『悪人』、『怒り』など多数の著書が映像化されるベストセラー作家・吉田修一による傑作短編集「犯罪小説集」を、主演に綾野剛、共演に杉咲花、佐藤浩市を迎えて『64-ロクヨン-』の瀬々敬久監督が映画化した『楽園』が10月18日より公開される。このほど、TOHOシネマズ 熊本サクラマチの9月14日のオープンを記念し、9月13日に本作の舞台挨拶付き試写会が行われ、綾野剛と杉咲花が登壇した。
約一週間程度の募集期間に応募は6000件を超え、満席御礼の会場は熱気に溢れる観客でいっぱい。「初熊本」という綾野は“くまもん”をイメージしたという黒基調に赤を取り入れた衣装で登場。熊本空港に降り立った際に、前の便に乗っていた行定勲監督が、綾野らが来ることを知って待っていてくれたという驚きのエピソードから熊本キャンペーンがスタートしたと語った。取材と移動で熊本を堪能できていないが、熊本名産のお菓子を食べたと杉咲も話し、アットホームな雰囲気でTOHOシネマズ 熊本サクラマチ初めての舞台挨拶はスタートした。
あるY字路で起きた事件の容疑者として追いつめられていく主人公・豪士(たけし)を演じた綾野。どのような役作りをしたのかについて、「Y字路というその土地が持つ雰囲気、まずはそれを体感することがこの役にとっては重要。直に感じることに意識を払った」と語った。Y字路で消息を絶った少女と直前まで一緒だった親友で、心に深い傷を抱える少女・紡(つむぎ)を演じた杉咲は、「Y字路での経験がトラウマになっている少女なので、撮影に入る前にY字路の写真を毎日見るようにしていました。でも現場に行って出てくる思いや感情を大切にしたいと思って撮影に臨みました」と語った。
豪士と紡のふたりは互いの不遇に共感していくが、撮影にあたって綾野と杉咲のふたりの関係性で気を付けたことがあるかという質問に、「生きるとは、選択の連続。でも選択することを許されないふたりが共通して抱える疎外感、閉塞感が共鳴し合った。体温を感じ合ったということなんだと思う。本番という声がかかって、カットという声がかかる。そこは集中するが、あとはスイッチをオフにして切り替えます」と綾野は振り返った。杉咲は「自分と一緒だって感じ取ったのでしょう。豪士と紡の間に流れる空気があり、それがとても居心地がよかった。撮影現場での綾野さんはとても気さくであたたかく話しかけてくれるんです。撮休にご飯に誘ってくれたりしましたし、撮影期間中に迎えた誕生日にはふたつもプレゼントをくださいました」と語った。さらに杉咲は役作りについて、「事前に考えるというよりはその場で出てくる思いや感情を大切にしていました」と語ったうえで、「紡として豪士の前に出ると自然に湧き出るものがある。自分でコントロールしようと思ってもできなかった。本番という声がかかった瞬間、頭が真っ白になるということがあって。こんなことは初めての経験でした」と吐露した。
これから映画を鑑賞する観客に向けて、「真新しい映画館で、記念すべきハレの日に皆さんの前でご挨拶することができてうれしいです。皆さんがどう受け止めてくださるかドキドキします。ぜひこの大きなスクリーンで映画の力を感じてほしい」と杉咲が話すと、綾野は「この映画をみなさんに託したいんです。それぞれの答えが見つかるはずだと思っています。ぜひそれを持って帰って欲しい」と熱く力強く観客に言葉を投げかけた。
綾野が挨拶中、突然客席の一点に目を向け「瀬々さん!?」と声をあげ、一瞬会場の空気がざわついた一幕も。監督によく似ている観客に、「監督が観に来ているのかと思った」と会場でも笑いが起きた。熊本エピソードや人違いエピソードでは大きな笑いが起きるという、短い時間ながらも、和やかで穏やかな雰囲気に包まれ、大盛況のなか幕を閉じた。
『楽園』
10月18日(金)全国公開
監督・脚本:瀬々敬久
原作:吉田修一「犯罪小説集」(KADOKAWA刊)
出演:綾野剛 杉咲花 村上虹郎 片岡礼子 黒沢あすか 石橋静河 根岸季衣 柄本明 佐藤浩市
配給:KADOKAWA
【ストーリー】 ある地方都市で起きた少女失踪事件。家族と周辺住民に深い影を落とした出来事をきっかけに知り合った孤独な青年・豪士(綾野剛)と、失踪した少女の親友だった紡(杉咲花)。不幸な生い立ち、過去に受けた心の傷、それぞれの不遇に共感し合うふたり。だが、事件から12年後に再び同じY字の分かれ道で少女が姿を消して、事態は急変する。一方、その場所にほど近い集落で暮らす善次郎(佐藤浩市)は、亡くした妻の忘れ形見である愛犬と穏やかな日々を過ごしていた。だが、ある行き違いから周辺住民といさかいとなり、孤立を深める。次第に正気は失われ、誰もが想像もつかなかった事件に発展する。2つの事件、3つの運命、その陰に隠される真実とは。“楽園”を求め、戻ることができない道を進んだ者の運命とは…。
© 2019「楽園」製作委員会