起こった二つの事件、そして3人の運命の結末は…?

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