園子温監督が監督・脚本・編集・音楽を手掛け、『地獄でなぜ悪い』に続き2度目となる第49回モントリオール・シネヌーヴォー映画祭で観客賞を受賞した『エッシャー通りの赤いポスト』が、12月25日より公開される。このほど、本作の予告編と場面写真がお披露目となった。
園子温節全開のオリジナルストーリーで、個性豊かな登場人物たちの物語が“赤いポスト”を起点に展開していく本作。鬼才のカリスマ映画監督・小林正の新作のオーディションに有名無名の女優たちが集結。興味本位で応募してきた者、夫の意思を継ぎ女優を目指す若き未亡人、「小林監督心中クラブ」のメンバー、浴衣姿の劇団員、やらせの有名女優、殺気立った訳ありの女…。一方、小林監督はエグゼクティブプロデューサーの無理な要望に苦悩し、シナリオ執筆もうまく進まない。そんな時、昔の彼女が監督の目の前に現れるが…。
予告編では、「人生が決まる」オーディション会場に向かう、まだ「何者でもない」者たちが映し出される。オーディションではさまざまな個性的なキャラクターが登場。鬼才映画監督・小林(山岡竜弘)が、全員新人で撮ろうとした企画を、エグゼクティブプロデューサーによって阻まれそうになる様子がうかがえる。園子温監督が経験した映画業界あるあるを、エンターテイメントに昇華し、さらに、今「仮面」をかぶって生きる全ての人へ畳み掛けるように、「エキストラでいいんか?人生のエキストラで」と投げかけ「君は誰だ?」と問いかけ「仮面を外して、衝動のまま突き進め」と鼓舞する本編のメッセージを詰め込んだ、エモーショナルな映像に仕上がった。ラストシーンは、渋谷のスクランブル交差点。1993年の東京ガガガを考えると園子温の十八番。まさにインディーズ映画に戻ってきた証ともいえる。
本作には、園作品らしい魅力的なヒロインが次々に登場する。殺気立った訳ありの女・安子には藤丸千。狂気をみなぎらせながら、可憐さも持つ独特の存在感は、『愛のむきだし』で登場した満島ひかり、安藤サクラに匹敵。俳優志望だった亡き夫の遺志を継いでオーディションに応募する切子を演じるのは、黒河内りく。これまで演技経験がなかったとは思えない凛とした姿は、『紀子の食卓』の吉高由里子、『ヒミズ』の二階堂ふみらを輩出してきた園作品に新たなヒロインの誕生を印象づける。映画監督の小林を支える恋人の方子に、モデル、フォトグラファーとしても活動するモーガン茉愛羅。柔らかさと儚さを持つキャラクターによって、映画に幻想的な雰囲気を漂わせる。映画監督の小林には舞台で長らく活動してきた山岡竜弘、助監督のジョーに映画・ドラマ・舞台でキャリアを重ねてきた小西貴大。さらにベテラン俳優の藤田朋子もワークショップに自ら応募し、選考を経て選抜された51名の1人として参加する。それぞれ経歴も年齢も異なる役者たちが、園監督が全員のキャラクターを踏まえて作り上げたそれぞれの役を、実人生を生きるように熱演する姿は、群像劇ならではの迫力に。さらに渡辺哲、諏訪太朗、吹越満といった園作品でおなじみのベテラン俳優たちが脇を固め、作品と若き役者たちを力強く支える。
『エッシャー通りの赤いポスト』
12月25日(土)より、渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開
監督・脚本・編集・音楽:園子温
出演:藤丸千 黒河内りく モーガン茉愛羅 山岡竜弘 小西貴大 上地由真 縄田カノン 鈴木ふみ奈 藤田朋子 田口主将 諏訪太朗 渡辺哲 吹越満
配給:ガイエ
【ストーリー】 鬼才のカリスマ映画監督・小林正(山岡竜弘)は新作映画『仮面』に、演技経験の有無を問わず広く出演者を募集する。浴衣姿の劇団員、小林監督の親衛隊である“小林監督心中クラブ”、俳優志望の夫を亡くした若き未亡人・切子(黒河内りく)、殺気立った訳ありの女・安子(藤丸千)、プロデューサーにまとわりつく有名女優など様々な経歴の持ち主たちが、オーディション会場に押し寄せて来る。それぞれの事情を持った参加者たちは、小林監督の前で語り、演じて見せる。一方、助監督のジョー(小西貴大)たちに心配されながら、脚本作りに難航する小林の前に、元恋人の方子(モーガン茉愛羅)が現れる。彼女は脚本の続きを書いてくれるという。1年前のある出来事を忘れることが出来ない小林は、方子に励まされながら『仮面』に打ち込み、刺激的な新人俳優たちを見つけ出すことで希望を見出すが、エグゼクティブプロデューサー(渡辺哲)からの無理な要望を飲まなければならなくなる。自暴自棄に陥った小林は、姿が見えなくなった方子を探すが…。
©2021「エッシャー通りの赤いポスト」製作委員会