2020年の熊本豪雨により甚大な被害を受けた人吉球磨地域を舞台に、失った「居場所」を取り戻そうとする人々の姿を描いた映画『囁きの河』が、池袋シネマ・ロサにて東京公開初日を迎え、出演キャストと監督陣による舞台挨拶が行われました。
この日の登壇者は、中原丈雄、清水美砂、三浦浩一、篠崎彩奈、カジ、宮崎美子、大木一史監督、エグゼクティブプロデューサーの青木辰司氏。多くの観客が詰めかけ、満席となった会場は熱気に包まれました。
主人公・孝之役の中原丈雄は「6月末から熊本で上映が始まりましたが、今日も満席でとても嬉しく思っています」と感慨深げに語り、地元の人々との交流を振り返りながら、「人吉球磨の皆さんに支えられて完成した作品」と感謝を述べました。
中原と同じく熊本出身の宮崎美子は、「実は豪雨の前日にくま川鉄道で人吉に行っていたんです。その時はまさかあんな災害になるとは誰も思っていませんでした」と、被災当時の状況を振り返りながら、「川の流れのようなゆったりとした映画の時間を楽しんでいただければ」と観客に語りかけました。
篠崎彩奈は、地方活性化プロジェクトに参加する樹里役を演じ、「この映画で唯一“ほっこり”できる役かもしれません」と笑顔。「東京では味わえない“霧の味”の新茶の香りが忘れられません」とロケ地での体験も明かしました。
夫婦役を務めた清水美砂と三浦浩一は、実在の老舗旅館のモデルとなった「人吉旅館」に宿泊しながら撮影を行ったそうで、清水は「実際の旅館の女将さんにお話を伺いながら、自分なりの“雪子”を演じました」と語り、三浦は「ご本人とは違いますが、僕なりの“宏一”を作り上げました」と裏話を披露しました。
監督の大木一史は、「この映画のきっかけは水害の翌年、実話を基にした一冊の絵本との出会いでした。そこに“喪失と再生”というテーマが込められていて、映画として形にしたいと思いました」と制作の背景を語りました。
また、エグゼクティブプロデューサーの青木辰司氏は、「人吉には20年間通い続け、グリーンツーリズムを立ち上げてきました。この映画には、地元の方々と、外から支援する人々のコラボレーションの精神が息づいています」と熱く語り、観客に「ぜひ“色んな想い”で観てほしい」とメッセージを送りました。
■映画情報
タイトル:囁きの河
出演:中原丈雄、清水美砂、三浦浩一、渡辺裕太、篠崎彩奈、宮崎美子 ほか
監督・脚本:大木一史
配給:渋谷プロダクション
上映時間:108分
公開情報:池袋シネマ・ロサ、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中
ストーリー:
2020年、熊本を襲った豪雨から半年。母の訃報を受けて22年ぶりに故郷・人吉に戻った孝之(中原丈雄)は、仮設住宅に暮らす息子・文則(渡辺裕太)と再会するが、溝は深いまま。幼馴染の宏一(三浦浩一)が営む旅館も被災し、女将・雪子(清水美砂)は再建を目指す。そんな中、球磨川くだりの再開を信じる文則は、かつての同級生・樹里(篠崎彩奈)と再会。やがて彼らはそれぞれの方法で「失われた居場所」を取り戻そうと歩き出す――。
©Misty Film