【全文掲載】綾野剛、念願だった杉咲花との共演に「良い経験、またすぐ共演したい」

MC:いい人ですね(笑)。佐藤浩市さんは、今回、片岡礼子さんとご一緒しましたけれども、なにかエピソードはございますか?

佐藤:後半、2人でずっと露天風呂のシーンがありまして(笑)。全部見えちゃうんで、お湯を乳白色にして7時間ぐらい入ってました。

綾野:あれ、7時間もやってたんですか?

佐藤:やってましたね(笑)。笑ってますけど、すごい切ないシーンなんですよ(笑)。

MC:7時間も入るって相当ですね。

片岡:そうですね。スタッフさんで倒れる方もいらっしゃいました。途中から、肘から上と膝から上をお湯から出せば呼吸ができるという技を編み出しまして(笑)。それで滞りなく撮影ができました。

瀬々:滞りなくです。はい(笑)。

MC:片岡さんはなにか佐藤さんとご一緒していて、素敵エピソードとかはございましたか?

佐藤:すいません、綾野のようなエピソードはございません(笑)。申し訳ないです。

片岡:非常に個人的なエピソードで申し訳ないんですけど、20年前にある映画の授賞式で一緒に司会をさせていただくチャンスがありまして、そのとき私は体調があまり良い状態じゃなかったんですけど、全部おんぶに抱っこで、司会も佐藤さんがやってくださって。

佐藤:ブルーリボン?

片岡:はい(笑)。

綾野:カッコいいじゃないですかあ(笑)。

佐藤:ブルーリボンは前年度の受賞者が司会をやるんだよ。

片岡:そのときは倒れていて、横でうなずくばっかりで何も頑張りましたというのが足りなかったんですね。今回ご一緒させていただくと分かったときに、「二十年どうしよう」というのと、「あのときの恩返しも含めてとにかく着いて行くぞ」と思っていたので、人より空回りもしたし、いらんこともしたと思うんですけど(笑)。

綾野:『ハッシュ!』ですか、その映画は?

片岡:そうです。

綾野:素晴らしい映画ですよね。すいません、ここだけの話になっちゃって(笑)。

片岡:(笑)。そのときに、いろいろなことを思って久子役に、それが私と関係があるわけじゃないんですけど、真摯に挑める材料のひとつになったと思います。

MC:素敵なお話ですね、ありがとうございました。ちなみに監督、今回の作品は吉田修一さんの原作「犯罪小説集」の短編で、映画のタイトルが『楽園』になっていますが、これは監督の発案だとお聞きしましたが。

瀬々:そうですね。僕は昔から吉田修一さんの小説が好きで、いろいろな方が監督するのを「うらやましいな」と思いながらずっと見ていたんですけど、やっと念願が叶ってですね、吉田さんと原作を映画化できることになってすごく嬉しく思って。でも、もともとが短編集なので、それを全部使う訳にもいかず、そのうちの2篇だけアレンジさせていただいて。原作にプラスして映画オリジナルの部分が多くあるんですね。杉咲花さんの紡役は、ほぼオリジナルです。吉田さんもすごく許してくれて、いろいろ打ち合わせをしながら作った映画で、ただ映画のタイトルを「犯罪小説集」とするにもいかず、タイトルも決まってなかったんですけど、ある日、ふと「楽園」という言葉を思いついて。実は吉田さんの短編のひとつに、別の作品で「楽園」というものがあるんですけど、その場に吉田さんもいて、「それでいいじゃないですか。それでいきましょう」みたいなことで決まったタイトルなんですけど。

MC:そうなんですねえ。映画を観ると、なぜこのタイトルなんだろうと思いながら、考えることろがあるんですけど、そこでキャストの皆さんにお聞きします。皆さんにとって楽園はどんなイメージでしょうか?

綾野:どうですか? 先輩?

佐藤:(笑)。私に振ったわけですね(笑)?

綾野:はい(笑)。

佐藤:はい(笑)。あのう、自分が打ちひしがれて、生きていると、そこは楽園にはならないけど、そうでなければ楽園と思える場所もある。東京に住んでいて楽園と思える方もいれば、そこは楽園じゃなかったと故郷に帰る方もいるし。その人の持ちようだと思うんですよね。だから楽園という言葉のなかに、ある情景も含まれているし、その反面、すごく残酷な響きもあると思うんです。そういうところで、僕は決定稿で『楽園』というタイトルを見たときに、この映画の僕自身にとっての見え方がすっと奥までいけたので、このタイトルをつけた監督にすごく感謝しています。

MC:ありがとうございます。

綾野:同じくでございます(笑)。

MC:綾野さん!

綾野:はっはっは(笑)。でも本当にそうだと思います。ほとんど浩一さんが話してくださったので、これで良いと思います。でも、僕は豪士にとっての楽園だったら、パッと出てくるんですけど。「明日が来る」ということが彼にとって楽園だったような気がして、愛華ちゃんにはもう明日が来ないから、明日が来るってことはときに楽園だし、ときに残酷かもしれないという。その感覚が強かったような気がします。

佐藤:愛華ちゃんというのは、最初に誘拐されて殺された女の子です。一応、補足しておきます(笑)。

MC:ありがとうございます。杉咲さんはどうですか?

杉咲:うーん……。浩一さんと同じです(笑)。すいません(笑)。ちょと質問と違うと思うんでうすけど、『楽園』というタイトルを聞いたときに、紡もきっと楽園を探しているのかなって思って、楽園を探しているからこそ、明日が来ることを受け入れられるのかなと思って。だから撮影中に私自身もずっと楽園を探していました。

MCを:なるほどです。片岡さんはいかがでしょうか?

片岡:私も佐藤さんと同じです(笑)。プラス、「犯罪小説集」を読んだときに、軽いことではないので、自分に置き換えたりすることも簡単ではないので、ひとつの起きたこととして、小説として読ませていただいて、タイトルが『楽園』となったときに、自分の考えを入れるのを止そうと思ったことと、日々で思うことは現実は思い通りにならないことがたくさんあったとしても、人を信じる心みたいなものが行く先は楽園であってほしい、楽園でなくてはならないという気持ちで、現実に打ち勝つことをいつも思っています。