毎年12月1日の“世界エイズデー”に、ミュージシャン、俳優、お笑いのジャンルを越えた豪華キャストが集結し一夜限りのエンターテインメントショーを披露してきたイベントで、今年で26回目の開催となるAct Against AIDS(AAA)2018「THE VARIETY 26」が、12月1日に日本武道館にて行われ、俳優の岸谷五朗、寺脇康文、三浦春馬ら総勢32名の豪華キャストが出演した。
岸谷五朗の呼びかけで、1993年に代々木体育館からスタートしたAAA「THE VARIETY」。本イベントには約10,000人の観客が集まり、さらに今年は全国各地50館の映画館でのライブ・ビューイングも開催された。26回目を迎えた今年も「ラオスへの支援を通じてAIDSという病気をなくすため情報を発信していきたい」という趣旨に賛同した豪華アーティスト総勢46名(バンドメンバー含む)が武道館に集まり、このイベントでしか見られない顔ぶれの超豪華なイベントとなった。
今年は初の試みとして、“俳優だけの武道館ライブ!!”と銘打ち、ミュージカル界のトップスターたちを中心に総勢32人の俳優たちが武道館に集結。オープニングは、映画『ブルース・ブラザーズ』のテーマ曲にあわせて、岸谷、寺脇、三浦が客席から登場し、帽子をつかったコミカルでシュールなパフォーマンスを披露。観客の意表をついたスタートのあとは、今年の大ヒット曲「U.S.A」を平間壮一、水田航生、植原卓也、猪塚健太といったアミューズの舞台俳優たちとともに完璧に踊りきり、会場を熱く盛り上げた。
続いてはJ−POPのコーナー。花澤香菜、大原櫻子が自身の楽曲を披露したほか、セクシーな衣装で登場した柚希礼音がダンサーを従え、「六本木心中」をカバーしたり、柿澤勇人が「津軽海峡・冬景色」を披露するなど、ミュージカルスターたちの意外な(?)選曲に会場は大盛りあがり。また、例年、サンプラザ中野くんによって披露されていた「大きな玉ねぎの下で」を三浦春馬が歌い、神木隆之介と小関裕太が同じ事務所でもある高橋優の「福笑い」をデュエットしたほか、「Brave Love,TIGA」では岸谷、寺脇らに加えウルトラマンティガが登場し、俳優とヒーローという異色のコラボが繰り広げられるなど、まさにこのコンサートのタイトル「ザ・バラエティ」にふさわしい序盤となった。
その後は、来年結成25周年を迎える、岸谷と寺脇の演劇ユニット「地球ゴージャス」の過去作のメインキャストたちが一挙に登場。最新作『ZEROTOPIA』からは柚希、花澤、水田、植原。『The Love Bugs』からは城田優、大原櫻子、平間壮一。そして『海盗セブン』『星の大地に降る涙』からは三浦春馬。彼らが入れ替わり立ち代わり歌い踊る圧巻のメドレーは、地球ゴージャスらしい笑いも取り入れた演出で、出演者たちも同窓会のように楽しそうにパフォーマンスしていたのが印象的。会場にも笑顔が広がった。
毎年恒例となっているAAA報告のコーナーでは、チケットの収益金でどのような活動ができたのかを報告。現在、「THE VARIETY」の収益金は、特定非営利活動法人「フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN」を通じてラオスのルアンパバーンにあるラオ・フレンズ小児病院に寄付され、医療設備の充実や医療スタッフの育成に充てられており、昨年のAAAチケット収入で1024万1754円、26年間25ステージのトータルで2億9224万1690円が寄付されたことが報告された。また、今年は岸谷がラオスの施設、ラオ・フレンズ小児病院に足を運んで、現地の状況を視察してきたことを実際の映像と写真で報告。エイズだけでなく、生活を取り巻く様々な環境や病気と闘う子どもたちを目の当たりにし、さらに広い支援をしていかなければならないという気持ちを語った。来年2019年はオリンピック準備で武道館が使用出来ないため、一旦休むことがすでに発表されているが、2020年には『Act Against Anything「THE VARIETY SHOW 27」』と名前を変え、エイズだけでなく様々な問題を抱えた子供たちへの支援をするために新たなスタートを切ることを発表すると、客席からは大きな歓声が上がった。
