エッセイストの森下典子が、約25年にわたって通い続けた茶道教室の日々を綴ったエッセイを、黒木華、樹木希林、多部未華子の初共演で映画化した『日日是好日』(にちにちこれこうじつ)が、10月13日に公開初日を迎え、新宿ピカデリーにて舞台挨拶が行われ、⿊⽊華、多部未華子、鶴田真由、原作者の森下典子、⼤森⽴嗣監督が登壇した。
舞台挨拶は、⿊⽊華が、公開と来場の⽅々への感謝を述べ、始まった。お茶の⼼、⼀期⼀会がテーマである本作。9月15⽇に亡くなり、本⽇、舞台挨拶に⽴てなかった樹⽊希林との出会いについてそれぞれに尋ねると、⼤森監督は、「京都の完成披露(7月31⽇)でお会いしたとき、随分、お痩せになってるなと。今⽇お会いできると思っていたのですごく残念です。⼀言でいうのは難しいけど、出会えてよかった。(希林さんとお仕事ができたことが)僕の財産になっていくと思います。希林さんが思っていらっしゃることはわからなかったのですが、それを感じたいと思いながら撮っていました」と振り返った。⿊⽊は、「お茶室でのふたりきりのシーンがあり、なんてありがたい時間なんだろうと過ごしていたのを覚えています。言葉でなかなか言えないけれど、⼈間性として格好いいなと思うことが多かったですし、学ぶことがたくさんありました」。初⽇を迎え、「初⽇を迎えましたよ〜!」と笑顔で樹⽊希林へ語りかけ、「たぶん⼀緒にいると思います」と思いを馳せた。多部は「恐れ多く、怖いイメージ」を抱いていたというが、「撮影中にお話させていただいたり、スタッフさんへの言葉に必ず愛がある。ひとりひとりと向き合ってお話をされている。他愛ない話をしていましたが、『貴重な時間をありがとうございました』とお伝えしたいです」、鶴田も「樹⽊さんは、ご自分に嘘をつかない⽅。佇まいに筋が通っている。教えていただくことがたくさんありました」と想いを語った。
本作の注目点について、多部が「⿊⽊さんと樹⽊さんの共演シーンが素晴らしくて、いろんなすごいなーを感じました。おふたりもすごいし、それを撮られた⼤森監督もすごい。空気感、世界観、本当にシンプルですが、伝わってくるものがバシバシあるんです」と絶賛し、⿊⽊はしきりに照れていた。原作者の森下は、「スタッフにお茶ができる⼈がひとりもいなかったのに、よくこんな素晴らしい映画ができたなと」と感⼼し、さらに「約1ヶ月の撮影期間なのに、1年が、季節の移り変わりがちゃんと表現されている。映画ってすごいなーと思いました」と感動した様子で続けた。
本作での「世の中には、“すぐわかるもの”と“すぐわからないもの”の2種類がある」というテーマにかけ、⿊⽊に、⼤⼈になってようやく気づいたこと、わかったことを質問すると、「休むことは⼤事だと思いました」と答えた。仕事がなくなるのではという不安の中でも、「3週間くらいお休みをいただいたとき、その後、新たに頑張れました。映画の中で典子さんがお茶をたてるように、落ち着いて、何も考えず、好きなことをすると、いろいろと吸収することができて、得るものがあることがわかりました。自分にとってそれが⼤切だと気づきました」と述べた。
最後に⿊⽊が、「樹⽊さんとのインタビューで『本物を知ることが⼤事』とおっしゃっていました。本作では、そういった茶器や掛け軸を⾒ていただけます」とアピール。さらに、「⼈⽣の気づきに満ちた映画です。樹⽊さん演じる武田先⽣のお茶室を感じていただきたいと思います」。⼤森監督が「お茶を通じて⼈間を描く、そう思って撮りました。希林さんのように優しい目で⾒ていただけたら嬉しいです」と締め、舞台挨拶は終了した。
『日日是好日』(にちにちこれこうじつ)
10月13日(土) シネスイッチ銀座、新宿ピカデリー、イオンシネマほか全国ロードショー
監督・脚本:大森立嗣
原作:森下典子『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫刊)
出演:黒木華 樹木希林 多部未華子 鶴見辰吾 鶴田真由 山下美月
配給:東京テアトル、ヨアケ
【ストーリー】 たちまち過ぎていく大学生活、二十歳の典子(黒木華)は自分が「本当にやりたいこと」を見つけられずにいた。ある日、タダモノではないと噂の“武田のおばさん”(樹木希林)の正体が「お茶」の先生だったと聞かされる。そこで「お茶」を習ってはどうかと勧める母に気のない返事をしていた典子だが、その話を聞いてすっかり乗り気になったいとこの美智子(多部未華子)に誘われるまま、なんとなく茶道教室へ通い始めることに。そこで二人を待ち受けていたのは、今まで見たことも聞いたこともない、おかしな「決まりごと」だらけの世界だった―。
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