2013年にWEBマガジン「くらげバンチ」にて連載がスタートした、宮川サトシによるエッセイ漫画を、安田顕主演、倍賞美津子共演で映画化した『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』が、2019年2月22日より公開される。このほど、12月18日に六本木にてトーク&アコースティックライブイベントが開催され、本作の主題歌を担当したBEGINの比嘉栄昇(Vo)、島袋優(Gt&Vo)、上地等(Pf&Vo)と原作者・宮川サトシが登壇した。
イベントは「ハイサイでございます」という比嘉の挨拶とともに、ゆったりとした3人のトークから幕を開けた。本日のイベントの会場が試写室であることに「こういうところ初めてきました!」と興味深々の様子の3人。「僕たちの出身地、石垣島には映画館がないんですよ。昔は市民会館で幕を下ろして上映してたね(比嘉)」「公民館でキカイダーを見たよね~(上地)」と映画の思い出を語り合う。「ちなみにここは『カメラを止めるな!』の配給会社さんの試写室なんだけど、僕はわざわざ沖縄本島にまで行って見ましたよ!面白かった~、5回ぐらいは見たいな(比嘉)」と話題作もしっかりチェックしていることもアピールした。
さっそく映画の主題歌「君の歌はワルツ」についてトークが展開すると、まずはミュージックビデオについて触れ、普段はミュージックビデオを制作しないというBEGINだが今回はパラデル漫画家の本多修とコラボレーションを果たし、オリジナルのミュージックビデオが完成した。「僕たちはライブバンドなのでライブを撮ればいいんじゃないかと思っているんです。できればライブ映像をファンのみなさんに届けたいと思っているんですが、このミュージックビデオはよかった(比嘉)」「(ミュージックビデオは)ちょっと切なくなる。パラデル漫画という違う要素が加わることによって、うまく言葉で言えなかったことまで伝えてくれているね(島袋)」と感謝した。
またレコーディングについて話が及ぶと、実は大きなスタジオで一緒に録るのは久しぶりの経験だったことを明かした。今回は主演の安田顕をはじめ、松下奈緒、大森立嗣監督も参加し大人数での録音となったが、一発OKだった。「全員の気持ちが一つになったんだよね。『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は、漫画から始まって、台本になって映画になって…この作品自体がオリジナルのストーリーを持っていてそれが花開く瞬間だった。奇跡とは言いすぎかもしれないけれど、そんな貴重な瞬間に携われて嬉しかったです(比嘉)」と語る。一方で松下奈緒とピアノでの共演を果たした上地はメンバーから「デレデレだったよ~」と暴露され、上地は「見つめ合いながら作業したつもりだったけど、今思い返すと本当は僕がチラッとみただけかも(笑)」とお茶目に照れ笑いした。
レコーディング現場で好きな楽器を選んでいいと指示を受けた安田はトライアングルを選択。これについて比嘉は「トライアングルってめちゃくちゃ難しい楽器なんですよ。マイク乗りが一番いいから音が全部拾われてしまう。だからミスができないんですよね。それなのに安田さんがトライアングルを選んだ時『この人さすが、もってる』と思いましたね(笑)」と安田の大物ぶりに感嘆した様子だった。
ここで予定にはなかったが、サプライズで原作者の宮川サトシが登場。「うちの母親はBEGINさんが出ていた音楽番組が大好きだったので、BEGINさんが主題歌になると聞いてすごく嬉しかったです。よくパジャマ姿で『涙そうそう』を歌っていました。デモ音源も何度も聞きました。漫画の中では書けないことを音楽で補ってもらったなと思っています。ありがとうございます!」と感謝を伝えた。そんな宮川に島袋は「僕も実は10数年前に母親を亡くしていて、宮川さんが漫画で描いてくれた様々な感情がこのタイトルの一言に尽きるかなと。シンプルに母親への愛情が表されていた。人の死はいつ訪れるか分からない、明日かもしれないし10年後かもしれない。だから明日も10年後も聞ける歌を書いたつもりです」と作曲に込めた想いを語った。また、宮川は原作本が12月26日に新装版として刊行されることに触れ、「後日談のエピソードを新たに新装版用に書き下ろしたのですが、その時に『君の歌はワルツ』をヘビロテしていました」と明かした。
ライブパートでは宮川の母のエピソードを受け、比嘉が「『涙そうそう』やりますか!」と口火を切り、スタート。母の温かな愛を思い起こさせる優しい歌に宮川は思わず涙。比嘉は「お会いできないお母様にあえた気がする」と楽曲同様温かな言葉を投げかけ、さらに宮川を感動させた。感動の雰囲気の中、比嘉は「漫画をご覧になって、映画をご覧になって、歌は…ライブ会場へどうぞ!」とちゃっかりライブを宣伝し会場を笑いに包んだ。
「涙そうそう」の後、新アルバムから「私の好きな星」を歌い、ラストはもちろん『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』の書き下ろし主題歌「君の歌はワルツ」を披露。アルバムバージョンとは違うアコースティックバージョンの演奏に会場の取材陣はうっとりと思わず聞き入った。発売中の新アルバム「PotLuck Songs」について島袋は「今回のアルバムは、全曲がタイアップソング!3年間の間に作ったCMやドラマ、映画の主題歌を詰め込んだ集大成のアルバムとなっています。全曲シングルのようなもので、いわばベスト盤だね!」とアルバムの出来に自信をのぞかせた。また島袋は、「僕たちは石垣島出身で音楽というものの重要性はよく分かっているつもり。島には1年に1度の豊年祭の時には歌がないと盛り上がらない。そこには年に1回しか歌ってはいけない歌や、座開き(幕開け)の時のための歌などいろいろなものがあるんです。その歌たちはただ脈々と歌い継がれていて、誰が作った?とか、いつ作られた?とかは一切知らない。みんなの歌となっている。そんな音楽を今後も作り続けていけたらいいな」とBEGINらしい音楽づくりの極意を語り、大盛況の間にイベントは幕を閉じた。
『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』
2019年2月22日(金) 全国順次ロードショー
監督・脚本:大森立嗣
原作:宮川サトシ「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」(新潮社・BUNCH COMICS)
音楽:大友良英
主題歌:BEGIN「君の歌はワルツ」(テイチクエンタテインメント/インペリアルレコード)
出演:安田顕 倍賞美津子 松下奈緒 村上淳 石橋蓮司
配給:アスミック・エース
【ストーリー】 2012年・春。30代後半になるサトシ(安田顕)は、自分の母(倍賞美津子)と永遠に別れる日が来るなんて思ってもいなかった。子供の頃から病気がちで泣き虫でお調子モノだったサトシは、いつも優しく強い母に救われてきたのだ。そんな母が突然がんを告知されたのは2年前のことだった。それまで母が自分にかけてくれていた言葉を今度はサトシがかける番になる。「俺がいるから大丈夫だよ、お袋は必ず助かるから」―。百度参り、修行僧の様な滝行、国産野菜のジュース作り…サトシは母の為にがむしゃらになる。そんなサトシを優しく支えたのは恋人の真里(松下奈緒)だった。そして…母と別れて1年後。すっかり生きる気力を失っていた父(石橋蓮司)と兄(村上淳)も新たな人生へのスタートをきった頃、サトシの元に突然、母からプレゼントが届く。それは、想像をはるかに超えた驚くべき“スペシャルな贈り物”だった―。
©宮川サトシ/新潮社 ©2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会