続いては、ソニンが登場。圧倒的な歌唱力で『Wicked』の名ナンバー「Defying Gravity」を歌いあげ、ミュージカルコーナーがスタートした。その後は、柚希と加藤和樹がミュージカル『マタ・ハリ』より「さよなら」、柿澤と小池徹平が『デスノート』より「ヤツの中へ」を披露。それぞれ自身が演じて歌った楽曲だけに情感たっぷりに観客を魅了し、続く平間と大原はミュージカル『In the Heights』より可愛らしいラブソングを聴かせた。続いて城田優が、来年上演予定の主演ミュージカル『ピピン』より「コーナー・オブ・ザ・スカイ」で登場、来年への期待が高まる歌唱となった。その後は今年再演されたミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』より小池徹平と神田沙也加が登場、本編では小池演じるロナンのソロナンバーだった「二度と消せない」をデュエットバージョンで特別に披露すると、続いて同じくロナンを演じた加藤和樹が、「サ・イラ・モナムール」で登場。ここではかつてミュージカル『テニスの王子様』で共演していた青柳塁斗や、同じく『テニスの王子様』出身の植原と水田も加わって4人で力強い歌声を聴かせた。このコーナーのラストは、この秋に上演されたミュージカル『マイ・フェア・レディ』よりイライザ役の神田沙也加が「だったらいいな」を披露。途中でヒギンズ教授役の寺脇も加わり、息のあったパフォーマンスをみせる。実は本公演では寺脇と神田は別チームだったため一緒に演じることはなく、この組み合わせでの歌唱は今回が初めて。ファンにとってはたまらない貴重なナンバーとなった。
続いては、年末の風物詩というべきアミューズの若手俳優によるファン感謝イベント「ハンサムフェスティバル」より、“ハンサム”たち(アミューズの若手俳優たちの総称)が登場…のはずが、なんと岸谷と寺脇も一緒に登場。“おじサム”として1コーラスを歌いきり、AAAスペシャルバージョンとして会場を湧かせた。その後はファンにとってはお馴染みの楽曲が続き、客席とのコール&レスポンスで武道館にハンサム旋風を巻き起こす。ハンサムコーナーのラストは、彼らの代表曲ともいうべき「THIS IS THE TIME」。この曲では6年ぶりに三浦もハンサムメンバーとともに登場し、会場のボルテージは最高潮に。ステージを大いに盛り上げた。
コンサートの終盤では、再びミュージカル楽曲をフューチャー。日本版ジャスミンの声を担当した麻生かほ里と城田優の「ア・ホール・ニュー・ワールド」(『アラジン』より)や、寺脇と小池の「アンダー・ザ・シー」(『リトル・マーメイド』より)といった異色のコラボで綴るディズニーミュージカルを皮切りに、岸谷が一番好きだというミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』の楽曲を自身が演出したことのあるアミューズの若手たちと一緒に披露。そして柿澤とソニンは『モーツァルト!』より「愛していれば分かり合える」をしっとりと歌い上げた。その後、印象的な前奏とともにステージ上に現れたのは城田優。自身が演じたミュージカル『エリザベート』のトートと皇太子ルドルフの名ナンバー「闇が広がる」を歌い始めると、ステージ後方より登場したのは三浦春馬。城田トートと三浦ルドルフの夢の競演に会場のボルテージもあがる。2人は圧倒的な表現力と歌唱力で武道館を“闇広”の世界に染め上げた。その余韻を断ち切るように、華やかに柚希、平間、水田、植原が登場し、『オーシャンズ11』より「Fate City」がスタート。柚希は『マタ・ハリ』でみせたドレス姿から一変、宝塚時代の男役を彷彿とさせるようなマニッシュな姿で登場し、ダンスに定評のあるミュージカル俳優たちとともに男っぽいセクシーなダンスパフォーマンスで会場のテンションを一気に盛り上げた。
最後は、映画『グレイテスト・ショーマン』より、城田とソニンで「A Million Dreams」、そして出演者全員が加わって「This Is Me」をパフォーマンス。ソニンのパワフルな歌声と、ミュージカルスター総出演のコーラス、そして25人以上に及ぶ群舞も加わって、この豪華な一夜限りのコンサートを締めくくるにふさわしい感動的なラストナンバーとなった。そして、毎年恒例の出演者総出のエンディングでは、このイベントのために作られた「一人じゃないから」を全員で合唱し、曲の終わりには、感謝の気持ちを込めて出演者のサインが入ったカラーボールをお客さんへ投げ入れプレゼント。会場の観客と出演者の気持ちがひとつになり、イベントはエイズ啓発への想いがより深まり大成功に終わった。さらに今回は2020年に向けた新たな発表もあり、次回への期待が高まる公演となった。
