『接吻』で各賞を受賞した鬼才・万田邦敏監督の最新作で、仲村トオル、杉野希妃、斎藤工、中村ゆりが共演を果たす映画『愛のまなざしを』が2021年に公開されることが決定した。併せて、場面写真がお披露目となった。
これまでも強烈な自我を持つ女性を軸に、狂気ともいえる愛を描いてきた鬼才・万田邦敏監督が、カンヌ国際映画祭にてダブル受賞した『UNloved』、比類なき傑作『接吻』に続き、共同脚本・万田珠実と3度目のタッグを組んだ本作は、亡き妻への思いを捨てきれない男と、その男に恋をする女の嫉妬、復讐、そして救済の劇。
男は精神科医、女は元患者。二人は恋に落ち、やがて結婚を約束。しかし、前妻のことは絶対に忘れないという男の思いを知った女は、嫉妬に狂い、二人の歯車は狂っていく。そして、男の耳に亡き妻の声がこだまして…。エリート精神科医の精神に何が起きたのか?彼女が真に求めていたものは何だったのか?生死を超えた純粋な愛とは?
万田監督作品『UNloved』『接吻』でキーパーソンを好演した仲村トオルが、現実と幻想の区別がつかなくなる精神科医・貴志役を熱演。貴志からの愛を切望する綾子役は、監督、プロデューサーとしても精力的に活動する杉野希妃が演じ、本作の発案、プロデュースも務めた。死んだ姉に恋焦がれる内山茂役には、監督、プロデュースなど肩書を超えて活躍する斎藤工。映画やドラマ、舞台としなやかな演技力が光る中村ゆりが、6年前に亡くなった貴志の妻の亡霊を強く儚く演じる。貴志の息子・祐樹役として十代の繊細な心の揺れ動きを表現した藤原大祐は、オーディションで役を掴み、本作で映画デビューを飾っている。そのほか、片桐はいり、ベンガル、森口瑤子らベテラン俳優陣が脇を固める。
■万田邦敏(監督) コメント
本作のラストをどうするか、じつは撮影中に二転三転した。決定稿では、主人公の男女は最後まで闇の中に宙づりにされたままだった。ところが、撮影中にそれではこの二人がなんだか可哀想に思えてきた。救いがなさ過ぎると思った。男も女も本気で愛し合ったのだし、本気で憎み合ったのだ。その本気を最後に突き放したままでいいのだろうか。そう思わせたのは、役を演じる目の前の仲村さんと杉野さんの身体が、意識せぬまま、己が演じる男と女の救済に向けて動き、発話し、沈黙していたからなのだと思う。初めは、二人自身も私もそのことに気付かなかった。二人の結末に最初に違和感を感じたのは、ずうっと撮影を見続けていた脚本を書いた珠実そのひとだった。愛する者が苦しんでいるのなら、その苦しみを分かち合いたい、苦しみから救ってあげたい。珠実は、仲村さんと杉野さんの芝居する身体が発するサインを目ざとく読み取ったのだ。撮影の合間を縫って二人に相談してみると、「そういうことだったのか」と二人も納得。だったらあれは、これはといろいろとアイデアは出てくるし、二人の身体にもそれまで以上に開放感、伸びやかさ、自由さが増した。こうして、映画の最後(それは撮影終了日でもあった)に杉野さん演じる綾子は満面の笑みを見せることになった。決定稿とは真逆の結末に、私たちはみな満足してクランクアップしたのである。
■仲村トオル(貴志役) コメント
「答えは其処にしかないのです」と説得され切った『UNloved』。「答えはひとつではないのです」と自由さに戸惑った『接吻』。『愛のまなざしを』の撮影現場は過去の自分が出演した万田邦敏監督の作品と比べると「答えなど最初からないのです」と言われ、「迷宮を駆け抜けたような」日々でした。過去の万田組の現場の雰囲気と共通していたのは涼しさより少し冷たさに近いような、ひんやりとした緊張感、でしょうか。ただそれも、過去の現場にあった張りつめていたものが、時に歪んだり捻じれたりするような新鮮な瞬間が何度もありました。
『愛のまなざしを』
2021年 全国公開
監督・脚本:万田邦敏
脚本:万田珠実
出演:仲村トオル 杉野希妃 斎藤工 中村ゆり 藤原大祐 万田祐介 松林うらら ベンガル 森口瑤子 片桐はいり
配給:イオンエンターテイメント 朝日新聞社 和エンタテインメント
【ストーリー】 貴志(仲村トオル)は、患者の話に耳を傾けてくれると評判の精神科医だが、6年前に亡くした妻・薫(中村ゆり)のことを想ってはむせび泣き、薬で精神を安定させる日々を過ごしていた。患者としてやってきた女・綾子(杉野希妃)は、治療関係を超えて貴志と気持ちが通じ合い、やがて貴志に寄り添うようになる。しかし綾子は、貴志の亡き薫への断ち切れない思いや薫との子供・祐樹(藤原大祐)の存在を知るや猛烈な嫉妬心にさいなまれ、独占欲がふくらむ。そして、前妻の弟・茂(斎藤工)に近づき…。
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