ベルリン国際映画祭パノラマ部門にてドキュメンタリー賞と観客賞をダブル受賞し、山形国際ドキュメンタリー映画祭でも上映されたスーダンのドキュメンタリー『ようこそ、革命シネマへ』が、3月下旬に公開される。このほど、本作の予告編と場面写真がお披露目となった。
アフリカの北に位置するスーダン。1956年の独立後、海外で映画を学んだイブラヒム、スレイマン、エルタイブ、マナルの4人は、スーダンで映画を製作してきた。彼らは、母国スーダンに映画文化を根づかせようと、1989年に「スーダン・フィルム・グループ」を設立するが、同年に軍事独裁政権が誕生すると言論の自由は奪われ、映画は発禁処分となり、彼らは政治犯として拘禁されたり、国外への亡命を余儀なくされた。その後も、ダルフール紛争(2003年~)や、南スーダンの分離独立(2011)などが続き、スーダンの映画産業は崩壊し、かつての映画館も廃れてしまった。そんな状況下、20年以上もの時を経て、還暦をすぎた4人は、母国スーダンで再会し、「映画を再びスーダンの人々のもとに取り戻したい」というスローガンのもと、一夜限りで映画館を復活させるために行動を開始する。着々と上映の準備を進めていたが、電気もままならない生活環境に加え、独裁政権下のスーダンでの上映は困難を極めるものだった。ただ、映画への愛に溢れ、苛酷な人生を経験した彼らは、様々な障壁にぶつかっても臆することなく、冗談を飛ばし陽気に笑い合いながら、夢に向かって力を合わせていく。果たして、彼らの努力は実を結び、映画を復活させることはできるのか…。映画人たちの目線を通して、国民が失ったもの、愛する国の美しさ、独裁政権下の生活・恐怖が浮き彫りになっていく。
予告編は、かつてのスーダン映画のモノクロ映像が流れ、「映画は、突然死んだ」という衝撃的なセリフから始まる。そして時代は現在のスーダンへと切り替わり、映画産業が廃れた中、いまもなお映画を取り続ける古老の映画人たちが映し出される。彼らは、映画館を清掃したり、若者に上映作品の希望を聞き込みするなど、再び映画館を復活させるために動き出す。様々な障害・苦難がありながらも、「俺らは嵐を生き抜いてきた」と笑顔で映画と向き合う4人。最後に、地面に若木を植えながら発せられる「映画の新しい始まりを願おう」という言葉からは、スーダン映画の未来に希望を感じさせる。
場面写真は、廃れた映画館の外観や、夕闇の中で拡声器を持って話す映画人の姿などを収める。
『ようこそ、革命シネマへ』
3月下旬 ユーロスペースほか全国順次ロードショー
監督:スハイブ・ガスメルバリ
出演:イブラヒム・シャダッド スレイマン・イブラヒム エルタイブ・マフディ マナル・アルヒロ
配給:アニモプロデュース
© AGAT Films & Cie – Sudanese Film Group – MADE IN GERMANY Filmproduktion – GOÏ-GOÏ Productions – Vidéo de Poche – Doha Film Institute – 2019