本番前に行われた会見には、岸谷五郎、寺脇康文、三浦春馬が臨んだ。今回の公演について岸谷は、「武道館の両サイドの席まで売り切れるほど満員御礼で、さらに全国50館の映画館でライブ・ビューイングも行われます。おかげ様で本当に大きいチャリティができます。来年はオリンピックイヤーで武道館が使えないので、寺脇さんと春馬と話し合って2年分できればという思いで大規模に開催しました」と感謝の気持ちを述べた。
また岸谷は、2020年でAAA事務局が役目を終えることについて、エイズやHIVが医学の進歩によりAAAの活動を始めた93年当時に比べて恐ろしいものではなくなったことを説明。その上で、「ラオスには栄養失調や脳性麻痺など、より深刻な問題を抱えている子供たちがいっぱいいます。その子供達をふくめ、より幅広い支援を行なっていくために、AAAはAct Against Anything(アクト・アゲインスト・エニシング)と名前を変えて活動を続けていきます。2020年には『THE VARIETY SHOW 27』として、我々を中心に続けていけたらと思います」と今後も違った形でチャリティ活動を続けることを明かした。
岸谷の発言を受けて、寺脇も「チャリティというのは、できることをできる範囲で無理せずやることが大切で、形を変えても何か僕らでやっていきたいと思います。僕らの意志を春馬も継いでくれていて、頼もしい後輩もたくさんいますので、無理なくやっていきたいと思います」と今後のチャリティ活動にも意欲をみせた。また、岸谷と寺脇の意志を受け継ぐ後輩の一人としてラオスを訪問した経験もある三浦は、「2015年に初めてラオスの小児病棟を訪問させていただいたのですが、その時から、『フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN』がこの病院を現地スタッフだけで運営していくことを目指し、10年プロジェクトを続けている最中です。そんな中で、エイズだけではなく、難病と呼ばれる病気と闘っている子供たちがまだたくさんいます。Act Against Anythingにすることで、ラオスの病棟の未来も拓いていけると思います」と、二人と共にチャリティ活動を続けていく決意を明らかにした。
■セットリスト
1「U.S.A」
2「大丈夫」
3「六本木心中」
4「大きな玉ねぎの下で」
5「福笑い」
6「ZERO」
7「津軽海峡・冬景色」
8「キミを忘れないよ」
9「Brave Love,TIGA」
10「Xday」/Xday
11「JUN’S DREAM」/ZEROTOPIA
12「THE TOP OF THE BEST!」/The Love Bugs
13「伝説の雄」/The Love Bugs
14「BUGS」/The Love Bugs
15「ワイルドアッパー」/海盗セブン
16「サンディー」/ZEROTOPIA
17「Valentina’s Past」/ZEROTOPIA
18「ZEROTOPIA」/ZEROTOPIA
19「愛すべき未来へ」/星の大地に降る涙
20 「Defying Gravity」/WICKED
21 「さよなら」/マタ・ハリ
22「ヤツの中へ」/デスノート
23「サンライズ」/イン・ザ・ハイツ
24「コーナー・オブ・ザ・スカイ」/ピピン
25「二度と消せない」/1789
26「サ・イラ・モナムール」/1789
27「だったらいいな」/マイ・フェア・レディ
28「Party Ride」
29「君だけの HERO」
30「キミノリズム」
31「White Serenade」
32「Butterfly」
33「Inst:」
34「THIS IS THE TIME」
35「ア・ホール・ニュー・ワールド」/アラジン
36「アンダー・ザ・シー」/リトル・マーメイド
37「パート・オブ・ユア・ワールド」/リトル・マーメイド
38「Simon Zealotes」/ジーザス・クライスト・スーパースター
39「愛していれば分かり合える」/モーツァルト!
40「闇が広がる」/エリザベート
41「FATE CITY」/オーシャンズ11
42「A Million Dreams」/グレイテスト・ショーマン
43「This Is Me」/グレイテスト・ショーマン
44「一人じゃないから」
Act Against AIDS 2018「THE VARIETY 26」
出演:岸谷五朗 寺脇康文 三浦春馬 青柳塁斗 麻生かほ里 石賀和輝 石原壮馬 猪塚健太 植原卓也 太田将熙 大原櫻子 甲斐翔真 柿澤勇人 風間由次郎 加藤和樹 金子大地 神木隆之介 神田沙也加 小池徹平 小関裕太 城田優 ソニン 富田健太郎 花澤香菜 平間壮一 正木郁 松岡広大 松島庄汰 水田航生 溝口琢矢 柚希礼音 吉村卓也