カズオ・イシグロの長編デビュー作を、『ある男』(2022)で日本アカデミー賞最優秀作品賞を含む最多8部門を受賞した石川慶監督が映画化した『遠い山なみの光』。第78回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品作となった本作は、戦後間もない長崎を舞台に、女性たちの強く儚い生き様を描いた感動のヒューマンミステリーです。9月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開されます。
8月11日(月・祝)、舞台となった長崎での特別試写会がTOHOシネマズ長崎にて開催され、主演の広瀬すず、共演の吉田羊、そして石川慶監督が舞台挨拶に登壇。温かな拍手に迎えられた広瀬は「朝は雨が降っていましたが、皆様が無事に来てくださって嬉しいです」と挨拶。吉田は「悦子の故郷である長崎に映画とともに帰ってこられたことを嬉しく思います」、石川監督も「長崎で上映できたことを本当に嬉しく思います」と笑顔を見せました。
広瀬は「主人公・悦子が生きた場所として長崎を歩いたとき、この街にしかないエネルギーを感じました」と語り、平和祈念像への献花についても「想像以上の大きさに圧倒され、平和の尊さを改めて感じました」と振り返りました。吉田は「歴史と記憶が混在する唯一無二の街」とし、石川監督は「長崎の風景や地形を知ることで、情景を鮮明に思い描きながら撮影ができた」と制作過程を明かしました。
広瀬は長崎弁の習得について「男女や世代で微妙に変わるニュアンスに苦戦しましたが、愛らしい音感で肌なじみも良かった」とコメント。吉田は全編英語での演技に挑戦し、「現地の生活を体験することで役のリアリティを追求した」と話しました。
カンヌ映画祭について広瀬は「日本ならではの表現がどう受け取られるか不安でしたが、温かく受け止めてもらえました」と感慨を述べ、吉田は原作者カズオ・イシグロとの交流を「チャーミングで知的な方」と表現。石川監督も「細やかなアドバイスをいただき、創作の糧になった」と感謝しました。
舞台挨拶の最後、広瀬は「長崎の皆さんを先頭にこの映画を広めてほしい」と呼びかけ、吉田は「皆さんの記憶でこの物語を完成させてほしい」と語りました。石川監督も「記憶が遠ざかる今だからこそ、世代を超えて語り継いでほしい」と強く訴えました。
■映画情報
タイトル:遠い山なみの光
公開日:2025年9月5日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
原作:カズオ・イシグロ/小野寺健訳(ハヤカワ文庫)
監督・脚本・編集:石川慶
出演:広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊、カミラ・アイコ、柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜、松下洸平/三浦友和
上映時間:123分
配給:ギャガ
ストーリー:
日本人の母とイギリス人の父を持つニキは、戦後長崎から渡英した母・悦子の半生を作品にしようとする。母が語り始めたのは、復興期の長崎で出会った女性・佐知子とその娘とのひと夏の思い出。しかし、その物語には秘められた<嘘>があり、やがて思いがけない真実が明らかになる──。
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