映画『みらいのうた』の完成披露舞台挨拶が11月18日、新宿バルト9で開催され、主人公であるTHE YELLOW MONKEY・吉井和哉とエリザベス宮地監督が登壇。上映前から満席の会場は大きな歓声と熱気に包まれ、まるでライブ会場のような盛り上がりに。本作の制作過程や500時間超の密着でこそ見られた吉井の素顔、仲間・EROとの絆、そして時に爆笑を呼ぶ裏話まで――イベントでは濃密なトークが次々と飛び出した。

宮地監督が「最初ラフに編集した時は50時間でした」と語るほど膨大な素材を撮影した本作。吉井はすかさず「特典映像にしましょう。入浴シーンもあるよね?」と冗談を飛ばし、冒頭から会場は大爆笑。当初はソロアルバム用の短編制作から始まった企画だったが、吉井の体に異変が発覚。「LINEで『がんになっちゃいました(笑)』って送ったんです」と吉井が軽やかに明かすと、宮地監督は「本当にそんな感じで連絡が来て驚きました」と当時の心境を振り返った。それでも撮影は止まらず、吉井は「死ぬわけじゃないらしいので、撮影は続けてくださいと伝えました」と語る。困難を越えて撮影が積み重ねられていく過程は、映画の核に迫る大きなドラマとして刻まれている。
撮影現場の裏側には、吉井と宮地監督の絶妙な距離感があった。吉井が「(監督を)ドローン宮地って呼んでた」と振り返れば、宮地監督も「カメラが本体だと思う時がある」と語り、吉井がすかさず「映画泥棒みたいですね」とツッコミ。会場は再び大きな笑いに包まれた。さらに吉井は「僕の魂が撮っているみたいな感覚。監督とは一心同体」と作品への強い信頼をにじませるコメントも。密着によって生まれたふたりの信頼関係が、このドキュメントの圧倒的な熱量を支えている。

静岡での撮影秘話も飛び出した。吉井は「同級生の出演は全部当日アポ。暇だろうと思って(笑)」と語りつつ、「母親にも当日に連絡したら『片付けてないから困る!』とキレられました」と笑いを交えて明かした。プライベートに深く踏み込んだからこそ見える吉井の素顔。その距離の近さは、長年の信頼なくしては成し得ない。
本作は、吉井の音楽人生の原点であるURGH POLICEのボーカル・EROとの40年ぶりのセッションを目指す旅路を描く。撮影開始後に吉井の喉頭がんが発覚しながらも、彼は音楽への情熱を絶やさずリハーサルに向き合い続けた。東京ドームでの復活公演、そしてEROとの再会に向かう静岡への旅――そこに刻まれるのは、過去・現在・未来が交錯する“奇跡のようなドキュメント”だ。宮地監督は「ふたりの間に流れる空気は昔から変わらない。その永遠のような瞬間を感じた」と語り、観客へ「大切な人を思い返してもらえたら」とメッセージを贈った。
上映を控えたステージで、吉井は静かに、しかし力強く作品を語った。「自分のことを追いかけてもらっていたのに、初めて観た時ワクワクした。この映画のためにミュージシャンになったんじゃないかと思うくらい──過去にさかのぼりながら未来に向かっているような、不思議な感じがします」。その言葉通り、本作は“過去と未来をつなぐ音”を記録した唯一無二の映画となっている。



■作品情報
『みらいのうた』
2025年12月5日(金) 全国公開
出演:吉井和哉、ERO
監督・撮影・編集:エリザベス宮地
ナレーション:小川未祐
製作:murmur/TYMS PROJECT/ハピネット・メディアマーケティング/FM802/スペースシャワーTV/ローソンエンタテインメント
製作幹事・配給:murmur
配給協力:ティ・ジョイ
©︎2025「みらいのうた」製作委員会

