唐田えりか、“自信ゼロ”だった自分に「踏ん張って!と言ってあげたい」『寝ても覚めても』ティーチイン レポート

東出昌大と濱口竜介監督がタッグを組み、芥川賞作家の柴崎友香による同名恋愛小説を映画化した『寝ても覚めても』が9月1日より公開中。このほど、9月17日にテアトル新宿にてティーチインが行われ、キャストの唐田えりか、濱口竜介監督が登壇した。

ティーチインが始まるやいなや、客席からは多くの人が手を挙げ、二人に質問攻め。はじめの質問者からは「こんなにもすばらしい作品を世に送り出してくれてありがとうございます」と二人へ感謝の気持ちが伝えられ、会場からはすかさず拍手がわき起こった。今にも泣きそうな唐田へ「本作に出演したことでお芝居への苦手意識がなくなったと言っていますが、いまオーディションを受けていた頃の自分になんて言葉を贈ってあげますか?」という質問に対し、「あの頃は本当に自信ゼロで、自分には何もなかった…」と涙を浮かべる唐田。「20歳になったら辞めると思っていたけれど、そんな時に『寝ても覚めても』に出会えた。だからオーディションを受けている頃の自分には、“『寝ても覚めても』と出会えるから踏ん張って!!”と言ってあげたいです!」と涙をぬぐい、笑顔を見せた。さらに演じた“あの”朝子へ何か贈る言葉はあるか、という質問については「何もないです(笑)」とバッサリ。「朝子と自分が似ているからなんですけどね(笑)」と付け足し、会場の笑いを誘った。

東出昌大演じる自由人・麦(ばく)について、観客より「途中で麦のとある行動に驚いたのですが、お二人はなぜだと思いますか?」という質問に対し、濱口監督は「麦はね、本当に分からないんですよ。本作ではそれぞれの役にバックストーリーがあり、それを役者さんへお伝えしているんですけど、なぜか麦というキャラクターだけはバックストーリーを書けなかったんです。それぐらい不思議な存在なんです」と、脚本も手掛けた監督から驚きの回答が。一方、唐田も「麦は本当に何を考えているか分からない人。麦を演じる東出昌大さん自身も、ぼーっとしている時なにを考えているか分からないんですよね。宇宙レベルのことをもしかしたら考えているのかもしれないという顔をしているんですよ!けれど撮影が進んでいくにつれて『あれ、もしかしたらこの人、本当に何も考えてないんだな』って思い始めたんです。あ、東出さんではなくて、麦がです!!」と慌てて訂正。監督も「麦がね!」とフォローしつつも、唐田の天然ぶりに会場はこの日一番の盛り上がりを見せた。

本作では、役者の演技には見えない自然な演技に国内外から注目を集めている。濱口監督の前作『ハッピーアワー』でも同様の演技に衝撃を受けたと言う人は、監督の役者の演技力の引き出し方について「唐田さんにどのような指導をしたのか?」と質問。それに対し監督は「正直、演技力というものがよく分からない。だから演技をよくしようとは思わず、前作もそうですが、魅力的な人を選び、その人の魅力が出るように心がけています。本作では、唐田さんが唐田さんであることを妨げず、助けるように台詞を書きました。そして何度も読んでもらい自然に口から出るようにしてもらいました。ほかの役者さんにも、彼ら自身を表現する上で邪魔にならないような演出をいつも考えてました」と真摯に返した。

また二人へ「この映画を通して自分自身変化したと思うところは?」という質問に、唐田は「全部です。お芝居することへ前向きじゃないところからのスタートでしたが、撮影が始まる頃には不安が一切なかったです。全然出来ないけどもっと知りたい、と思えるようになったことが自分の大きな進歩だなと思います!」と答え、監督は「運が良かった、と今聞いていて思いました。僕自身はよく分からないですが、人が変化していく様を目の当たりにできるのは幸せなことだなと感じましたね」と感慨深く語り、本作でお互いの信頼関係が築きあがってきたことがうかがえた。

ティーチインが終わりに近づき、最後のあいさつへ移ろうとした時、司会より「少し早いですが、9月19日は唐田さん21歳のお誕生日ということで、プレゼントをご用意してあります!」とのアナウンスが。唐田が21歳の誕生日を迎えるということで用意されたのは、21本のバラ!濱口監督よりバラの花束と一緒に本作にも登場する写真家・牛腸茂雄の写真集も贈られるというサプライズに、驚きと嬉しさが入り交じりながらも唐田は「もうすぐ21歳になっちゃいます(笑)。こんな素晴らしい場所で贅沢なお祝いをして頂いて本当に嬉しいです!ありがとうございます!」ととびきりの笑顔で感謝の気持ちを述べた。ティーチイン後は、唐田、濱口監督によるサイン会が行われた。サイン会には約300人に渡る長蛇の列が並び、ひとりひとりに笑顔でサインし、感謝の気持ちを述べサイン会は終了した。

『寝ても覚めても』
9月1日(土) テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開中
監督:濱口竜介
原作:柴崎友香「寝ても覚めても」(河出書房新社刊)
音楽:tofubeats
主題歌:tofubeats「River」(unBORDE/ワーナーミュージック・ジャパン)
出演:東出昌大 唐田えりか 瀬戸康史 山下リオ 伊藤沙莉 渡辺大知 仲本工事 田中美佐子
配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス

【ストーリー】 東京。カフェで働く朝子は、コーヒーを届けに行った先の会社で亮平と出会う。真っ直ぐに想いを伝えてくれる亮平に戸惑いながらも朝子は惹かれていき、ふたりは仲を深めていく。しかし、朝子には亮平には告げていない秘密があった。亮平は、かつて朝子が運命的な恋に落ちた恋人・麦(バク)に顔がそっくりだったのだー。

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS