「あんた達二人は、沖縄の恥だ」次世代に残してはいけない問題『遠いところ』予告編&ポスタービジュアル

沖縄のコザを舞台に、幼い息子と夫との3人暮らしをする17歳のアオイ(花瀬琴音)が社会の過酷な現実に直面する姿を描き、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭クリスタル・グローブ・コンペティション部門に出品、Variety誌が“貧困にあえぐ日本の性差別を、痛烈に告発する。溝口健二的な現代悲劇。”と激賞した映画『遠いところ』が、6月6日より公開されることが決定した。併せて、予告編とポスタービジュアルがお披露目となった。

主人公アオイを演じるのは、昨年『すずめの戸締り』に出演で話題を呼び、本作が映画初主演となる花瀬琴音。東京出身の彼女が、撮影の1ヶ月前から現地で生活し、“沖縄で生まれ育った若者”アオイを体現する。アオイの友人、海音には映画初出演となる石田夢実、夫のマサヤには『衝動』(21)の佐久間祥朗が起用され、花瀬と同様に撮影1ヶ月前から現地入り、沖縄・コザで実際に体感した生活感溢れるリアルな演技を披露している。

監督は、長編デビュー作『アイムクレイジー』(19)で、第22回富川国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)に輝いた工藤将亮。長編3作目のオリジナル作品『遠いところ』は、4年に渡り沖縄で取材を重ね脚本を執筆、全編沖縄での撮影を敢行した。日本公開に先立ち、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最高賞を競うコンペティション部門に日本映画として10年ぶりに正式出品、約8分間のスタンディング・オベーションを受けた。さらに第23回東京フィルメックス コンペティション部門 観客賞受賞、第44回カイロ国際映画祭 インターナショナル・パノラマ部門、第53回インド国際映画祭(ゴア)シネマ・オブ・ザ・ワールド部門、ヨハネスブルグ映画祭など、海外映画祭で高く評価されている。

予告編は、「あんた達二人は、沖縄の恥だ」というおばぁ(吉田妙子)の痛烈なひと言で始まる。沖縄のコザに生きる17歳のアオイと親友の海音が年齢を偽ってキャバクラで働いているからだ。アオイには2歳の息子がいる。貧困、若年出産、家庭内暴力、少年犯罪など、沖縄が抱えている問題は、彼女にとって日常だった。生活費がなくなり父に会うと「キャバクラでも何でも働いて稼ぎなさい」と絶縁され、店にガサ入れした警官からは「あんたの子どもでしょ」と突き放される。酒に溺れる夫のマサヤを諫めようとするが暴力を振るわれてしまう。「普通に生きたい。」アオイの当たり前の願いは、目の前に突きつけられた厳しい現実と不寛容な社会の前に脆くも崩れそうになる。

「避けては通れない衝撃」(Jeremy C Processing)、「巨匠ケン・ローチに対する日本のアンサーのよう」(Ray Magazine)、「貧困にあえぐ日本の性差別を、痛烈に告発する。溝口健二的な現代悲劇」(Variety)、「尊厳を持って生きる強い女性の物語」(Quinlan)など、リアルな現実を鮮烈に描写した『遠いところ』をいち早く作品を鑑賞した海外メディアの激賞が紹介されていく。

ガサ入れされたキャバクラでは働けなくなったアオイ。だが、酒浸りの夫を頼ることすらない。遂には荒んだ生活を見かねた保護観察官に息子を奪われてしまう。ただ「普通に生きたい」と願い、厳しい現実から逃げることすらできないが彼女が最後に選んだ未来とは。『遠いところ』が突きつけるメッセージに期待が高まる予告編となっている。

ポスタービジュアルは、コザの浜辺で幼い息子を抱いたアオイが振り向いた瞬間をとらえている。幼い母と子の姿に「映画ではなく、現実。次世代に残してはいけない問題がここにある-」という本作が問いかける現代社会への痛烈なメッセージが記されている。

また、主題歌に沖縄で生まれ現在も地元で活動を続け沖縄の音楽シーンを牽引する、ラッパーの唾奇(つばき)による名曲「Thanks」に決定。曲の中に出てくる女性が、本編の主人公アオイにも重なる衝撃的なリリックに制作陣が何度もオファーを重ね、主題歌への提供が決まりました。唾奇は映画及びエンタテイメント作品への初めての楽曲提供となり、「自分を取り巻く環境ととても似ていました。裕福とは言えない環境で育ち、おばぁの存在の大きさなどが描かれていて、僕が生まれ育った沖縄のリアルを感じ取る事ができました。この作品はフィクションでは無く沖縄のとても小さな一つの物語です」とコメントを寄せている。アオイの壮絶な人生を描いた映画に寄り添う主題歌の力は大きく、先日上映された沖縄国際映画祭の公式上映では、エンドロールとともに流れる「Thanks」とともに涙を流す観客が続出した。

『遠いところ』が描くのは沖縄の局地的な社会問題ではなく、日本中のどこでも今まさに起こっている問題である。

■唾奇(主題歌)コメント
今回主題歌、挿入歌を担当させて頂いたRapperの唾奇(つばき)です。今回お話を頂いて作品を観させて頂き、自分を取り巻く環境ととても似ていました。裕福とは言えない環境で育ち、おばぁの存在の大きさなどが描かれていて、
僕が生まれ育った沖縄のリアルを感じ取る事ができました。この作品はフィクションでは無く沖縄のとても小さな一つの物語です。映画を通して少しでも沖縄を知って頂けたら幸いに思います。

『遠いところ』
2023年6月6日(金)より、沖縄先行
2023年7月7日(金)より、全国公開
監督・脚本:工藤将亮
主題歌:“Thanks” by 唾奇
出演:花瀬琴音 石田夢実 佐久間祥朗 長谷川月起 松岡依都美
配給:ラビットハウス

【ストーリー】
沖縄県・コザ。17歳のアオイは、夫のマサヤと幼い息子の健吾(ケンゴ)と3人で暮らし。
おばぁに健吾を預け、生活のため友達の海音(ミオ)と朝までキャバクラで働くアオイだったが、建築現場で働いていた夫のマサヤは不満を漏らし仕事を辞め、アオイの収入だけの生活は益々苦しくなっていく。マサヤは新たな仕事を探そうともせず、いつしかアオイへ暴力を振るうようになっていた。そんな中、キャバクラにガサ入れが入り、アオイは店で働けなくなる。悪いことは重なり、マサヤが僅かな貯金を持ち出し、姿を消してしまう。仕方なく義母の由紀恵(ユキエ)の家で暮らし始め、昼間の仕事を探すアオイだったがうまくいかず、さらにマサヤが暴力事件を起こし逮捕されたと連絡が入り、多額の被害者への示談金が必要になる。
切羽詰まったアオイは、キャバクラの店長からある仕事の誘いを受ける。

©2022 「遠いところ」 フィルムパートナーズ