佐藤健の“憑依演技”、新田真剣佑の“存在感”!ふたりの演技対決に圧倒!『るろうに剣心 最終章 The Final』

実写映画『るろうに剣心』シリーズのフィナーレとなる『るろうに剣心 最終章 The Final』が、4月23日より劇場公開。6月4日は、エピソード・ゼロとなる『るろうに剣心 最終章 The Beginning』も公開される。約10年に及ぶ壮大な“伝説”が、遂に終わってしまうのだ。

新型コロナウイルスの感染防止のため、約1年間の公開延期を経た2作だが、「ようやく観られる」という感慨と共に、「もう観られない」という切なさも巻き起こっているのではないか。この10年間の日本映画を見返してみても、やはりこのシリーズは特別な存在。ヒットシリーズとしても、国内の漫画実写映画・アクション映画の歴史を変えた記念碑的な作品としても、未来永劫語り継がれていくことだろう。

『るろうに剣心 最終章 The Final』で描かれるのは、主人公の流浪人・緋村剣心(佐藤健)と因縁を持つ義弟・雪代縁(新田真剣佑)の対決。剣心が暗殺者・人斬り抜刀斎として暗躍していた時代に起こった、「妻・雪代巴(有村架純)の斬殺」という事件が明かされ、剣心のトレードマークでもある頬の十字傷の秘密も判明する。原作ファンには屈指の人気を誇るエピソードで、満を持しての実写化となった。

なお、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』では、剣心が巴を斬殺した際、何が起こったのか、そもそも二人はどうやって出会ったのか、その詳細が描かれる。本稿では『るろうに剣心 最終章 The Final』の内容に絞り、ネタバレなしで作品の魅力を紹介する。

シリーズ史上、最も“重い”戦いが描かれる

『るろうに剣心 最終章 The Final』の大きな魅力、それはざっくり言うと「かつてないシリアスな物語」「シリーズ最大級のアクション」「各キャラクターの掘り下げ」の3つにあるだろう。

まず、ストーリーについて。先に述べたように、今回の物語は剣心の過去に関わるものであり、作品の主題にも強く結びついている。かつて人斬りだった剣心は、罪を償うために「もう決して人は斬らない」という“不殺の誓い”を立て、全国を放浪しながら人助けをして生きてきた。そして、神谷薫(武井咲)や相楽左之助(青木崇高)といった仲間たちを得て、ようやく安住できるかと思いきや、彼を憎悪する縁が現れたことで、状況は一変。剣心は己の過去と再び向き合わねばならなくなる。縁との戦いは、「何をもって人斬りは“許される”のか?」という、剣心自身の己との闘いにもなってゆくのだ。

これまでの剣心の戦いは、「敵を倒せば終わる」というものだった。ただ今回は、「自分のせいで悪に染まってしまった」“被害者”が相手。剣心の心には迷いが生じ、いままでとは全く違う苦闘を強いられる。さらに、縁は剣心に恨みを持つ者たちを集め、彼らに剣心の友人・知人を襲わせる。いわば、剣心がこれまで行ってきた「人助け」の完全否定をしようとするのだ。

そのため今回は、佐藤健と新田真剣佑のアクション対決ももちろんだが、ふたりの演技対決にも要注目。追い詰められ、憔悴していくさまを痛々しいほど生々しく演じた佐藤の憑依演技に圧倒され、最愛の姉を失った悲しみが肥大し、復讐の鬼と化した縁の狂気と哀愁を全身で演じ切った新田に、キャリアハイの存在感を見るだろう。

役者陣が限界突破して成しえた、奇跡のアクション

見ごたえのあるドラマに呼応するように、アクション面もパワーアップ。ドラマが陰へと向かえば、アクションは激しさを増し、両者の綱引きが作品の迫力を存分に高めている。冒頭から、縁が汽車の中で大暴れをするアクロバティックなアクションで観る者を驚かせ、彼が放った刺客たちと剣心や仲間のバトルを同時多発で展開させて緊迫感をあおり、縁のアジトに突入した剣心の一対多数の超絶バトルを経て、縁との一騎打ちをたっぷりと見せてくれる。

