CG一切なしの圧倒的なロケーション!自然への畏怖や人間の生命力を描き出す金子雅和監督最新作『光る川』2025年3月公開

川や山といったCG一切なしの圧倒的なロケーションと民俗学や美術等に裏打ちされた世界観で、現代人が忘れかけている自然への畏怖や人間の根源にある生命力を描き出す作風で知られる金子雅和監督の最新作『光る川』が、2025年3月に公開されることが決定した。

本作は、『アルビノの木』『リング・ワンダリング』など国内のみならず海外映画祭でも多数受賞している異才・金子雅和監督の最新作。初長編となった『アルビノの木』は9カ国の映画祭で20受賞、第2作『リング・ワンダリング』はインド国際映画祭で『あにいもうと』の今井正監督、『鉄道員(ぽっぽや)』の降旗康男監督に次いで日本人史上3人目となる最高賞(金孔雀賞)を受賞している。

今回の舞台となるのは、高度経済成長の始まった1958年。大きな川の上流、山間の集落で暮らす少年ユチャ。父は林業に従事し、母は病に臥せっていて、老いた祖母と暮らしている。まだ自然豊かな土地ではあるが、森林伐採の影響もあるのか、家族は年々深刻化していく台風による洪水の被害に脅かされている。夏休みの終わり、集落に紙芝居屋がやってきて子どもたちを集める。その演目は、土地にずっと伝わる里の娘・お葉と山の民である木地屋の青年・朔の悲恋。叶わぬ想いに打ちひしがれたお葉は山奥の淵に入水、それからというもの彼女の涙が溢れかえるように数十年に一度、恐ろしい洪水が起きるという。紙芝居の物語との不思議なシンクロを体験したユウチャは、現実でも家族を脅かす洪水を防ぎ、さらには哀しみに囚われたままのお葉の魂を鎮めたいと願い、古くからの言い伝えに従って川をさかのぼり、山奥の淵へ向かう…。

無垢な少年の眼差しに映る、自然への畏怖と現代化への分岐点。少年が目撃する里の娘と木地屋の青年の関係性には、支配的な社会制度から解き放たれた世界へ向かおうともがく様が描写され、疲弊する現代人への原点回帰的なメッセージが秘められている。

物語の根幹を支える女性・お葉を演じるのはNETFLIX『シティーハンター』くるみ役で注目を集めた華村あすか。お葉との悲恋の相手・朔にモデルとしてのみならず2022年NHK朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」章兄ちゃん役などで俳優としても活躍の場を広げている葵揚。物語の眼差しとなる少年・ユウチャとお葉の弟・枝郎を金子監督の師である瀬々敬久監督の作品『春に散る』にも出演した子役の有山実俊が一人二役で演じている。また、足立智充、堀部圭亮、根岸季衣、渡辺哲といったベテランから、金子作品に欠かせない山田キヌヲ、そして『リング・ワンダリング』に続く出演であり、現在日本映画に引っ張りだこの俳優・安田顕まで、多彩な顔ぶれが揃った。

原作は岐阜出身の作家・松田悠八の「長良川 スタンドバイミー一九五〇」。金子自身長編映画としては初めての原作ものとなったが、長良川流域の土地・民話・伝承からインスピレーションを受け、物語を大きくふくらませていった。撮影は2023年9月、全て岐阜県内で行われた。いつも凄みのあるロケーションで見るものを圧倒する金子作品、それは監督自身が何度も足を運んで探し出すもので、今回もそうしたロケハンが数十回にわたり繰り返された。深く引き込まれそうな水辺、近寄りがたさすら感じさせる洞窟や滝、悠久の時を刻む山々の情景など、CG一切なしの神秘的な自然が物語を彩る大きな要素となっている。そんな作品世界に寄り添う音楽は、細田守監督作品や瀬田なつき監督『違国日記』などを手掛けてきた音楽家・高木正勝が書き下ろし、繊細に演奏している。

『光る川』
2025年3月 ユーロスペース他全国公開
監督・脚本:金子雅和
出演:華村あすか 葵揚 有山実俊 足立智充 山田キヌヲ 髙橋雄祐 松岡龍平 堀部圭亮 根岸季衣 渡辺哲 安田顕
配給:カルチュア・パブリッシャーズ

©長良川スタンドバイミーの会