75歳、初の長編監督が描く“老い”と“怒り”のシニア・ノワール『枯れ木に銃弾』公開決定

75歳にして初の長編映画監督デビューを果たす司慎一郎が、自身の人生と真正面から向き合い完成させた映画『枯れ木に銃弾』。本作は、かつて高度経済成長を支えながらも、現代社会の中で居場所を失っていく高齢者たちの視点から、フィルムノワールを更新する“シニア・ノワール”という新たなジャンルに挑んだ意欲作だ。

物語の中心にいるのは、東京の下町で静かに暮らす老夫婦。長年「普通に生きてきた」74歳の喜一郎と62歳の妻・あかねは、病気の治療費で貯金を失い、社会から冷遇され、生活困窮へと追い込まれていく。現金主義も通用せず、効率やコスパばかりが重視される機械化された社会の中で、彼らは「価値のない存在」と切り捨てられていく現実に直面する。

絶望の中でふたりが選んだのは、亡き父から受け継いだ猟銃を手にした“最後の反抗”だった。富裕層の家を襲撃する計画は、やがて思いもよらぬ惨劇へと転じ、ふたりは逃亡の末、かつての憩いの場所である銭湯へと辿り着く。血にまみれた身体を洗い流し、もう一度「人間」として戻ろうとする彼らに、運命は最後の選択を迫る――。それは、“老い”と“怒り”、そして確かな“愛”を抱えたふたりの、破滅と祈りの物語だ。

解禁されたメインビジュアルには、返り血を浴びながら並び立つ老夫婦と、拳銃を構える喜一郎の姿が刻まれている。画面を横切るひび割れの表現と、「普通に生きてきた――昨日までは」というコピーは、平凡な日常がある瞬間を境に崩れ去る現実を象徴的に突きつける。監督自身が人生の終盤に立ち返り、「本当にやり残したことは何か」と自問した末にたどり着いた“感謝”と“怒り”が、この一本に凝縮されている。

体力も衰え、社会からも遠ざけられた老人たちが、それでもなお人生と向き合い、最後に花を咲かせようともがく姿を描く『枯れ木に銃弾』。年齢に夢の限界はないというメッセージを、声高に語るのではなく、静かな映像と物語として差し出す一作となっている。

■作品情報
タイトル:枯れ木に銃弾
公開日:2026年2月20日(金)
公開:シモキタ ‒ エキマエ ‒ シネマK2 ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:司慎一郎
出演:鷲田五郎、田所ちさ ほか
製作年/国:2026年/日本
上映時間:63分
レイティング:PG12

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