アクションの細部を観ても、汽車や家の中といった動きに制限のある空間を効果的に使ったバトルや、上下左右から敵が襲い掛かってくる乱打戦、刀と拳を同時に使う今までにない戦闘スタイルの縁との死闘など、さまざまなバリエーションの戦いをこれでもかと畳みかけてくる。

剣心が目にも留まらぬ速さで壁や屋根を走ったり、縁が驚異的な跳躍力と長いリーチで蹴りや突きを繰り出したり、佐藤や新田が自らを限界まで追い込み挑んだアクションの数々には、度肝を抜かれることだろう。これまでも役者が自ら過酷すぎるアクションに挑むことを信条としてきた本シリーズだが、「ここまでやるか……!」と観る側が心配になってしまうほどのアクションが、全編にわたって展開する。まず、とにかく速い。そして、ひたすら動く。息もつかせぬ、瞬きもさせぬ、それでいて「本当にやっている」リアル感がビリビリと伝わってくるから、「すごい」としか感想が出てこなくなる。映像のスケールと合わせ、ぜひ劇場の大スクリーンで堪能していただきたい。

雪代巴・神谷薫・巻町操の女性陣にも注目!

そして、各キャラクターの掘り下げについて。剣心、縁はもちろんのこと、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』で本格的に登場することになる巴役の有村架純も、限られた時間の登場ではあるものの、これまでのイメージを覆すような「感情も表情も読み取らせない、ミステリアスな女性」を見事に演じ切っている。6月に待ち受ける『るろうに剣心 最終章 The Beginning』への期待が高まる健闘ぶりだ。

また、個人的には神谷薫(武井咲)と巻町操(土屋太鳳)も推したい。今回は、薫がシリーズ最大規模の活躍を見せ、剣心と縁の両者の苦しみや悲しみを理解し、ふたりを正しい方向に導こうとする姿がエモーショナルに描かれる。彼女にとっても、ターニングポイントとなるで出来事が展開するのだ。

剣心の友人で、忍者集団・御庭番衆のメンバーである操は、シリーズを通して進化を続けてきたキャラクター。『るろうに剣心』のキャラクターは、多くが幕末の動乱の中で運命を狂わされてしまっているが、その時代を知らない“次世代”の彼女が活躍することで、シリーズの裏テーマである「未来」が輝きだすのだ。この部分は、実写映画のオリジナル要素が強く、原作ファンも「おおっ」と感じ入るのではないだろうか。

誰もが楽しめる娯楽作でありながら、限界に果敢に挑んだ挑戦作でもある『るろうに剣心』シリーズ。その“最後”である『るろうに剣心 最終章 The Final』も、心・技・体そろった傑作となった。彼らの雄姿を、存分に目に焼き付けていただきたい。

文/SYO

『るろうに剣心 最終章 The Final』
4月23日(金) 公開

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
6月4日(金) 公開
監督:大友啓史
原作:和月伸宏「るろうに剣心−明治剣客浪漫譚-」
音楽:佐藤直紀
主題歌:ONE OK ROCK
出演:佐藤健 有村架純 高橋一生 村上虹郎 安藤政信 武井咲 新田真剣佑 青木崇高 蒼井優 伊勢谷友介 土屋太鳳 三浦涼介 音尾琢真 鶴見辰吾 中原丈雄 北村一輝 江口洋介
配給:ワーナー・ブラザース映画

【ストーリー】 かつては“人斬り抜刀斎”として恐れられた緋村剣心(佐藤健)だが、新時代の幕開けとともに、斬れない刀=逆刃刀“さかばとう”を持ち穏やかな生活を送っていた。最狂の敵・志々雄真実が企てた日本転覆の計画を阻止するため、かつてない死闘を繰り広げた剣心たちは、神谷道場で平和に暮らしていた。しかし、突如何者かによって東京中心部へ相次ぎ攻撃が開始され、剣心とその仲間の命に危険が及ぶ。果たして誰の仕業なのか?何のために?それは、今まで明かされたことの無い剣心の過去に大きく関係し、決して消えることのない十字傷の謎へとつながっていく。

©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会