認知症を患う99歳の母と、自身も71歳の映像作家・谷光章監督が介護をする姿をほのぼのと描いたドキュメンタリー『99歳 母と暮らせば』が、6月8日より公開されることが決定した。
本作は、谷光監督自身が白寿を迎えた母・千江子さんと同居し寄り添いながら、日々の情景やそこで巻き起こる様々な出来事を、約1年にわたり撮影したセルフドキュメンタリー。昼夜逆転や、足腰の衰え、下の失敗など、高齢になればほとんどの人が経験するトラブルを抱えながらも、母の人生最終章を気持ち良く楽しく過ごさせるべく奮闘する家族の姿に、「人生100年時代」と言われる現代において、介護する人もされる人も共に楽しく生きるヒントが満載の映画となっている。
本作が完成した昨年、舞台となった神奈川県藤沢市で完成披露上映が行われ、地元新聞などで大きく取り上げられた。観客からは「笑顔あふれる映画をありがとう」、「私もこんなかわいいおばあちゃんになりたい」、「介護する側、される側の人間性でどれほど豊かな人生の最後が過ごせるかと思いました」など多くのあたたかな感想が寄せられた。本作は、15周年を迎えた新宿K’s cinemaのリニューアル後初上映となるオープニング作品に選ばれ、待望の劇場公開となる。
場面写真は、満面の笑顔を浮かべる母・千江子さんと、谷光監督と千江子さんが仲睦まじく手を繋いで歩く様子を活写。本作のやわらかな雰囲気を象徴するようなカットとなっている。
■谷光章監督 コメント
2025年には3人に1人が65歳以上の超高齢化社会を迎え、殆どの人が介護に向き合わなければならなくなります。この映画を作ろうと思ったきっかけは、たまに実家に帰ると近くに住む家族が来ていて、母の認知症の症状が出るたびに「また同じことを聞く!」「さっき食べたばかりでしょ!」などと母を激しく怒るのをたびたび目にしたからです。自分ではどうすることもできない老いと認知症のため、本来天真爛漫で明るい性格の母が申し訳なさそうに小さくなっているのです。私は母のこうした現状を少しでも改善したいと同居することにしました。
母の症状は認知症特有の《同じことを何度も何度も聞いて来る》《朝と夕の区別がつかない》《さっき食べた食事を忘れて「まだ食べてない、お腹がすいたー」と騒ぐ》などなど。しかし、こうした姿は紛れもなく介護する者の十数年後の姿なのです。映画では99歳の母と71歳の息子のユーモア溢れるとぼけた会話が続く日々の暮らしを中心に、江の島などの四季を折込みながら、次々に起こる驚くべき認知症のリアルな姿を描いていきます。映画を通して、介護される人もする人も、「楽しく幸せに暮らせる介護はどうすればよいか」を考えるきっかけになればと思います。
『99歳 母と暮らせば』
6月8日(土)より新宿 K’s cinemaほか全国順次公開
監督・企画・撮影・編集・ナレーション:谷光章
出演:谷光千江子 谷光賢 谷光育子 谷光章 小田中通子 谷光家の人々 川邊壽子 松本尚子 長田典 高橋綾子 前田由美子
配給:イメージ・テン
【作品概要】 認知症を患っている99歳の母。足腰の衰えも進行して一人暮らしがちょっと心配な母を介護すべく、71歳の息子が実家に移り住んだ。老老介護に四苦八苦しながらも、母の人生最終章の日々を撮影していく。日常茶飯事で起こる失敗や苦難、そして母のチャーミングな一面や日々の出来事で輝く愛おしい発見の数々。介護され、介護する人たちが共に幸せに暮らせる介護とは?生きていることの愛おしさが心に沁みるドキュメンタリー映画。